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突然変わった進路…弟は「嫌と思うかな」 兄の告白に「いいね」の返事、二人三脚で掴んだ選手権

FOOTBALL ZONE / 2024年11月30日 7時40分

■愛工大名電高校の攻守の要、蒲地ツインズ陽汰&壮汰の歩み

 5年ぶり2度目の高校サッカー選手権出場を果たした愛工大名電(愛知)には、攻守の要となっているツインズがいる。

 兄・蒲地陽汰は冷静沈着なCB(センターバック)で球際の強さとボール奪取能力が高く、ディフェンスリーダーとしてだけではなく、キャプテンとしてチームを牽引する。弟・壮汰はドリブルを武器として、左サイドから積極果敢に仕掛けてチャンスを作り出す攻撃の要だ。

「ずっと一緒にやってきたので、お互いのことはよく認識しています。性格は真逆で壮汰がポジティブな面もありますし、自由にやっているぶん、僕も壮汰が羽目を外さないように見ているのも僕が客観的な視野を持つのにプラスになっています」

 明るくて活発な壮汰に、物事を俯瞰で見て一歩引くタイプの陽汰。性格は違えど、お互いの良さを理解しているからこそ、ピッチ内外でチームにポジティブな行動を取ることができている。実は彼らは、高校は別々でプレーする予定だった。弟の壮汰はこう振り返る。

「僕らは双子なので、負担を考えると県外ではなくて、県内の選択肢で迷っていました。中には特待生としての誘いもあったのですが、名電は特待こそないけど、練習参加をした時にチームの雰囲気が良くて、上下関係はないけど、練習はすごくシビアでサッカーに真剣に打ち込んでいるし、全国を本気で目指している。ここならサッカーを一生懸命かつ楽しくできるなと思って決めました。決めた頃には陽汰は別の高校を希望していて、『高校で対戦するのが楽しみだな』と思っていました」

 だが、運命なのか陽汰が希望していた高校の制度が変わったことで、陽汰の高校選びは振り出して戻ってしまった。

「どうしようと思ったのですが、壮汰が名電に行くことは知っていたので練習参加をしてみたら、練習の雰囲気が良かったし、なにより宮口典久監督が自分のコーチングを褒めてくれたんです。それはなかなか認められてこなかったので、そこを評価してもらえたのが嬉しくて、名電に行くことを決めました」

 自身の決意を壮汰に伝えると、弟は「あ、来るの? いいね」と笑顔で返してくれたと言う。

「僕の中では勝手に『2人で名電を強くしたい』と思っていたのですが、実際に何て反応をするのかな、もしかしたら嫌と思うのかなとちょっと気にしていたんです。でも、壮汰らしいあっけらかんとした反応をしてくれたので嬉しかったですし、一緒にやりたいという思いが強くなりました」

 まさに2人の性格が如実に出たエピソードだった。ポジティブシンキングな壮汰は、「別々の高校になってもオフとかになれば一緒にボールは蹴るだろうし、1対1とかもこれまでどおりすると思っていたので、日常は変わらないと思っていました。来ると聞いた時は『また一緒か』と思いましたが、やっぱり一緒にプレーできて嬉しいなとも思いました」とらしい反応で振り返った。

■「全国大会は2人で楽しみつつ、大学ではバチバチにやり合いたい」

 1年時は一緒にプレーできない時期が長かった。入学時から出番を掴んだ陽汰に対し、壮汰は下のカテゴリーでプレー。だが、「壮汰が1年生のチームで活躍した話を聞くと刺激になった」(陽汰)、「常に『俺も頑張らないと』と思えた。持ち味であるドリブルを伸ばしたかったので、ボールタッチの自主トレはあえて陽汰がいない時を見計らってやっていました。ガムシャラになって上を目指せました」(壮汰)と絆は一切変わらなかった。

 そして2年の途中から一緒にピッチに立つようになると、3年では攻守において欠かせない存在となっていった。迎えた2人にとって最後の選手権。県予選前に陽汰が負傷し、1か月離脱するアクシデントがあったが、壮汰を中心に3回戦の山場である強豪・刈谷との一戦を2-2のPK戦の末に勝利して準々決勝まで勝ち上がると、日本福祉大学付属との一戦で2人がピッチに揃った。

「陽汰が怪我でいない時期は不安があったのですが、復帰したら安定感が生まれ、本当に頼れる存在でした」と壮汰が振り返ったように、守備に安定感を取り戻したチームは日本福祉大付属を延長戦の末に1-0で下すと、準決勝の大一番・東邦との試合では3-0の完封勝利。決勝も大同大大同を相手に壮汰のゴールなどで3-2と振り切ってついに悲願の選手権出場を手にした。

「大学は別々になるのですが、同じ東海学生サッカーリーグの1部なのでちょっと楽しみです。だからこそ、選手権は高校で一緒にピッチに立つ舞台なので思い切り楽しみたいです」(壮汰)

「全国大会が初めてなので2人で楽しみつつ、大学ではバチバチにやり合いたいです」(陽汰)

 待ちに待った夢の舞台へ。愛工大名電の攻守の要として全力でプレーをやり切ることが、常に二人三脚で歩んできた2人のこれからの大きな門出になることを彼らは知っている。(FOOTBALL ZONE編集部)

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