25番継ぎ誓った…「代表で待っててください」 出番ゼロからの飛躍、ライバルへ「追いつきます」【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年10月26日 9時30分
■川崎時代に築いた守田英正&田中碧のライバル関係
日本代表は10月15日の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でオーストラリア代表と埼玉スタジアムで対戦し1-1のドローに終わった。
この試合、遠藤航が体調不良により欠場。キャプテンマークを巻いたのは守田英正であり、その守田とダブルボランチを組んだのは田中碧だった。両者は川崎フロンターレ時代の同僚であり、同じポジションで切磋琢磨していた間柄でも知られている。
今となっては少し懐かしくもある、両者の川崎時代の関係性を振り返っていこう。
先に入団したのは田中である。
川崎U-18からトップチームに昇格したのは2017年のこと。鬼木達体制の初年度で、クラブがリーグ初優勝を遂げた年だ。1年目だった田中は全く出番がなかった。黙々とプロ仕様の身体作りに費やし、シーズンを終えた。
翌年の2018年に流通経済大学から加入したのが守田だった。開幕時から出場機会を掴むと、夏以降はボランチの一角としてレギュラーに定着。恐るべきスピードで成長を遂げていった彼は、新人ながらリーグ連覇にも貢献。9月には森保ジャパンとして始動した日本代表としてAマッチデビューも飾ったほどだった。
この年、プロ2年目だった田中はシーズン終盤に出場機会を掴んでいる。第26節の北海道コンサドーレ札幌戦で途中出場からプロデビューを果たすと、いきなり得点を記録。そして第33節のFC東京戦では初スタメンも飾った。この試合で田中とボランチを組んだのが守田だった。大卒1年目の守田と高卒2年目の田中が中盤を仕切るゲームとなったのだが、試合は2-0で完勝。田中は武器である鋭い出足のボール奪取から先制点をお膳立てしている。
この試合にトップ下で出ていた中村憲剛は、若手ボランチコンビの活躍は普段のトレーニングの賜物であると、こんなふうに称賛している。
「モリタもアオもやれる。それは日々の積み重ねしかない。日々、どれだけ追求できるか。しっかりやれれば、公式戦でもできる」
その言葉に頷いていたのが田中だ。2年目は主力ではなくBチームで過ごすことが多かったが、そこで磨いた武器が試合に生きていると胸を張っていた。
「常に日本一の選手たちとやっているし、要求も高い。それに応えるために自分自身もレベルアップしないといけない。そう考えると、日頃の練習がレベルの高いもので、それが試合に生きている。このチームのボランチは日本を代表する選手たちがいる。そういう選手たちを超えていきたいという思いもある。もっともっと練習しないといけない」
オーストラリア戦ではボランチでコンビを組んだ【写真:徳原隆元】
■背番号変更の背景「あんまり言いたくないですけど…」
両者の関係性に緊張感が生まれたのが、2019年だった。
実はこの年、田中は自らの背番号を32から25に変更している。25は前年まで守田がつけていた背番号である。その理由を尋ねると、「これはあんまり言いたくないですけど……」と前置きしたうえで、田中はこんな思いを語ってくれていた。
「僕自身、選手として守田くんを超えたいというのがあります。守田くんは超えたい存在なんです」
当時の守田はすでに日本代表だったが、だからと言ってそこで白旗は上げない。むしろライバル心を口にしていた。こう言葉を続ける。
「一緒にやっていて尊敬する部分はありますし、日本代表にも選ばれていて凄いな、という思いはあります。守田くんの良さを吸収して得るものもあります。でも、だからこそ負けたくないというのもあります」
田中は、第3節の横浜F・マリノス戦で、ウォーミングアップ中に負傷した大島僚太に代わってスタメンに抜擢されると、攻守で躍動。その後は守田とともにコンビを組む機会が多くなり、シーズン通じて飛躍を遂げた。この年に初制覇したルヴァンカップの決勝でもスタメンとして120分ピッチに立ち続けている。
一方の守田は、6月に免許失効中に道交法違反で検挙されてクラブから処分を受けるなど、ピッチ外の問題も影響し、パフォーマンスに安定感を欠くようになり、日本代表からも外れるようになっていった。試合に出始めるにつれて、守田と気まずくなり食事に行く機会が減り寂しくなったことをのちに田中が明かしていたが、守田が危機感を覚えるほどの急成長を見せていたと言えるだろう。
守田が在籍した最終年となった2020年は、チームが4-3-3システムを採用。守田のアンカー、田中のインサイドハーフという共存が実に強力で、三笘薫やレアンドロ・ダミアンといった攻撃陣の破壊力も相まって、圧倒的な強さを見せてリーグと天皇杯の2冠を達成。守田の退団が発表されていた21年1月、田中は自身のインスタグラムで「攻撃も守備もできる自分の理想像でした」と守田を評し、「代表で待っててください。必ず追いつきます。」と綴っている。
あの同僚時代から4年の月日が流れようとしている。
川崎で凌ぎ合ってきたボランチコンビは、ともに戦いの舞台を海外に移し、現在も日の丸を背負っている。そしてW杯最終予選を戦いながら、再び切磋琢磨している関係が続いている。チームの心臓として君臨している守田がリードしているが、新天地のリーズ・ユナイテッドで輝きを見せている田中もまだまだ伸び盛りだ。
この2人のライバル関係から、まだまだ目が離せない。(いしかわごう / Go Ishikawa)
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