名門校卒のプロ内定者続々…全国で無名の「悔しい記憶」から変貌、J熱視線注いだタレント集団
FOOTBALL ZONE / 2024年11月16日 9時30分
■2020年度の名門・前橋育英高を支えたタレントが今、プロ注目世代に
高校サッカーの名門として君臨する前橋育英高校は、群馬県のみならず全国の高校サッカーシーンを長年牽引し続けている。黄色と黒の縦縞のユニフォームを身に纏い「タイガー軍団」と呼ばれる名門は、これまで山口素弘、松田直樹(故人)、細貝萌など多くの日本代表選手、Jリーガーを世に輩出してきた。
この名門校から多くのJリーガーを擁した「豊作の年」と呼ばれる年代はいくつかある。近年で言うと、鈴木徳真(ガンバ大阪)と渡邊凌磨(浦和レッズ)の2枚看板を擁した2014年度のチームだ。この代から高卒プロは1人もいなかったが(渡邊は当初大学進学予定でそこからドイツへ)、彼ら2人のほかに大学を経由して坂元達裕(コベントリー)、小泉佳穂、吉田舜(ともに浦和)、岡村大八(北海道コンサドーレ札幌)と実に6人のプロを輩出した。
さらに2017年度は渡邊泰基(横浜F・マリノス、高卒加入時はアルビレックス新潟)と松田陸(ジェフユナイテッド千葉、高卒加入時はG大阪)の2人の高卒プロのほかに、筑波大を経由して横浜FM入りし、昨年3月に日本代表にも選出された角田涼太朗(カーディフ)、大卒プロとしてはファジアーノ岡山でキャプテンを務める田部井涼、後藤田亘輝(水戸ホーリーホック)、飯島陸(ヴァンフォーレ甲府)、宮崎鴻(栃木SC)を合わせた7人のプロを輩出。1学年下にも新潟の心臓となっている秋山裕紀、札幌で躍動している近藤友喜、室井彗佑(大宮アルディージャ)らがいた。
そして今、注目を集める年代がある。それが2020年度のチームだ。ちょうど大学4年生にあたる彼らの代の高卒プロは櫻井辰徳(水戸)のみだった。しかし、大学に進学した選手たちが次々とプロ内定を勝ち取っており、4年生ながらすでにプロで頭角を表している選手もいる。
その筆頭格が新潟でルヴァンカップ決勝のピッチにスタメンとして立った稲村隼翔だ。CB(センターバック)としてJ1リーグ11試合に出場し、ルヴァンカップにおいては惜しくも決勝で敗れたものの、主力級の活躍でファイナル進出の立役者の1人となった。
さらに稲村と同じ東洋大学でプレーする新井悠太も、3年生だった昨年に来季加入内定先の東京ヴェルディでプロデビュー。切れ味鋭いドリブル突破で一気にJ注目の選手となり、U-22日本代表にも選出された。今季は東京Vでの出番は3試合(すべて途中出場)に留まっているが、東洋大では10番を背負い、チームの中心として躍動を見せている。
ルヴァンカップ決勝でも活躍をした稲村隼翔【写真:徳原隆元】
■コロナ禍に見舞われ夏の全国大会が中止に…20年度の代が味わった悔しさ
ほかにも明治大学でナンバー10を背負い、大学ナンバーワンアタッカーと称される中村草太はJ1のビッグクラブが激しい争奪戦を繰り広げたなかで、サンフレッチェ広島入りが内定。さらに、日本大学の熊倉弘達と熊倉弘貴の「熊倉ツインズ」は兄弟揃ってプロ入りが内定した。背番号10の冷静沈着な判断力とパスセンスが売りのボランチである兄・弘貴は横浜FCへ。キレのあるドリブルとスピードあふれる抜け出しが魅力のFWである弟・弘達は甲府へ進む。
「お互い何を考えているか分かるので、全体のバランスを見ながら2人の距離感を意識しています」と弘貴が語るように、常に息の合ったプレーでホットラインを形成し、夏の総理大臣杯ではチームをベスト8に導いている。
ちなみにこの年代の1学年下には、高卒でV・ファーレン長崎に加入し、3年目の今年は左ウイングとして欠かせない存在となっている笠柳翼、同じく高卒でザスパ群馬に加入し、今年はモンテディオ山形で右サイドバックとして活躍する岡本一真もいる。
だが、2014年度、17年度と比べてこの20年度の代の選手はあまり知られていないのは、彼らが全国に出ていない代であることに起因している。
高校選手権で2014年度のチームは準優勝、17年度は初優勝を成し遂げている。しかし、20年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、インターハイが中止となり、プリンスリーグも1回総当たりの変則日程となった。そして唯一の全国大会となった選手権では、群馬県予選準々決勝でライバル桐生第一に0-1の敗戦。注目の年代は道半ばでひっそりと姿を消したのだった。
「本当に悔しい記憶しかありません。思うようにサッカーができなかったのもそうですし、僕自身もサッカーに対する向き合い方で苦しんでいた時期でした。でも、あの時の経験があったからこそ頑張れたし、みんな成長しているのだと思います」
稲村がこう振り返ったように、自らの力で「注目の世代」へと変えていった彼らは今、成長過程の真っ只中にいる。稲村を筆頭に、ここからさらなる飛躍を遂げる「2020年タイガー軍団」の動向にぜひ注目をしてほしい。(FOOTBALL ZONE編集部)
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