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17歳逸材は「選手権に出ない」 日本と欧州、育成制度の“決定的な差”「難しいハードルがある」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年11月28日 9時30分

■【専門家の目|大津祐樹】元日本代表FW大津祐樹氏に訊く日欧サッカーの育成事情

 日本と欧州の育成制度が大きく異なるのは、もはや周知の事実だ。欧州には世代別で階層の細かいアカデミーが設置されており、日本には高校サッカーや大学サッカーといった環境がある。選手にとってはどちらがよいのか? そんな簡単に答えが出るはずもないテーマだが、現役時代を欧州で過ごした経験を持つ元日本代表FW大津祐樹氏は、育成制度において、日本にはなくて欧州にある利点、そして、欧州にはなくて日本にある利点について持論を語った。(取材・文=城福達也)

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 17歳の高校生FW高岡伶颯が来季、イングランド1部サウサンプトンへの加入が内定したことは世間でも話題となった。Jリーグを経由しない”飛び級”で世界最高峰のリーグに挑戦するわけだが、今冬に開幕する全国高校サッカー選手権にも、日章学園(宮崎)のエースとして参加する。

 日本でも10代から欧州に挑戦するケースが着実に増えてきている一方、現役時代にドイツとオランダでプレーした大津氏は、欧州のアカデミーを実際に目にしてきたうえで、「やはり欧州の育成制度は日本とまったく異なると感じた」と語る。

「日本で例えるなら、逸材が高校サッカー選手権に出場することはないんです。欧州では、16歳でも17歳でも、とっくにプロとして活躍している環境にいる。その見極め方とチャンスの与え方が、非常にしっかりしている。日本では、仮に高校1年生でプロで通用するレベルにあったとしても、実際にプロ契約してピッチに立つというのは制度的に難しいハードルがある」

 日本の高校生は、たとえプロになれるレベルにあるにしても、まずは選手権やインターハイの優勝を目標に設定する選手が大半だろう。もちろん、将来は欧州5大リーグでプレーしたい、日本代表で活躍したい、といった長期目標も抱いていることも分かっている。

 その一方で、「たとえば17歳のヤマルは、すでにバロンドールを直近の目標として設定できるわけで。10代のキャリアにおいて、その差はあると言わざるをえない」現実があり、日本の高校生が「将来いつか」と掲げる夢を、欧州で才能のある選手は数年後のリアルな未来として目標設定できる立場にある。

 15歳の若さで、世界的名門FCバルセロナでプロデビューを果たしたスペイン代表FWラミン・ヤマルの才能は言うまでもないが、たとえ15歳の少年であっても、実力があればトップチームのピッチに立たせる欧州の環境が後押しとなっている事実もある。

「U-19のチームに19歳以下の逸材はいない。なぜなら、すでにU-23でプレーしているから。そして、U-23のチームに23歳以下の逸材はいない。なぜなら、トップチームでプレーしているから。結果を出せなければ、そのカテゴリーで止まるし、結果を出せれば、年齢に関係なくどんどん昇格していく。そのあたりのエレベーター制度は非常に洗練されている」


大津祐樹氏が日本と欧州の違いについて話してくれた【写真:Football Assist】

■欧州では「意識的に1つ上のカテゴリーでプレーさせるよう取り組んでいる」

 欧州では日本よりもアンダー世代が細かくカテゴライズされていることは知られているが、「意識的に1つ上のカテゴリーでプレーさせるよう取り組んでいる」と、自分の実力以上のカテゴリーに放り込まれることで、早いタイミングで若手にチャンスが舞い込む文化は強く根付いている。

 しかし、ポジティブなことばかりではない。「あまりに早すぎる段階で見切り、遅咲きの逸材を見落とす傾向はあると思う。若い頃から順調に伸びてプロになるのはほんの一握り。スポットライトが当たらないだけで、その何百倍もの人数の若手は成長し切れずに見限られる」と、欧州の育成制度における難点も挙げ、「なので、日本の育成制度が決して間違っているとも思わない」と、むやみな比較に釘を刺した。

 日本には大学サッカーがあり、その4年間で花開き、プロで活躍する事例も増えている。世界的にも特殊な制度と言えるだろう。「日本は才能の取りこぼしが少ない土壌とも言えるかもしれない」と考察するなか、その大学サッカーにおける最大の功績と言えるのが、いまやプレミアリーグ屈指のウインガーにまで飛躍したブライトンMF三笘薫だろう。川崎フロンターレでプロデビューし、欧州へ渡ってすぐさま活躍。プレミアの舞台でも主力の座を勝ち取った。大学を卒業してから、たった3年間での出来事だ。

 それでも、「もし三笘くんが高校生の頃からどこかの欧州クラブのアカデミーに入っていたら、今頃はレアルやバルセロナでプレーしていたかもしれない」と可能性にも触れつつ、「答えはない。個人の相性もあるし、どちらの育成制度にも良し悪しはある。欧州になくて日本にはある育成制度があって、その逆もまた然り」と、日本が無理に欧州化する必要性はなく、「日本は日本のやり方でレベルを高めていけるなら、それが一番いい」と、日本サッカーの未来を信じていた。(城福達也 / Tatsuya Jofuku)

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