18歳でいきなり海外「どうしたらいいんだ」 逆輸入FWが異国で救われた3人の恩人【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年11月18日 7時50分
■二田理央はオーストリアで挑戦を続ける日本人と出会う
浦和レッズに今夏移籍加入したFW二田理央は、サガン鳥栖U-18から直接オーストリアに渡った異色のキャリアの持ち主だ。初の一人暮らしが言葉も通じない海外という激変した環境だったが、現地では同じくサッカーで上を目指す日本人との出会いがあり、支えになっていた。(取材・文=轡田哲朗/全4回の2回目)
◇ ◇ ◇
鳥栖の下部組織から18歳の7月にいきなりオーストリア2部(当時)のインスブルックに加入した二田は、まずは3部所属のセカンドチーム(U-19)からのスタートになった。「最初は寂しかったですね。鳥栖でもチームの寮でみんなといたのに、急に1人になっちゃって、しかも初めての一人暮らしが海外で。どうしたらいいんだろうと」と、生活環境もひっくるめて新天地での生活が始まった。
ただし、二田にとって大きな存在がそこにいた。セカンドチームを率いていたのが、かつて浦和でフォルカー・フィンケ監督の通訳を務めた経験のあるモラス雅輝氏だったのだ。そのため、「モラスさんが監督だったので、ドイツ語のミーティングの後に内容を教えてくれたり、練習中も日本語で教えてくれたりと。モラスさんの奥さんも日常の困ったことは親切に教えてくれたし、最初の1年はドイツ語の勉強も教えてもらった」という心強いサポートを受けることができた。
そして「モラスさんが監督だったこともあって、オーストリアのサッカーやヨーロッパのサッカーを最初に教えてもらえた」のも大きかったと話す。
「毎日、すごく新鮮な感じがして。今、海外で暮らしているのかって」という日々を過ごし3か月ほどが経った頃に、「オーストリアですでに経験のある西田悠人選手(湘南ベルマーレユース出身)が移籍してきて、チームが借りているマンションに一緒に入ることになった」のだという。
「部屋は違うけど一緒のキッチンを使うような形の暮らしだったので、一緒に練習に行って。それが自分としてはすごく楽しかった。試合も一緒に行って、ああだこうだと話して、オフは一緒に街に出てリフレッシュして色々な話もしましたね。次の半年からは日本人フィジオの原辺允輝さんも来て3人で暮らすような感じで、本当に楽しかった。恵まれていたなと思いますね。選手もトレーナーもチャレンジしたいと思って日本から来ているわけだし、自分も同じ気持ちで来ているから話も合うし、サッカー以外の時間も楽しかった」
サッカーの部分では、オーストリア3部のレベルはそれまで過ごしてきた鳥栖U-18や、同じ九州の強豪校などと比較すれば「ユースや強豪校なら、それより強いチームはあるかなという感じだった。自分でも結構やりたいように点を決められたけど、ユースではこんなに自由にできなかったなという感覚もあった」というもの。少し余裕のある力関係だったこともあり「背後に走る自分を目がけて蹴って、点を決めるという感じでチームの戦術もできてきて、モラスさんからも評価してもらえた。すべてが上手くいったわけではないけど、自分の得意なプレーができて良かった」と好スタートを切ることができたと振り返った。
二田にとって、モラス氏から与えられた大きな言葉が「ヨーロッパでは、結果を残してちょっとずつでもステップアップすることが大事だ」というもの。だからこそ「いきなり1部に行っても、その時の力じゃ何もできないと感じていたので、少しずつ結果を残していきたいと。3部から2部に上がって、結果を残して1部に行きたいなと思っていた」と、上を見ながら、同時に地に足を着けて戦っていった。
最初の半年で結果を残した二田は、シーズン後半は2部で戦うトップチームの練習に参加し、試合は3部のセカンドチームで出場するという日々を過ごす。そこでは「トップには財前淳選手(京都サンガF.C.U-18出身)がいたので、練習では一緒にやった」のだという。ここにもサッカーの世界でのチャンスを求めて海を渡った日本人との出会いがあった。
二田はオーストリアでの2シーズン目を迎えるタイミングでインスブルックの財政難もあり同じ2部のザンクト・ペルテンに移籍することになるが、モラス氏もテクニカル・ダイレクターとして同じクラブに加入することになった。また、原辺氏もザンクト・ペルテンの女子チームでトレーナーを務めた。そのため、異国の地で戦いながらも母国語でコミュニケーションを取れる、ホッと一息をつける場所が常にあった。
鳥栖でのトップ昇格を目指していたところから急転直下のオーストリア行きでキャリアをスタートした二田だが、次の転機は欧州での3シーズン目が終わるタイミング、2024年の夏に訪れたのだった。
[プロフィール]
二田理央(にった・りお)/2003年4月10日生まれ、大分県出身。サガン鳥栖―FCヴァッカー・インスブルックⅡ(オーストリア)―FCヴァッカー・インスブルック(オーストリア)―SKNザンクト・ペルテン(オーストリア)―浦和レッズ。スピードを生かしたドリブル突破を武器に、攻撃にアクセントを加えるアタッカー。欧州クラブでのプレーを経て2024年6月に“逆輸入選手”として浦和へ完全移籍した。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)
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