アトランタ五輪代表の盟友が一変「驚きました」 プロ生活32年…“話さない男”の変貌ぶり【前園真聖コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年11月7日 19時20分
■50歳で現役引退を発表した伊東輝悦に抱く印象
10月31日、50歳の伊東輝悦が今シーズン限りでの引退を発表した。Jリーグが開幕した1993年に清水エスパルスに加入し、ヴァンフォーレ甲府、AC長野パルセイロ、ブラウブリッツ秋田、アスルクラロ沼津で現役を続けてきた大ベテランがピッチを離れることでJリーグの歴史も1つの終わりを迎える。アトランタ五輪のチームメイトだった元日本代表の前園真聖氏に伊東の印象について語ってもらった。(取材・構成=森雅史)
◇ ◇ ◇
J3沼津の伊東輝悦が、今季限りでの引退を発表しました。50歳のテルは学年で言うと、僕の1年下ですが、1996年アトランタ五輪のチームメイトでした。つまり僕が去年までプレーを続けていたという感じです。とても考えられないことです。
長く現役を続けると大変なのは、身体のキレがなくなったり、スピードがなくなったりすることだけではありません。肉体的な衰えは当たり前になるのです。
それよりもキツいのは、年齢が上がって行くにつれて試合に絡めなくなってくることです。若い時は当然のように毎試合先発でプレーできていたのが、歳をとってくると途中交代が増えたり、ベンチスタートになったり、あるいはベンチ外になっていきます。
それでも試合に向けてずっと準備しなければなりません。今までと同じようにトレーニングを積みながら、いつか来る出番に向けてモチベーションを保ち続けるのです。これが本当に厳しいんです。どうしても気力が続かなくなる。そして引退を決意するんです。
長く現役を続けた選手というのは、その気力が続いたという証拠です。もちろん上を見ると57歳の三浦知良選手がいますし、今後まだまだできそうなベテランもいるのですが、その人たちの折れない心というのはもっと称賛されてしかるべきでしょう。そしてJリーグの歴史と同じ32年間も現役を続けてきたテルには多くの称賛が集まってほしいと思います。
テルは故ディエゴ・マラドーナに引っかけて「テルドーナ」と言われるほどテクニックのある選手でした。ですが、僕はそれ以上にひたむきにプレーする姿のほうが彼の印象として残っています。
例えば、1996年アトランタ五輪の初戦、ブラジル戦ではブラジルのGKとDFがぶつかってこぼれたボールをテルが蹴り込んで決勝点を奪いました。相手のミス絡みだったので「ごっつぁんゴール」のように言われることもありますが、それはテルがなぜ点を取れたかという点を見逃しています。
あの時、テルはボランチの深い位置から70メートル走ってゴール前までダッシュしていました。アタッカーの僕やFWの城彰二さんを追い越して詰めていたのです。もちろんそこの嗅覚があったことも凄いのですが、試合も終盤を迎えようとする後半27分にあそこまで走れたというのがテルの凄さを表しています。
そしてテルは長く現役を続けることで態度が変わっていきました。
先日、僕のYouTubeチャンネルに出てもらって久しぶりに会った時、よく話すようになっていたのに驚きました。それでもほかの人に比べたらかなり少ないのですが、若い時は本当に話さない男だったんです。メディアの前でも口を開かないし、インタビューでも言葉少なで、きっと当時取材した人は大変だったと思います。
ですが、現役を続けてチームの中で立場が変わり、若い選手から話しかけられたり、彼らに何か伝えたりしたいことが増えて、話すようになったのでしょう。
それにしても、引退会見にオーバーオール姿で出たのは驚きでしたね。そう言えばYouTubeチャンネルに出てくれた時も同じ格好でしたし、僕が知っている中では、ホンジャマカの石塚さんとテルはやっぱりオーバーオールが似合っていると思います。
ともあれ、本当にお疲れ様でした。まずはゆっくりしてください。(前園真聖 / Maezono Masakiyo)
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