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高1エースに「大器の予感」 “ぶかぶかユニ”10番がプロへ…6年後に覚醒した逸材の今

FOOTBALL ZONE / 2024年11月30日 9時30分

■東京V入り内定のMF熊取谷一星、明大でレベルアップし飛躍

 明治大学からJ1東京ヴェルディに来季加入が内定しているMF熊取谷一星を初めて見たのは、浜松開誠館高校1年生の時だった。ぶかぶかのユニフォームだが、背番号は10。2列目の位置から確かなボールキープ力と相手の逆を取るドリブルでラインブレイクしていく姿は、大器の予感がした。

 あれから6年、熊取谷は2年連続得点王・アシスト王となった中村草太(サンフレッチェ広島内定)とともに大学サッカー界最強の2トップとして大学サッカー界を席巻している。

「大学に入ってプレーのバリエーションは増えたと思います。ドリブルで言うと、縦もあるし中もある。あとはパスもあるし、シンプルに叩いて受け直すことでより自分が生きる。アタッキングサードでの選択肢はかなり増えたと思います」

 この成長こそが、熊取谷がプロでも十分通用する要素でもある。以前はカットインにこだわりを持ちすぎて、相手にコースを塞がれているにもかかわらず強引に突破を試みようとしてしまうことがあった。だが相手のレベルが上がれば上がるほど、それは通用しなくなり、やがて大きな壁となっていく。そこにいち早く気づいた彼は、アタッキングエリアにいかにスピードアップした状態で入り込めるかを考えるようになった。

「味方を使ってもう一度自分が活きるということを今年に入って特に意識するようになりました。今、2トップで中村と組んでいるので、彼はきちんと状況判断をしたうえでポジショニングを取るので、そこから逆算して自分の立ち位置を取ったり、彼にラストパスを送るだけだったりするのではなく、彼に預ければ必ずその先で自分にパスが返ってくるので、それを受けて仕掛けられるように走り込む場所を瞬時に探して飛び込んでいかないといけない。仮にそこでパスが自分に来なくても、その動きが囮となって周りがフリーになるし、何より中村の負担も減る。そこは意識しています」

 自らが賢く動き、賢く判断をすることで周りが生きる。彼の技術とその思考があったからこそ、前述した中村との2トップの破壊力は凄まじくなったと言える。

 改めて彼らが凄いのは2人とも最前線に張り出してポストプレーをするタイプではなく、動きながらボールを受けて、ゲームメイクもリズムチェンジも突破もフィニッシュも出来るということにある。お互いの立ち位置と相手の陣形、そしてパスの出どころを予測してポジショニングを取り合う。その変幻自在の動きに相手DFは惑わされ、かつ最後は個の打開力でやられてしまう。

 マークを絞りづらく、予測をしてもその逆を取られてしまう。物理的なスピードと、感覚的なスピード。クオリティーを担保したままこれらを実現できる熊取谷は今、これから先の世界に向けて新たな進化を目論んでいる。

「ヴェルディではボランチ、シャドー、ウイング、ウイングバック。どこでも求められたことやるつもりでいます。求められているということは信頼されている証拠だし、どこで出ても明治大でやって来たことを継続して、さらにレベルアップをさせてやっていきたいなと思います」

 東京Vの試合は毎試合欠かさずにチェックしている。見れば見るほど、浜松開誠館高、明治大と7年間を通して自分がやってきたことが生かされる場所だと感じた。

「考えてみれば、高校、大学とハードワークをすることが大前提で、そのうえで技術を発揮するチームでプレーしていて、ヴェルディもそれを大切にしているクラブ。歳を重ねるごとにハードワークの本質が整理されてきたというか、ただ闇雲に追いかけ回したり、動き回ったりするのではなく、チームとしての矢印を意識しながらチームに効果をもたらす動きを多くやらないといけない。

 コンパクトにしてから押し出していくとか、スライドをしっかりやるとか、1人1人の主観ではなく、チームのメカニズムの中からやるべきことをやる。規律の中でハードワークをすることが重要で、それだといい状態でマイボールになって技術が発揮できる。これをもっと質を高めていきたいと思います」

 今まで積み重ねてきたことをブレずに積み上げ続ける。そこに進化と成長がある。確固たる信念を持った熊取谷はこれから大学最後のインカレに臨む。中村との2トップをさらに熟成させ、チームに2連覇をもたらしてからプロの道に力強く踏み出すつもりだ。(FOOTBALL ZONE編集部)

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