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日本代表レベル向上も…「一番すごいのは誰?」 大津祐樹が考えるサッカー界の悩み【見解】

FOOTBALL ZONE / 2024年11月7日 9時30分

■「今の日本代表は、時代の移り変わりの狭間にいる世代なのではないかと思う」

 日本代表は最新のFIFAランキングで15位に浮上し、森保一体制における最高順位を更新した。2026年北中米ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選では4戦を終え、3勝1分と危なげなく首位に君臨。欧州の第一線で活躍するタレントが名を連ね、“歴代最強”の呼び声も高いなか、現代表チームが抱える課題はなんなのだろうか。

 元日本代表FW大津祐樹氏は、ひと昔前の代表チームと比較した決定的な違いについて持論を展開しつつ、急速に進んだ“情報化社会”が日本サッカーにもたらす影響についても見解を述べている。(取材・文=城福達也)

◇   ◇   ◇

 10月15日にホームで行われたアジア最終予選第4戦のオーストラリア戦、結果は1-1と引き分けた。下馬評が高いなかで勝利を逃す格好となった一方、日本におけるアジアでの立ち位置が浮き彫りとなる試合にもなった。

「数年前までは、日本にとってオーストラリアはライバルのような存在だった。しかし、今回のオーストラリアの戦い方を受け、もはやそういった関係ではなくなったことが明確になったと思う」

 オーストラリアは屈強なDFを並べる5バックを形成し、日本の猛攻にひたすら耐え切る守備的な戦術を徹底していた。もはやそこには、当時アジア最強の座を争い、真っ向からぶつかり合ってきたオーストラリアの姿はなく、日本を格上と認める“弱者のサッカー”に割り切っていた。しかし、そんなオーストラリアに日本が勝ちきれなかったのも、また事実だった。

「間違いなく日本のサッカーのレベルが上がっている。ただ、上がれば上がるほど、先日のオーストラリアのような戦い方をしてくる相手が増えてくる。フェーズが上がるごとに対策されるのは、これまで日本が強豪国を相手にしていたのと同じこと。“対日本”を相手チームが意識してくる分、どんな相手でも難しさが出てくる時代には突入するだろうと思う。アジアで言えば、徹底的に引いてきた相手にどうやって得点を奪うのかが、当面の日本の課題になってくるのではないかと感じた」

 カタールW杯で優勝経験国のドイツやスペインが日本に敗れたように、日本もアジアカップでイラクとイランに屈する事態は起きる。“対策される側”が“対策する側”を上回るのは、例え両チーム間に実力差があったとしても、全くもって容易ではない。しかし、それが強豪国になるうえで立ちはだかる壁となる。


豪華な面々が揃う森保ジャパン【写真:ロイター】

■今の日本代表に不足しているポイント

 オーストラリア戦に関して、大津氏は「崩し切ることに意識が傾いていたように見えた」と日本の印象について言及し、「ミドルシュートだったり、そういった脅威も相手に見せつけて、守り方の選択肢を増やすと言いますか、迷いをもたらすことが必要だったのではないか」と指摘。かつての日本代表には、ミドルレンジやフリーキックからの一撃が専売特許の選手が数多くいた。そして、現代表に不足しているポイントと言えるかもしれない。

「ひと昔前の代表で言えば、中村俊輔さんやヤットさん(遠藤保仁)、本田圭佑さんがいたりと、一振りに迫力があったが、今のメンバーは皆が技巧派が多いこともあって、パンチ力が欲しいなという印象も正直ある。プレースキックで違いを生み出す選手がこれから現れてくれたら、日本がさらに高みを目指せる鍵となるはず」

 現在は、左足であればMF久保建英、右足であればMF伊東純也がキッカーを務める場面が多く、質の高いキック精度を誇っているのは間違いない一方、ゲームメイクやドリブル突破など、それぞれ最大の持ち味はキックとはまた別のプレーにある。このエリアで足を振らせれば、この距離でFKを獲得すれば決めてくれるだろう……。そういった絶対的なキッカーがピッチにいるのといないのとでは、やはり決定的な違いとなる。また、突き抜けた存在の必要性も説いている。

「10〜20年前と比べても、今の代表メンバーは本当に全員のレベルが世界基準にある。当時のチームは個性が光る集団だったのに対し、今は平均値が極めて高い。その中で、飛び抜けたスター選手が出てくることが大事になってくるかもしれない。今の日本代表は非常にレベルが高い一方で、代表の顔と言えば誰? 一番すごいのは誰? と、もしアンケートを取ったら、けっこう票が割れるんじゃないかなと思う。野球の日本代表も、全員のレベルが高い中で、大谷翔平選手という圧倒的存在がいることが大きい。とはいえ、サッカーの日本代表もレベルも高くなってきているからこその嬉しい悩みですね」

■情報やデータは日本サッカーを強くするのか?

 現在、株式会社ASSISTで代表取締役社長を務めている大津氏が注力している事業の1つに育成がある。サッカー選手を目指し、がむしゃらに公園でボールを蹴り込んでいた大津少年の時代とは異なり、現代は情報やデータを基に成長を促進させる環境がある。自分の特長や課題が可視化されることは、もちろんトレーニングの効率化につながる。一方で、異彩を放つキャラクターの持ち主が減っていく可能性を指摘している。

「当時は情報が全くと言っていいほどなかったので、何をやればいいのか、どこを目指せばいいのか、正解が分からない中でそれぞれが個性を磨いていた。今は情報収集が当たり前の時代になり、今の現役選手だけでなく、育成世代にとっても充実した環境が揃うようになった。何をどう取り組むべきなのか、正解がデータとして可視化されるようになったのは非常にポジティブである一方、異色な個性が出てきにくい環境にはなったと言えるかもしれない。でも、際立つ存在がいないことが全体のレベルが上がっている裏付けとも言えるわけで、こればっかりは5年後、10年後に日本サッカーがどの立ち位置にいるのか、そこで答え合わせをするしかない」

 正解がデータとして与えられる英才教育が、勝負の世界で果たしてすべてにおいてプラスに働くのか。正解を自ら導き出すメンタリティを身につけてきた歴代の選手たちを凌ぐことはできるのか。大津氏は「僕がプロ1年目で入ったサッカー業界の感性と、引退する時の時期の感性とでは、全くの別物となっている。そういった意味では、今の日本代表は、時代の移り変わりの狭間にいる世代なのではないかと思う」と分析しつつ、「行き着く先はわからない。でも、だからこそ、今後どうなっていくのか、楽しみでしかない」と目を輝かせていた。(城福達也 / Tatsuya Jofuku)

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