J1練習参加で衝撃「全く奪えない」 力不足も…あえて選んだプロ内定「どうすればいいか困った」
FOOTBALL ZONE / 2024年10月10日 8時30分
■桐蔭横浜大MF笠井佳祐に衝撃を与えた“新潟サッカー”
今年4月、来季からのアルビレックス新潟入り内定が発表された桐蔭横浜大のMF笠井佳祐にとって、新潟が展開するサッカーは「自分に足りないものを身に付ける大きなチャンス」でもあった。
新潟から練習参加の打診があったのは昨年の夏のこと。関東第一高時代からフィジカルレベルが高く、運動量も豊富で、ボールを持ったら積極的な仕掛けとシュートスキルを駆使してチームにゴールをもたらすストライカーだった。桐蔭横浜大に進学してからはパスやパスを出してからの動きに磨きがかかり、FWだけではなく、トップ下からボランチ、サイドまで幅広くプレー。チャンスメイクも担うようになった。
こうした攻撃面での推進力が評価をされ、大学3年生ながらJクラブから熱視線を浴びる存在となり、その中で新潟の練習に参加した。そこで待っていたのは彼のサッカー観も揺るがす、大きな経験だった。
新潟は松橋力蔵監督の下、最終ラインからテンポよくボールをつないで、数的優位を作り出しながら崩していくサッカーを展開。練習でのボール回しの質は、彼にとって大きな衝撃だった。
「あまりのポゼッションのうまさとテンポの速さにボールが全く奪えなかった。周りの選手をよく観察すると、みんな相手が飛び込んでくるタイミングや足を出してくるタイミングをしっかりと見計らっていた。相手の動きを見て判断を変えられる選手がすごく多いことを感じた」
付いていくことができなかった自分に対し、危機感だけではなく、「このチームでやったらさらに上手くなれるかもしれない」と感じた。この感覚を忘れないように、桐蔭横浜大に戻ると球離れを早くすることを意識した。当然、球離れを早くしようとすればするほど、その前の準備の部分の必要性を痛感することになる。
「前を向いてから考えることが多いことに気づきました。それでは遅くて、もうパスコースやプレーの判断が狭まってしまう。もらう前の動きや、相手を見て判断することはもちろん、あとは新潟で学んだことはパスの強弱。出すほうもそうですが、受ける側もパスの強弱の判断に基づいてスルーやワンタッチでコースを変えたり、寄って行って受けたりしていた。そこは本当に学びました」
敵と味方の位置、スペース、そして守備の相手の矢印と味方のパスのメッセージ。複合的な要素を持って準備をして、加速しながら正確な判断を下す。彼の中で明確な基準が生まれてから、より成長速度が増した。
■新潟のサッカーに「困った」…それでも選んだ進路
今年に入ると新潟のキャンプに参加。ほかにもJ1とJ2の4クラブの練習にも参加をしたうえで、新潟入りを決断した。
「練習参加したクラブの中で、一番自分が『困った』チームが新潟なんです。キャンプでも自分が食いついたら簡単にかわされるし、自分がみんなに置いていかれていると感じたし、どうすればいいか困ったことで、かなり頭を使っていろいろ考えた。改めて『ここならもっと上手くなれる』と思ったんです」
内定発表の2か月後に左肩を負傷し、手術をして3か月間もリハビリをすることになったが、復帰直前に2週間ほど新潟で過ごした。
「リハビリとコンディションを徐々に上げていくトレーニングをトレーナーの方と一緒にさせてもらいました。自分の身体のこともそうだし、食事とか、いろいろ見つめ直せる時間と捉えて有意義に過ごしました。いろんな人と話しましたし、プロの現場を目の当たりにして、いろいろノートに書き貯めることができました」
学び多き時間を過ごし、9月21日の関東学生サッカーリーグ1部の第14節の流通経済大学戦で途中出場して復帰。25日の第12節(延期分)の明治大学戦でも途中出場すると、第15節の東海大学戦でスタメン出場を果たし、4試合ぶりの勝利に貢献した。
「肩だったのでプレーすることも可能だったのですが、『今はきちんと治したほうがいい』と手術することに背中を押してくれたり、リハビリ中に新潟に送り出してくれたりと、安武亨監督を始めチームのみんなには本当に感謝をしているので、大学サッカーでしっかりと結果を残したい。ゴールやアシストなどで勝負を決められる選手になりたいと思っています」
これまで育ててくれたチームへの感謝と、新潟という基準と刺激を胸に。笠井の進化はまだまだこれから引き出されていく。(FOOTBALL ZONE編集部)
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