町田加入の元日本代表が驚き「そんな監督いませんでした」 勝つなら1%でも…“黒田イズム”の衝撃【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年9月28日 6時50分
■太田宏介氏が古巣・FC町田ゼルビアの黒田剛監督から受けた影響を明かす
FC町田ゼルビアは、J1昇格初年度で首位の座を長らくキープするなど躍進が大きな話題となっている。町田OBでクラブアンバサダーも務める元日本代表DFの太田宏介氏が、地元クラブを支える黒田剛監督の「ずば抜けた」能力を絶賛した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也/全4回の4回目)
◇ ◇ ◇
東京都町田市出身の太田氏は、高校卒業後の2006年に横浜FCへ加入しプロの道へ。清水エスパルス、FC東京、フィテッセ(オランダ)、名古屋グランパス、パース・グローリー(オーストラリア)と数々のクラブを渡り歩き、22年からは地元クラブである町田(当時J2)へ完全移籍した。
2023シーズンはリーグ戦11試合に出場し、J2優勝を経験。クラブは初のJ1昇格を決める。太田氏はこの年をもって、スパイクを脱ぐ決断をした。翌年にはクラブのアンバサダーに就任し、異なった立場で地元クラブを陰から支える。
これまで都並敏史氏、長谷川健太監督(現・名古屋グランパス)、ランコ・ポポヴィッチ監督(現・鹿島アントラーズ)ら、さまざまな指揮官の下でプレーしてきた太田氏。現役最後の年にJ2優勝へと導いた町田の黒田監督へ話が及ぶと、「(2023年も)選手として評価してくれて、試合で使い続けてくれて、最高の思いをして引退することができました。サッカー以外でも学ぶことが大きかったですし、新たな刺激をくれた監督です。すごい感謝しています」と笑顔で当時を振り返った。
経験豊富な太田氏が感じた、黒田監督の凄さとは何なのか。昇格初年度の今年、町田は首位争いを演じているが「言語化する力、人を操る力がすごすぎます。僕は『こういう指導者になりたい』とか、そういう思いはこれまで全くなかったんですけど、黒田さん見ていてすごく興味が湧きましたね」と、太田氏は語る。それだけ指導者としての姿が印象的だったという。
太田宏介氏は黒田監督の振る舞いから指導者に興味を持ったという【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
そんな太田氏が、黒田監督と接して衝撃を受けたのは「指示の細かさ」だ。「1%でも勝つ確率が上がる要素が90分の中でどこにあるかを、めちゃくちゃ探して伝えてくれます。フリーキックの壁の位置、ジャンプするタイミング、選手の配置もそうです。めちゃくちゃ細かいですね。今までそんな監督いませんでしたから」と、町田サッカーへ指揮官が落とし込んでいるものを並べていった。
相手のフリーキック対策を取っても、「黒田監督はキッカーごとに選手の並びを変えたり、ジャンプの際にはつま先まで伸ばすことを意識付けさせる」など、選手が覚えることは多いと太田氏は語る。練習では「テクニカルなことをトレーニングする」というギャップもあり、加入当初は驚きの連続だったようだ。
町田の特徴でもあるセットプレーの強さは、前述の細かな約束事が設けられた結果でもあるが「ある意味頭いいっていうか、賢くないと(町田の)サッカーについていけないかもしれないですね」と、太田氏は町田の戦術において暗記や対応力が必要である点を指摘している。
ただ最近は「黒田監督になってから約1年半が経ちました。途中から加入する選手も事前に関係者や選手に話を聞いて、調査したうえで入ってくるので、チームにフィットするのも早いですね」と“黒田イズム”が浸透し始めていることを、アンバサダーの太田氏も実感しているようだ。残り10節を切っているリーグ戦。昇格初年度の歴史的J1優勝を最大の目標に、黒田監督の戦いは続いていく。
[プロフィール]
太田宏介(おおた・こうすけ)/1987年7月23日生まれ。東京都出身。FC町田―麻布大学附属渕野辺高―横浜FC―清水エスパルス―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。Jリーグ通算348試合11得点、日本代表通算7試合0得点。左足から繰り出す高精度のキックで、攻撃的サイドバックとして活躍した。明るいキャラクターと豊富な経験を生かし、引退後は出身地のJクラブ町田のアンバサダーに就任。全国各地で無償のサッカー教室を開校するなど、現在は事業を通しサッカー界への“恩返し”を行っている。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)
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