欧州挑戦も半年で契約解除「無職の2か月」 身重の妻と離れ…渡った先の壮絶な過去【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年11月11日 7時50分
■15年夏にサラゴサへ移籍もわずか9試合で契約解除…長谷川が回顧したスペインの経験
J3ガイナーレ鳥取で最年長の元日本代表MF長谷川アーリアジャスールは11月7日、クラブを通じて今シーズン限りの現役引退を発表した。そんな長谷川は、これまで数多くのJリーグクラブに加え、スペイン2部に挑戦した経験がある。恩師に呼ばれチャンスを掴んだのも束の間、半年で契約解除となった激動の移籍を振り返ってくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
◇ ◇ ◇
長谷川は横浜F・マリノスのユースから2007年にトップチームに昇格。その後12年からFC東京へ渡り、恩師ランコ・ポポヴィッチ氏と出会う。14年にはポポヴィッチ氏が新たに就任したセレッソ大阪に完全移籍。15年7月には恩師に呼ばれ、スペイン2部レアル・サラゴサへ渡り海外クラブ初挑戦となった。
しかし公式戦9試合の出場にとどまり、ポポヴィッチ氏解任の影響もあって長谷川も約半年で契約解除となってしまう。「プレーした半年間も濃かったですけど、その後の2か月もまた無職っていう期間がありました。その2か月の方がもしかしたら濃い時期を過ごしたかもしれないですね」と当時に思いを馳せる。
長谷川は現地で他クラブのオファーを待つ空白の2か月を過ごしたのち、16年3月に湘南ベルマーレへ移籍。日本でキャリア続行を選んだ。苦しい時間も多かったと明かしたが、それでも「27歳のタイミングで初めての海外挑戦でした。すごく自分のサッカー人生のなかでも良い経験をさせてもらいました」と、今ではその過去がプラスに生きていることを実感している。
「選手としてやっぱり初めて海外へ行ってもっと長くキャリアを築きたかったですけど、そう簡単には上手くいかず……。でもそれってやはり行ったことでそういう経験ができたと思うんです。セレッソにいた時の方が条件も良かったですし、僕にはその時家族もいて妻も妊娠中でした。自分の夢を追いかけた結果が、いい結果につながったらもっと良かったですけど。行ったことに後悔はないですね」
その後長谷川は湘南、大宮アルディージャ、名古屋グランパス、FC町田ゼルビアと渡り歩く。だが22年のシーズン終了とともに町田と契約満了となり、そこからフリーの状態が約半年間続いた。翌年4月に代理人経由で声がかかったのが、現在も在籍する鳥取だった。
長谷川は「スペインが人生にとって凄くいい経験だったからこそ、ガイナーレ前の期間も乗り越えられたと思っていますし、すべてにやはり意味はあるんだなとは思います」と自身の糧となった経験を振り返る。クラブでもその体験を、後輩とのやり取りのなかで答えたりしながら、自分なりに還元。「押し付けるというよりはその悩みを聞きながらそれに対してアドバイスできたらいいなという話し方はすごい意識していますね」と、長谷川ならではの気遣いもあふれている。
■スペインは「より具体的」、日本との違いにも言及
一方で、スペインと日本で感じたギャップについて尋ねると「自分の意見だったり、自分のやりたいことっていうのを向こうはしっかりと伝えるし、それを表現するイメージです」と、意思表示の面で大きな違いを指摘する。
「日本人とか、Jリーグにそういう部分がないわけではないのですが、より向こうは具体的だったり、直接自分はなぜ使われないのかという話を監督に話に行く選手もいました。あとは大事な試合だったり、もらったチャンスに対してしっかりそこで発揮する力というのは海外の選手の方が強いのではないかな」と海外選手の特徴にも言及した。
短い在籍期間ではあったが「スペインはすごくいい国」と、今でも長谷川は好印象を抱いている。「街の人柄も明るいですし、ご飯も美味しい。天気もいいですし、もう一回行きたいなと思える国ですね。あんなに辛くて苦しかったはずなんですけど、それでもまた行きたいというのは、やっぱり魅力的な国だなと。サッカーの歴史もありますし、リーガの強いクラブ以外のチームもすごく面白いサッカーをします。もし機会があればサッカーだろうとプライベートだろうと、また行きたいですね」と笑顔でスペインの良さを語ってくれた。
スペインでの濃い経験を経て、自身9つ目のクラブで邁進した長谷川。「1日1日を大切に」という思いを胸に、プロサッカー生活18年目…今季限りでスパイクを脱ぐ。苦しい時期がありながらもJリーグの舞台で戦ってきた姿は、過去の経験値をポジティブに受け入れたからこその強さが詰まっている。
[プロフィール]
長谷川アーリアジャスール(はせがわ・あーりあ・じゃすーる)/1988年10月29日生まれ、埼玉県出身。横浜FMユース―横浜FM―FC東京―C大阪―レアル・サラゴサ(スペイン)―湘南―大宮―名古屋―町田―鳥取。元日本代表。J1通算251試合17得点、J2通算97試合14得点、J3通算33試合3得点。持ち前のパスとドリブルを駆使しチャンスを演出する。22年シーズンで町田を契約満了となりフリーとなっていたなか、23年4月に鳥取に加入。翌年8月からは副キャプテンに就任し、チームを支えていた。24年11月に今季限りでの現役引退を発表している。(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)
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