森保J世代交代の現実「なかなか食い込めない」 選手も実感、進化に必要な競争の活性化【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年10月10日 13時30分
■“第2次森保ジャパン”の大半は東京五輪世代、パリ世代の割合は…
森保一監督が率いる日本代表は現地時間10月10日に行われる北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で3連勝を目指してサウジアラビア戦に臨む。今回の招集メンバーで1つ注目したいのはE-1選手権以来2年ぶりのA代表となる藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)、そして高井幸大(川崎フロンターレ)の負傷により、追加で初招集となった関根大輝(柏レイソル)といったパリ五輪世代の台頭だ。藤田は「久々と言っても、このチームは初めてなので、新たな気持ちでできたらいいなと思います。自分にできること、やるべきことは変わらない」と語る。
パリ五輪世代と言っても、すでにA代表で五輪も不参加だった久保建英(レアル・ソシエダ)とGK鈴木彩艶(パルマ)が森保ジャパンの主力として定着しているなかで、パリ五輪のエースだった細谷真大(柏レイソル)が外れて、9月に初招集された高井も怪我で辞退となったところに、関根が加わった形だ。またパリ五輪のチームには無縁だったが、大型サイドバック(SB)の望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)も前回に引き続きメンバー入りした。
カタールW杯後の“第2次森保ジャパン”では、昨年の上半期に川﨑颯太(京都サンガF.C.)、半田陸(ガンバ大阪)、バングーナガンデ佳史拭(FC東京)が招集されたことはある。ただ、当時はまだ親善試合でチームを再構築している段階だった。延べ8人、アジア予選がスタートしてからは高井も含めて5人という割合が、多いか少ないかの評価は難しい。現在は27人のうち大半を占める東京五輪世代も、2021年夏の本大会が行われた時点で、A代表経験者が多くいたわけではない。
もう1つ大きく違うのは、東京五輪の場合はコロナ禍で開催がまるまる1年遅れたこと。つまり本大会の時点ではU-23ではなくU-24だった。そして2020年の1月に行われた、東京五輪の予選をかねたタイのU-23アジア杯において、すでに開催国として本大会の出場を決めていた日本はグループリーグ敗退という屈辱を味わった。もし、その年に予定どおり東京五輪が行われていたら、全く違う世界線になっていた可能性もある。
東京五輪世代で、2020年の時点でフルメンバーのA代表に入っていたのは堂安律(フライブルク)、冨安健洋(アーセナル)、そして年齢的にはパリ五輪世代の久保など、かなり少数だった。ただ、東京五輪という特別な大会に向けて、22019年のコパ・アメリカやE-1選手権で東京五輪を中心に参加したこともあり、A代表経験者は現在のパリ五輪世代よりはるかに多かった。例えば、現在のA代表メンバーで東京五輪は招集外だった小川航基(NECナイメヘン)もE-1選手権を上田綺世(フェイエノールト)らとともに経験していた。
パリ五輪世代の最年長は23歳になっており、現在22歳の藤田や関根も含めて、世界で見たら若手とは言えなくなってきていることも確かだ。ただ、日本の場合は後伸びの選手も多く、東京五輪世代でもその傾向は顕著に出ている。その意味で、現時点でのパリ五輪世代の人数というのはそこまで気にする必要もないかもしれないが、鈴木や久保に続く森保ジャパンの主力に食い込んでくる選手の台頭はここからの流れにもつながっていくはずだ。
パリ五輪で主将を務めた藤田譲瑠チマ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
■東京&リオ五輪世代が主力を担うなか、新たな流れは生まれるか
「おそらく前回の東京の時に比べたら、やっぱり(A代表の)選手のそれぞれのレベルっていうのが相当に上がっているから、なかなかパリ(五輪世代)から食い込めないという現状はあると思いますけど、そこに食い込んでこそパリ五輪の意味がある」と語る藤田が本職とするボランチはキャプテンの遠藤航と守田英正がファーストセット、そこに田中碧が挑む構図となっている。
4人目は3-4-2-1の2シャドーと兼任の鎌田大地(クリスタル・パレス)で、同じくシャドーでテストされていると見られる旗手怜央(セルティック)もオプションだろう。9月の2試合ではホームの中国戦、アウェーのバーレーン戦ともに遠藤と守田がスタメンで、田中は中国戦で遠藤に代わり途中出場したのみだった。そしてバーレーン戦は守田が途中で浅野拓磨に代わり、左シャドーでスタメンだった鎌田がボランチに下がって終盤を締め括った。つまり藤田は今回のシリーズで、そこに食い込んでいかなければいけない。
森保監督は藤田に6番(守備的MF)の仕事だけでなく、8番(攻撃的MF)の役割も期待しているとコメントしているが、藤田も「自分は今のチーム(シント=トロイデン)でも、6番的な立ち位置でありますけど、時間帯によって8番の仕事をすることも少なくないので。タイミングで8番になることだったりは全然できるのかなと思います」と主張するように、守備の強度をしっかりと高めながら、中盤の底からの組み立てだけでなく、いかに機を見て前に出ていけるか、そこで決定的なプレーができるかが評価の分かれ目になりそうだ。
関根は所属チームでも右SBのスペシャリスト的なイメージは強いが、センターバック(CB)が本職の高井に代わって、3バックの右での適性を見られているようだ。187センチという恵まれたサイズがあり、パリ五輪の代表活動で課題に感じたヘディングのクリアも継続して改善に取り組んでいる。関根本人も「大学の時にもやっていましたし、プロに入ってからも天皇杯でCBとして出たことがあるので。そういう部分は問題ないと思いますし、オリンピックも右SBでしたけど、可変で3バックを作ったりみたいなのはやっていた」と語り、意欲的な姿勢を見せている。
望月も右SBが本職ながら、ここ最近は町田でCBを経験しており、今回の代表メンバーの中でもライバル関係に近い存在だ。右ウイングバックは引き続き堂安と伊東純也(スタッド・ランス)、さらに前回は出番のなかった菅原由勢(サウサンプトン)も控えていることを考えると、望月や関根に出番が回ってくる可能性はあまり高くない。ただ、CBも90分出るのが基本のポジションではあるので、ベンチ入りできたとしても、出場はそう簡単ではないだろう。そのなかでも、しっかりとアピールして評価を上げていけるか。
現在の日本代表の構図として、まだまだ成長の余地がある東京五輪世代がベースになり、一つ上のリオ五輪世代である遠藤や守田、鎌田、伊東、南野拓実(ASモナコ)も健在ななかで、パリ五輪世代が食い込んでいくのは簡単ではないし、代表チームの世代交代というのは無理矢理に推し進めるべきものでもない。しかし、そこに久保と鈴木だけでなく藤田や関根、望月が食い込むことで、新たな流れを作ることで、競争は良い意味で活性化していくことを期待している。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
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