タイトル目前で失態…「もうPKだなって」 国立で「涙出た」地獄と天国を味わう28歳のドラマ
FOOTBALL ZONE / 2024年11月3日 8時30分
■名古屋MF中山克広が味わった激動のルヴァンカップ決勝戦
名古屋グランパスは11月2日、Jリーグルヴァンカップ決勝でアルビレックス新潟を3-3からの延長戦の末、3年ぶりの優勝を果たした。2-2のまま迎えた延長前半3分、一時勝ち越しとなる得点を決めたのは途中出場のMF中山克広だった。途中出場で出番を得た28歳は、後半アディショナルタイム(AT)に痛恨のPKを献上。地獄から天国へ。激動の決勝戦をを終え「勝手に涙出ちゃいました」と、安堵の声が漏れた。
名古屋が2-1とリードし、タイトル獲得まであとわずかに迫っていた後半AT5分過ぎ、接触プレーで明暗が分かれた。同35分から投入された中山が新潟FW小見洋太とマッチアップ。ペナルティーエリア内で突破を図った小見に思わず足を伸ばすと転倒。当初はノーファウルと判定されたが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入し、空白の時が流れる。
「正直に言うと、もうPKだなっていう印象があった。引っかけてしまったっていう感覚があったので」。最悪のシナリオを薄々と覚悟していた。案の定、オンフィールドレビューの末に判定がPKに変更され、新潟が千載一遇のチャンスを得た。これを小見が自らゴール右に決め、劇的な同点ゴールに。痛恨のPK献上に中山は唇を噛んだ。
「僕、最近の試合で チームに迷惑かけるようなプレーをしてしまうことが多かったなかで、また今日も同じようなことをしてしまって、ほんとに責任感すごい感じてました」
歓喜の瞬間をピッチで味わうはずが、地獄に落とされたような気分で延長戦を迎えることになった。その延長戦前、なんとか気持ちを切り替えようとする中山に、チームのメンバーが寄り添った。「試されてるぞ」。塞ぎ込みそうになった様子をみかねて言い寄った稲垣祥の言葉に救われた。
「ここ最近、迷惑をかけてしまうゲームが多かったので、毎試合、祥くんは試合後に連絡をくれたりとか、そういう話をすることがあったなかで、また今日もそういった声かけをしてくれてっていうのがすごい印象に残ってて、本当に僕にとっては大きかったなと思います」
汚名返上のチャンスは、すぐにやって来た。延長前半3分、MF山中亮輔のクロスにFWキャスパー・ユンカーが競り、さらにFW山岸祐也がつないだボールが中山のもとへ。思い切り右足を振り抜いた渾身のシュートがゴールへ吸い込まれると、会心のガッツポーズで歓喜を露わにした。
「ウイングバックからウイングバックっていう監督がずっと言ってたところを実行できたのは良かった」。中山のゴールで勝ち越したあと、再び同点に追い付かれた名古屋は、PK戦でキッカー5人全員が成功させ、3年ぶり2度目の栄冠を掴んだ。激動の決勝戦を終え、中山の表情には笑顔が戻っていた。
「もうほっとしたっていうか、なんか勝手に涙出ちゃいましたね。この決勝戦はほんとに人生変わるぐらいのものだったと思います。PKを献上してしまって、そのあとに結果を出せる、出せないでも本当に変わってくる。この“出せた”っていうところに関してはかなり今後のサッカー人生変わってくるなっていうふうには思ってます」
今季に清水エスパルスから加入し、新天地1年目で念願の初タイトルを獲得。優勝カップを見て、触って、プロとしてのやりがいを改めて噛みしめた。「人生でもなかなかないことだと思うので、もうあの感覚は忘れられないですね。もう本当にそこを目指したいって思う」。濃密だった120分。その過程に地獄と天国を味わった28歳のドラマがあった。(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)
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