豪州守護神が見解…熱狂的な欧州より「日本のほうがいい」 決定的な応援スタイルの違い【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年11月13日 7時10分
■欧州トップリーグでプレーした36歳の助っ人が見た日欧応援スタイルの印象
J1名古屋グランパスで通算7シーズンプレーするオーストラリア人GKランゲラックは、今季限りで日本を去り、来年からは母国で現役キャリアを送る。これまでドイツやスペインの欧州トップリーグでも実績を積み重ねた36歳の助っ人に、“Jの応援風景”について訊いた。熱狂的なムードを醸し出す欧州スタイルを必ずしも良しとはせず「日本のやり方のほうがいい」と見解を述べる。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓)
◇ ◇ ◇
ランゲラックは2007年、母国のメルボルン・ビクトリーでプロデビューを飾り、3年後に欧州へ渡った。獲得に動いたのは、ドイツの名門ボルシア・ドルトムント。熾烈なポジション争いを強いられながらも、2012年のDFBポカール決勝ではライバルの怪我により急遽出番を掴み、優勝の瞬間をピッチで味わった。
ドルトムントには5シーズン在籍し、その後、シュツットガルトで2年、2017年8月から半年間はスペイン1部ラ・リーガのレバンテに所属。ヨーロッパでは21歳で母国を離れてから、7年半を過ごした。そこから、文化も何もかも異なるアジアへ。サッカーを取り巻く環境も同様だ。「すごくユニークでどこにもないような文化」と表現する日本に身を置いて7年、来日前を思い起こしてもらいつつ、日本の環境やサッカー面への印象を改めて振り返ってもらった。
「すごくいい印象を持っていましたし、正直あまり印象が変わったっていうところはありません。綺麗で清潔なスタジアムがあって、攻守にとても速いサッカーをするっていうことも分かっていましたし、思っていたところとそこまで大きな違いはなかったです。
文化や環境面に関しては、ヨーロッパと根本的にすべてが違うけれども、そこまで時間をかけずに慣れることができたのかなと思っています。新しいことに対して常にオープンでいなければいけないですし、物事を理解しなければいけないとも思っていたので」
母国でのキャリアを除けば、日本と欧州で過ごした時期は、およそ半分ずつになる。ピッチ上で感じた応援による熱気は、大きな違いがあったはずだ。大音量の声援、発煙筒が焚かれる欧州スタイルは熱狂ムードを生む。一方で、過激なファンにより選手が標的に晒されることも少なくない。
「ヨーロッパでは、もうすべてに対して批判をしてくるんですけれども、ただそれが情熱的かと聞かれたら、また違うのかなと思っています」。サッカーがその国の文化として根付いているほど、ファンは熱狂し、時には暴徒化する。そうした傾向は、欧州や南米のサッカーシーンでよく見られる光景だ。
殺気立つムードが醸し出されるようになれば、老若男女が観戦できる環境とは言い難い。今夏に欧州でのプレーからJリーグへ復帰したMF川辺駿(サンフレッチェ広島)は「FOOTBALL ZONE」のインタビューで「家族には来てほしくないくらい危ない。サポーターから何か投げ込まれたり、汚いジェスチャーも普通の環境」と、ダービーマッチで経験した安全面の問題を語っている。
そうした意味で見れば、日本はより純粋に“スポーツを楽しめる”観戦環境と言えるのかもしれない。ランゲラックは言う。
「日本のファンの方々のスタイルのほうがいいなと、僕は思っています。選手へのリスペクトの見せ方だったり、90分間すべてを出し切ってくれるサポートは本当に励みになる。ファンが熱心に批判をしているからと言って、ヨーロッパのファンサポートの方々がより情熱的なのかと聞かれると、僕はそうだとは思わない」
その国々でサッカーのスタイルが異なるように、応援風景にも独自のものがある。欧州や南米に比べれば、日本ファンのサポートは大人しく、そして、温かさがある。欧州トップリーグで実績を積んだJ助っ人はそうした“Jの応援風景”に好感を抱きつつ、この先も日本独自の応援スタイルが継続されていくことを願っていた。
[プロフィール]
ミッチェル・ランゲラック/1988年8月22日生まれ、オーストラリア出身。メルボルン・ビクトリー(オーストラリア)―ボルシア・ドルトムント(ドイツ)―シュツットガルト(ドイツ)―レバンテ(スペイン)―名古屋グランパス。193センチの長身を生かした抜群のセービングが魅力。2021年にはJリーグベストイレブンに選出され、名古屋の歴代外国人籍選手として最多公式戦出場数を誇る。(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)
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