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“天才少年”が湘南で注ぐサッカー愛 明かす幼少期の苦労「周りから嫉妬」「普通の人とは違った」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年10月28日 7時30分

■石井は小学生時代に取材を受けるなど注目、その後湘南U-15へ加入しプロの道へ

 J1湘南ベルマーレでプロ1年目のFW石井久継は、小学生時代にも“倉敷の至宝”として取材されるほどの注目を集めた。サッカーが大好きな少年はその後、湘南ジュニアユースへと飛び込み、現在19歳へと成長しプロへ。「77」の背番号を背負い、模索の毎日を送っている。そんな石井の学生時代のさまざまな苦労や、現在のクラブを選んだ理由、今もなお邁進する姿に迫った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

   ◇   ◇   ◇

 2022年より湘南U-18在籍ながらトップチームに2種登録された石井。翌年の第103回天皇杯の3回戦、ファジアーノ岡山との一戦で初ゴールを記録した。24年よりプロとして正式に昇格すると、24年7月6日のJ1リーグ第22節浦和レッズ戦では途中投入からJ初得点。3-2の劇的勝利へつながった貴重な1点は、サポーターの脳裏にも鮮烈に焼き付いている。

 そんな石井は、岡山県倉敷市出身。小学生当時から将来の日本代表候補としてメディアの脚光を浴びる。幼い頃からこうした取材を受ける選手には必ず、さまざまな苦労ももちろんあった。

「テレビとか出て、当時は知名度が実力と比例していなかったと思うんですけど……。周りからの嫉妬だったり、味方から見られる目とかも全然普通の人とは違いました」

 そう過去を振り返った石井は「とにかくサッカーが好き」という言葉を繰り返し、自身の原動力を明かす。技術向上への練習を怠らず身に着けた才能を武器に、着実に上へ、さらに上へと先を目指していった。

 周囲のさまざまな視線を受けながら「(小学生の頃は同僚などを)常にライバル意識はしていましたし、どうにかもっと上のレベルでやりたいという風にも常に思っていました」といった気概を胸に、地元のクラブから広島の福山ローザス・セレソンへと挑戦。「そのチームで一番になるという目標」を掲げて努力を継続する。その先で掴んだのが、湘南U-15への道だった。

 中学へ上がると同時に神奈川へ。4人家族の石井は、重大な決断の過去を「誰が神奈川へ付いていくのかとか色々ありました」と振り返る。最後まで悩んでいた母親を「行きたい」という自分の意志で説得。そこから6年間、母親が石井をサポートしてくれた。家族の温かさには、本人も感謝の思いをずっと持ち続けている。

 湘南へ加入した理由について石井は「初めて練習参加させてもらった時に、すごいサッカーしていてなんか楽しいなと感じたんです」と、心が動かされた瞬間を回想。いざ加入すると「味方のチームメイトも上手いしすごい優しい」と実感し、サッカーに打ち込める環境を喜んだ。

「小学校までは結構ライバル視されてきました。相手にはもちろんそうですけど、チームメイトからも……。普段一緒にいても遊ぶこともなかったです。湘南に来て本当にチームメイトには友達というか、心的にもぐっと来たところもありましたし、本当に早くベルマーレでサッカーがしたい。自分も成長できると思っていましたね」

「ここでプロサッカー選手になりたい」……そう強く思う理由を石井は赤裸々に話してくれた。クラブへの愛は言葉の節々からも、十二分に伝わってくるものがある。

■今季は怪我で2か月の離脱も…先輩たちに支えられさらなる飛躍へ

 アンダー世代の日本代表に選ばれるなど徐々に力を付けた石井は、湘南U-18在籍時の2022年夏に2種登録でトップチームへ。翌23年にはリーグ戦4試合、カップ戦2試合の出場機会を得る。そして天皇杯では岡山との一戦でクロスに合わせてトップチームで嬉しい初ゴール。今季はここまで14試合に出場し、浦和戦でJ初ゴールもマークした。トップチームでも着実に成長を重ねている。

 U-15、U-18でプロを目指し研鑽を摘んだ石井は、そこで感じた“雰囲気”がトップチームでも変わないことにも驚いた。

「トップも自分が思っていたよりもみんな優しいんだなと。去年は2種登録で参加させてもらいましたが、上がる前はお互いがギシギシしているというかちょっとライバル視して同じポジションの人が活躍したら嫌だとか、そういう感じなのかなと勝手に思っていました。けれど全然そんなことはなく、同じポジションの選手が活躍したら褒めてあげて、年下年上関係なく教え合ったり。みんなが学ぶ姿勢があることに、驚いたしこういう姿勢を持った人たちが最終的に生き残っていけるんだという印象でした」

 チームメイトにも恵まれた環境で、先輩から多くを学ぶ石井。24年7月には右膝内側側副靱帯損傷の怪我を負い、戦線から離れた時期もあった。呼ばれていたU-19日本代表の合宿への参加は叶わず悔しい思いもした。

 9月22日、怪我を乗り越え約2か月ぶりにJ1第31節セレッソ大阪戦(1-2)で湘南のピッチに帰還。わずか6分間と短い出場ではあったが、今後につながる大事な一歩だ。「とにかくサッカーが好き」と少年のように話すキラキラとした瞳には、より大きな舞台で活躍する石井自身の姿が映っているはず。念願のプロ1年目を戦う19歳は、さらなる飛躍を誓って突き進んでいく。

[プロフィール]
石井久継(いしい・ひさつぐ)/2005年7月7日生まれ、岡山県出身。福山ローザス・セレソン―湘南U-15―湘南U-18―湘南。幼少期より多彩な技術を持ち、小学生時代から“天才少年”として注目を集める。22年8月より2種登録でトップチームへ。24年から正式に昇格した。U-15から継続的にアンダー世代の日本代表にも選出されている。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

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