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三笘薫と「刺し違い」 サウジの狙いを攻略した“森保采配”、鍵を握った「サイドの攻防」【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年10月11日 12時45分

■森保監督は試合前「サイドの攻防はめちゃくちゃ楽しみにしていただければ」と発言

 10月の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のサウジアラビア戦とオーストラリア戦に臨む日本代表発表記者会見で、森保一監督は会見を終えて席を立つと、もう一度メディアの方を向いて一言残した。

「サイドの攻防はめちゃくちゃ楽しみにしていただければ」

 これがサウジアラビア戦のサイドの攻防を意味していたのは間違いない。会見の質問の中でサウジアラビアの強力なサイド攻撃にどう対抗するのかという質問が出て、森保監督は答えをはぐらかしていたのだ。だが、人のいい森保監督はそのまま会見を終わるのがイヤで、最後に一言付け加えたのだろう。

 それまでの日本代表関係者の話をいくつかつなぎ合わせると、この時点で森保監督は、サウジアラビアの右サイド、サウード・アブドゥルハミド(ASローマ)を三笘薫にぶつけてくると想定していたようだ。

 今年年頭にカタールで開催されたアジアカップでは、サウジアラビアの両サイドが攻撃のリズムを作っていたが、特にこのアブドゥルハミドが攻撃をリードしていた。そしてアブドゥルハミドを三笘にぶつけることで、日本の攻撃力を削ごうとするだろうと考えていたのだ。

 もっとも、サウジアラビアはここまでほぼ3-4-3のシステムでスタートしていた。そのため3-4-3のミラーゲームになることを森保監督は考えていたはずだ。そこにサウジアラビアはアブドゥルハミドを右サイドバックにする4バックでスタートしてきた。森保監督は相手が4バックにする想定もしていたのだろうが、試合開始早々、サウジアラビアのシステムを確認して指で「4」と選手に伝えていたのはスタートからそう来るとは思っていなかったからかもしれない。

 三笘をマークするのが右サイドバック(SB)なら相手をより押し込めるはずだ。ダブルマークで対抗しようとしても、そのぶん前線や中盤の選手が降りてこなければならず、そうなるとサウジアラビアは右サイドの推進力を失ってしまう。

 だがその「三笘のサイドは刺し違い」という考え方にサウジアラビアは振り切ってきた。実際のところ、このサウジアラビア戦では三笘らしいドリブル突破はほぼ見ることができなかった。一方で、アブドゥルハミドが右サイドを蹂躙することもなかったのだ。

 それでも三笘が先制点の場面でサイドチェンジをダイレクトで折り返したことがゴールにつながった。またアブドゥルハミドが前半42分、ペナルティーエリア付近で打ったシュートがこの試合でサウジアラビアの得点に最も近かった。それだけ2人のレベルは高かったと言えるだろう。


堂安律はチームプレーに徹した【写真:ロイター】

■堂安のチームプレー、森保監督の攻めの姿勢がサウジに勝った

 サウジアラビアには、たとえ右が封じられても左のサレム・アルドサリという槍があるという目論見があったに違いない。また、日本にとっては堂安律がナセル・アルドサリだけマークすればいいはずだったところを、サレム・アルドサリにも対峙しなければならず、最初は高い位置が取れずに苦労した。

 しかし、それでも堂安を菅原由勢に代えなかったところがこの試合の肝だったのではないだろうか。もしも守備的な交代をすればサウジアラビアの攻勢はさらに強まる。そこを堂安が耐えきった。堂安はもっと見せたいプレーもあったのだろうが、エゴを出さずに守備を考えたチームプレーに徹した。

 そしてもともと森保監督には途中から守備的な選手を入れるという選択肢を持たなかったはずだ。もしも「逃げ切ろう」という戦いが頭にあるのなら、菅原に前半早々からアップさせたはずだし、長友佑都をベンチ外にすることはなかっただろう。

 後半から伊東純也を入れたため、今度はナセル・アルドサリが伊東に引っ張られて位置を高く保てなくなった。サウジアラビアは攻勢に出るため本来の3-4-3に戻したものの、前半からのチェイスが響いたのか次第にラインが開き始めた。すると三笘のポジションに前田大然を入れ、サウジにとっての右サイドとボランチが前田、三笘という俊足の選手を警戒して出て行けないという状況を作った。

 かくしてサウジアラビアは分断され、短いパスをすぐ隣の選手につないで相手を引き出し、突破して行く形は次第に消えていった。ボール支配率はサウジアラビアのほうが上回っていたが、あっさりと5バックにして守り切った日本が勝負に徹したためと言えるだろう。

 監督が「めちゃくちゃ楽しみ」と表現していたサイドの攻防は、日本が強気で乗り切った。両チームのそれぞれの選手が自分の攻撃の特長を思い切り出した、行ったり来たりするエンターテインメント性が高い戦いだったかと言われるとそうではない。でもそれこそが森保監督の本質である勝負に徹した戦いであったのと同時に、W杯本大会を想定したチーム熟成の一環になっていたと言えるのだ。(森雅史 / Masafumi Mori)

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