忍び寄るJ2降格の影、ゴール裏から「前向きな言葉」も…エースの落胆に映った現実【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年10月25日 19時30分
■【カメラマンの目】下位に沈む浦和と柏、負けられない一戦での“火花”
悪天候による延期から、10月23日に仕切り直しとなって行われたJ1リーグ第25節・浦和レッズ対柏レイソルの一戦は、激しい守備の応酬が核となる展開で進んだ。こうした強力な守備を武器として、火花を散らす内容になると、選手たちはボールをキープすることが難しくなり、どうしても試合の流れは途切れとぎれになることが多い。
実際、前半はそうした展開が強く表れていた。カメラのファインダーにはボールを持った選手の周辺に敵、味方が入り乱れる、潰し合いの場面が多く捉えられた。
しかし、リーグ順位のジャンプアップを強く意識した両チームの選手たちは、90分間のゲームのすべてを、長所の消し合いによって生じる退屈な内容で終わらせるようなことはしなかった。激しいぶつかり合いが繰り返されることで、両チームの選手たちの気持ちもより火がついたようで、タイトな守備にも屈することなく、失敗を恐れないダイナミックなプレーを徐々に見せていく。
パスでは力強い軌道のロングキックが繰り出され、ボールを受けた選手は敵とのフィジカルファイトに真っ向勝負で応え、守備網の突破を試みる。時間が経過していくにつれて、選手たちは激しいプレーをぶつけ合う展開に慣れていき、せめぎ合うコンタクトプレーはそのままに、お互いが形成する強力な守備網に対して、荒々しくもクリーンなプレーで挑み、攻防はより攻撃的になっていった。
この試合はたとえ守備を重視しても、選手たちの勝ち点3を奪取したいという思いが強ければ、内容は退屈なものにはならないということを証明する良い例となった。
しかし、勝敗はアディショナルタイムに明暗を分けることになる。浦和は試合終了間際に得点へのビッグチャンスとなるPKを獲得する。キッカーのチアゴ・サンタナは失敗へのプレッシャーに飲み込まれることなく、確実にゴールネットを揺らし、ホームチームが劇的な勝利を挙げたのだった。
対する柏はこの敗戦により、J2降格の影が忍び寄る低空飛行からの脱出を果たすことができなかった。残り4試合となった、これからのJ1に留まるための戦いが、より厳しさを増したことは間違いない。
柏の攻撃を牽引したマテウス・サヴィオ【写真:徳原隆元】
■アウェーで敗戦、柏のサッカーは悲観するものではなかったが…
それでも、柏がアウェーのピッチで見せたサッカーは、内容的に悲観するものではなかったと思う。
左サイドバック(SB)のジエゴは美しくない荒っぽさが消え、攻撃面での貢献も高くなっているように感じた。ブラジルのSBらしく果敢に攻め上がり、チームの攻撃の起点となるマテウス・サヴィオを後方からサポートし、左サイドからの攻めを活発化させていた。
そのM・サヴィオは巧みなテクニックを駆使して浦和の守備を掻い潜り、鋭い弾道のパスをゴール前に供給して攻撃を牽引。柏のエースナンバー10を背負う選手として存在感を示した。
さらに途中出場のフロートも、これまではどこかプレーに軽さがあったが、ようやく逞しい体格に合致した、地に足のついたパワフルなプレーを発揮できるようになっている。
チームを安定させる守備面でも浦和の攻撃の選手に素早く、そして激しく詰め寄り自由にプレーをさせなかった。試合終了間際の失点により、敗戦という結果を突きつけられたものの、浦和に試合の流れで崩される場面を作らせなかったことは評価できる。
サポーターたちも結果はともかく、試合内容には満足はしていないかもしれないが、悲観もしていないようだった。選手たちの奮闘を称え、挨拶をするためにスタンドに足を運んだ彼らに向けて前向きな言葉をかけていたことからも、サポーターたちの思いが察せられた。
しかし、アディショナルタイムの失点による敗戦は現実だ。カメラのレンズを向けた細谷真大の表情には落胆が滲み、自分がゴールを決めていればという思いが胸に刺さっているように見えた。
それでも、繰り返すがこの試合で見せた柏のサッカーは、決して内容的には悪くはなかった。サポーターたちもそれを分かっている。その事実を自信として胸に秘め、これまで以上に勝負に対して強いこだわりを持って、チームが直面している試練に立ち向かい、乗り切るしかない。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
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