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欧州から帰還で実感、新スタが「すごくいい」 万能戦士が求めるビッグクラブへの第一歩【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年10月23日 7時30分

■川辺駿が3シーズンぶりに広島へ復帰…目を引く「全員の守備意識の高さ」

 サンフレッチェ広島はJ1リーグ第34節を終え、首位に立つ。シーズンもラスト4試合、2015年シーズン以来の優勝も現実味を帯びている。ミヒャエル・スキッベ監督が率いて3シーズン目は、前半戦から負けが少なく粘り強い戦いを見せてきたが、後半戦になるとクラブ新記録となる同一シーズンのリーグ7連勝を記録するなど、勝ち切れるチームに変貌してきた。その原動力の1人が、今夏に欧州でのプレーから復帰したMF川辺駿だ。ボランチからチームに勢いを与える万能型MFに、広島の強さの秘訣を聞いた。(取材・文=轡田哲朗/全4回の1回目)

   ◇   ◇   ◇   

 川辺は地元・広島の出身で下部組織から育ってトップチーム昇格。ジュビロ磐田への期限付き移籍も挟みながら活躍して2021年夏にスイス1部グラスホッパーへ移籍し、ベルギー1部スタンダール・リエージュでのプレーを経て、今夏に3シーズンぶりとなる広島復帰を果たした。

「(今夏に)入る前は、試合結果は追っていたけど全試合を見られていたわけではないので、詳しい状況は知らないですが」と前置きしながらも、川辺は好成績の理由を「いろいろと要因はあると思いますが、スキッベさんをはじめチームに一体感がある。個人の能力、できるプレーやフィジカルの強さを見ても、いい選手がいるなと。スタートの11人だけでなく、18人、20人とJ1上位で戦えるレベルのチームだと思うし、試合は90分だけど、その中で誰が出ても強度を落とさずに違った選手の特徴を出せるのがチームのいい部分だし、結果が出ている要因だと思う」と話す。

 その成績を見れば、34試合終了時点で66得点と1試合平均で約2点という攻撃力に目が行く。しかしながら、川辺は細部を見た時にはむしろ違う部分を好調の要因に挙げた。

「チーム全体の守備意識、うしろが人に強くて1人で守れる、1対1の局面を守ってくれるという前提でプレーできている。うしろの選手が頼りになるし、前の選手がプレッシャーをかければうしろが取ってくれて、また高い位置から攻撃できるというのを試合中に繰り返している。全員の守備意識の高さがすごく結果に出ていると思う」

 そのうえで、得点を奪い合う競技であるという本質的な部分においてスキッベ監督から求められているのが、「サッカーに重要な、自分たちと相手のゴール前での仕事」だという。「その両局面での力強さやクオリティーはすごく発揮できていると思う」と、勝負を分けるゴール前での集中力がチームに備わっていることを自負している。


今シーズンから使用している「エディオンピースウイング広島」【写真:Getty Images】

■広島に強さを与える新スタジアムの存在

 そのなかで、川辺はリーグの中で1つ際立った数字を残している。Jリーグが公開しているスタッツデータの中で、1試合平均のチャンスクリエイト数「2.8」はリーグ第3位。川辺より上位なのは柏レイソルのMFマテウス・サヴィオとセレッソ大阪のMFルーカス・フェルナンデスであり、ボランチの選手としては川辺がトップだ。川辺にその数字を伝えると、驚きながらも少し嬉しそうな表情を浮かべた。そして、その要因について自身の長所とチームとの相乗効果があると話した。

「自分のプレースタイルと、このチームのやりたいサッカーがすごくマッチしていると思う。そのなかでも自分の良さ、チャンスを作り出せている要因では、いろいろなことができること。プレッシャーが来ていないなら顔を上げて、相手の嫌なところや味方の走ってくれたところに正確に通せる。相手がプレッシャーに来ているなら、自分が関わりつつ少ないタッチで前につけていく。(第30節)鹿島アントラーズ戦のように、飛び出した先でのクオリティーも良さではあるので、状況に応じてプレーできていることが数字につながっていると思う。

 もう少しゴールやアシストの数字がほしいのはあるけど、このチームに来てまだ2か月くらいでここまでチームに馴染めると思っていなかった。味方選手のクオリティーの高さ、周りを見てくれる、サッカーをよく知っている選手が多いのがやりやすいですね。信頼関係も築けてきています」

 そしてもう1つ、今季の広島に強さを与えている要素がある。それは、今シーズンから使用が開始された新たなホーム「エディオンピースウイング広島」の存在だ。広島市内の中心部に近く、約3万人収容のサッカー専用スタジアムでは、よりサポーターの声援が近く感じられる。スタジアムのデザインも広島サポーター側のゴール裏が広く、ホームの雰囲気に包まれる空間が実現する。

 今夏の復帰により初めてこのスタジアムでプレーする川辺は、「スタジアムの造りとか、外から見ても『大きいな』と思う。見た目はヨーロッパと同じくらいすごくいいスタジアム。もちろん、雰囲気はまたヨーロッパと違うけど、毎回ホームのたびに素晴らしいスタジアムだなと感じますね」と話す。

 そして、「立地も雰囲気も、リーグのトップレベルにあると思う。それを使い始めた初年度でこれだけ優勝争いをしていて、毎試合チケットも完売。選手としてはやっぱり嬉しいし、幸せな環境にいる。上位争いだけではなくてタイトルを獲って、あのスタジアムで応援してくれている方たちと喜べたら一番いい。あのスタジアム、あの雰囲気がチームを勝たせている部分もあると思う。毎試合チーム全員で100%を出し切れていると思うし、あのスタジアムが選手の力になっていますね」と笑顔を浮かべた。

■広島がビッグクラブになるために…「毎年優勝争いするチームに」

 9シーズンぶりのリーグタイトルへ向け「残り4試合、対戦相手を見ても違った理由で勝ち点のほしいチームが多い。自分たちは自力で優勝できる位置にいるので、勝ち点3じゃないといけないし、勝ち点3が常にほしい。ただ、対戦相手を見れば勝ち点1でもいいという試合をしてくるチームもいる。(第33節ジュビロ)磐田戦もそうだったし、相手はそういうプレーもしてくると思うので、その中でいかにこじ開けるか」と、川辺はポイントを話した。

 新スタジアム初年度で、育った街の愛着あるクラブに戻ってきた川辺は、「このチームでタイトルを獲りたい。このクラブの周期だと10年に1回くらいタイトルを手にしていると思う。でも、10年に1回だけでなく5年に1回、2年に1回とタイトルを獲れるようにしていきたい。新しいスタジアムもできて、たくさんの人に入ってもらっている。広島がビッグクラブになる過程にある。その中で自分もこのクラブに貢献したいし、タイトルを獲ることがビッグクラブへの第一歩だと思う。毎シーズン優勝争いをするようなチームになっていきたい」と力を込めていた。

[プロフィール]
川辺駿(かわべ・はやお)/1995年9月8日生まれ、広島県出身。広島ユース―広島―磐田―広島―グラスホッパー(スイス)―スタンダール・リエージュ(ベルギー)―広島。J1通算192試合15得点、J2通算33試合3得点、J3通算1試合0得点、日本代表通算6試合1得点。高いテクニックと豊富な運動量を誇るボランチ。2022年1月にはイングランド1部ウォルバーハンプトンと契約を結び、注目を集めた。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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