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全国制覇から突如苦戦、強豪校に名乗りも…取り巻く環境“激変”「もうまぐれはない」

FOOTBALL ZONE / 2024年11月25日 7時50分

■昨夏インターハイV、明秀日立高が再び全国切符を掴んだ過程

 第103回全国高校サッカー選手権茨城県予選決勝。明秀日立はプリンスリーグ関東1部に所属するライバル・鹿島学園との一戦を制し、2年連続6回目の選手権出場を果たした。

「もし2回目の全国優勝を目指すのであれば、もうまぐれはない。今まで以上の実力をきちんとつけない限り、2回目は来ないと思っています」

 試合後、明秀日立を率いる萬場努監督がこう口にしたように、彼らを取り巻く環境は昨年の夏に大きく激変した。北海道で開催されたインターハイにおいて、初戦で優勝候補の静岡学園を2-1で下すと、2回戦も突破し、3回戦ではこちらも優勝候補筆頭の青森山田と激突。大一番で後半アディショナルタイムで決勝弾を叩き出すという劇的な展開で1-0の勝利を収めると、準々決勝、準決勝も突破して初の決勝進出を果たした。桐光学園との決勝戦でも2-2でPK戦の末に勝利し、ついに全国制覇という偉業を成し遂げたのだった。

 だが、その後は対戦相手の目の色が変わった。3バックと4バックを巧みに使いこなすサッカーに対して綿密な対策を練られ、キーマンには徹底したマークがついた。それでも昨年度の選手権出場を果たしてベスト16まで進出した。だが、その一方でプリンスリーグ関東2部昇格を懸けたプレーオフでは、初戦で成立学園に0-2で破れて初のプリンス昇格は叶わなかった。

 今年に入ってからは苦戦が続いた。インターハイ予選決勝では鹿島学園に敗れて、2連覇の夢は予選で断たれた。「挑むべきハードルが上がった中でのスタートでしたので、しっかりと選手個々が成長を遂げるということにフォーカスを当ててやってきました」。萬場監督がこう口にしたように昨年掴んだ基準を大事にしながら、目先の勝利に焦りすぎずに技術、メンタル、戦術面でもコーチングスタッフと選手たちがしっかりと向き合いながら日々を積み重ねて行った。

「ただ勝てばいいのではなく、試合をこなすごとにチームとして狙いとしたものがどれくらいできて、どれほどのクオリティーを出せているのかを、我々スタッフと選手たちで目線合わせを繰り返してきた」

 3バックと4バックの併用の際のポジショニング修正だけではなく、状況をチームとして把握して「なぜ今、これをやっているのか」を全員で共通認識を深めながら、勝利に向かってのルートをきちんと辿っていく。その間に攻守の切り替えのスピードや、人とボールの連動性、アイデアだけではなく、再現性の高いシチュエーションワークなどを繰り返してきたことでチームは徐々に力をつけて行った。

 その成果は鹿島学園とのリベンジマッチで如実に現れた。相手のサイド攻撃を封じるべく4-4-2を敷き、前線には全国制覇を経験した運動量とスペースに飛び込む力を持った竹花龍生と柴田健成を2トップに置くことで、「みんなに『立ち上がりから点を取りに行くぞ』というメッセージ」(萬場監督)を共有。チームとしての狙いを明確にしたうえで臨んだ。

■全国優勝から1年半…手にした「常にプランB、Cを持っている」状況

 その采配はずばり的中した。立ち上がり6分にセットプレーからインターハイ決勝で2ゴールを叩き出した柴田が先制点を挙げると、鹿島学園の鋭いカウンターに対してもインターハイ優勝メンバーであるGK重松陽を軸に細かいラインコントロールと、両サイドハーフの献身的なプレスバックなどで牙城を築き続けた。

 そして後半12分には竹花が左からカットインすると、「夏以降、萬場監督に左足のミドルを徹底して磨けと言われてやり続けていた」と口にしたように、右足で打つと見せかけて切り返し、DF2人の逆を突いてから左足一閃。これがゴールに突き刺さり、貴重な追加点を叩き出した。直後にポストプレーヤーの保科愛斗を投入し、柴田と竹花をインサイドハーフにしてブロックを作り、さらに終盤には5バックに切り替えて堅守を貫徹。2-0の完封勝利を手にした。

「もう少しボールの主導権を握ることができれば3バックも用意していました。自分たちの力と相手の力を掛け合わせて、いかにオンタイムで変化させていけるか。相手が我々の対策を本気でしてきた時に、それを凌駕する頭の回転のスピードと、攻守のスピード、そしてクオリティーを出していくことを意識しています」(萬場監督)。

 全国優勝から1年半、彼らが手にしたのは、常にプランB、Cを持っていることと、そのカードを切るのか切らないのか、切ってからさらにそれを戻すのか戻さないのか。その判断をスタッフが握り、かつ選手たちもベンチワークを理解しながら対応する組織力にある。そのマネジメントの中で竹花のように個々が課題を見つけて研鑽に取り組む。

「少しは精度が高くなったなと思ってもらえるようなサッカーができれば、全国でもやれると思っています」

 胸に刻まれた星をもう1つ増やすべく。明秀日立は自分たちのスタイルをブラさずに冬の大舞台に挑む。(FOOTBALL ZONE編集部)

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