町田に起こった「劇的な変化」 設備充実も…日本プロ野球トップは「桁違いの凄さ」【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年11月5日 8時30分
■サイバーエージェントが参入し町田の環境が一変
FC町田ゼルビアは、今季J1初挑戦ながら上位争いを繰り広げた。クラブアンバサダーを務める元日本代表DF太田宏介氏は、選手としても2022年夏から23年まで活躍。当時驚いたというクラブの進化について詳しく聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
◇ ◇ ◇
2018年より株式会社サイバーエージェントが、当時J2だった町田の経営権を取得。この結果、クラブ内部にも「劇的な変化」が起こる。太田氏の地元でもあるクラブはどう変わっていったのか。クラブハウスの設備に驚いたという太田氏は、「まずスピード感ですね」と、当時受けた衝撃を語った。
「『サイバーエージェントさんが(クラブハウスの)J1ライセンス基準を満たさないと』ということで、動き出してから完成までが非常に早かったですね。もちろん、候補地はもともとあったにせよ、ただ建物として造るのではなく、あの国立競技場を手掛けた隈研吾さんがデザインに携わってくれました。ものすごくおしゃれですし、明るい雰囲気のクラブハウスです」
そのうえで太田氏が「何より一番の魅力」と挙げたのが、「風通しが良く、年齢関係なく誰とでもコミュニケーションできる」点だ。これまで従来のクラブハウスは「それぞれの部署ごとに部屋が分かれていて、“ザ・オフィス”のようなイメージでした」と違いを挙げている。
「サイバーエージェントさん、ゼルビアの社風もそうだと思うんですけど、1階と2階が筒抜けになっていて、すごく広い空間がある風通しの良さがあります。正面玄関からミーティングルーム、トレーニングルームに続く道があって、2階には職員や選手が食事する食堂。すごくオープンな空間なんですよね。現場だけではなく、事業面を担う社員さんとの交流もあります。あとはやはりトレーニングルーム、ロッカールームに揃っている設備機器は素晴らしいなと思いますね」
こうしたサッカークラブの拠点が大きく育っているなか、太田氏は野球のクラブハウスと比較して課題も指摘する。「先日、ある取材でプロ野球の読売ジャイアンツのクラブハウスに行ったんです。もう桁違いに凄かったですよ。サッカークラブもまだまだだなと思いましたね」と興奮気味に話した。
「主に2軍の選手のためだと思うのですが、彼らに寮も完備されていて、生活する部屋、トレーニングできる仕事の部屋など、すべてが1つの場所に集約されています。トレーナーも常駐していて、いつでもケアを受けることができます。また分析のところで野球は凄かったですね。最近ではデータが重要になってきて、バッティングやスイングスピードなど事細かになんでも調べられる機材が揃っていました。ドクターもいて、食堂の品数も圧倒的。リラックスルームもあって……やはりこれがスポーツクラブのトップクラスだと、目の当たりにしました」
ただJクラブも進化を続けている。「Jリーグの中でも町田はトップに入るクラブハウスだと自負しています。しっかり整備されていて選手のモチベーションも上がりますし、このような環境でサッカーをやれていることに幸せを感じていました。今の選手たちもそうだと思います」と、太田氏は町田の最新設備に自信を持っていた。
太田宏介氏がデータの活用について話した【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
■データの活用でサッカー界にも変化
一方で、サッカー界でもデータの活用は進んでいる。「GPSで試合のスプリント数やトップスピードなど、さまざまな記録が翌日には出され、課題として洗い出されます。それを専門家たちが分析、アドバイスしてくれます。自分にとって何が必要なトレーニングなのかを考えて実施できる環境がありますし、ミーティングでもその部分を落とし込んでくれます。ものすごい分かりやすくなりましたよね」と、デジタルを活用した選手側のメリットを教えてくれた。
「だからもう、選手はサボれないですよね(苦笑)。全部数字で出てしまうから。僕自身も選手時代、取り組み方がめちゃくちゃ変わりました。当初は試合映像をレーザーポインターで当てながら監督が相手選手の特徴を解説したり、紙でそのポイントが配られたりしましたが、今だったら『前半開始から何分まで得点数が多い』『サイドからの得点率が何%だ』みたいにすごく細かくなりました」
また太田氏によると、「分析コーチは1人、2人のクラブが多い中で、町田には4人ほどいる」という。「例えばポジションごとのコーチが生まれたり、セットプレーの専属のコーチがいたり……。今後もより専門的になってチームが作られていくのではないでしょうか」と、こういったデータ活用の流れもサッカー界でさらに加速していくことを予想していた。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)
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