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J大物スター訴え「プロで成功したいなら」 身だしなみ違和感…目に付いた日本のアマ意識【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年11月30日 8時30分

■鹿島にやって来た神様ジーコ、Jリーグ黎明期の光景に提言

 プロとは何か。プロのクラブや選手とはどうあるべきか。

 ピッチのなかはもちろん、ピッチ外での取り組みや振る舞いの重要性を強く説いていたのが、1991年5月に鹿島アントラーズの母体である住友金属工業蹴球団と契約したジーコだった。長年、プロの世界を生きてきたスーパースターの哲学やスピリットがチームの隅々にまで浸透し、鹿島アントラーズはプロクラブに相応しい嗜(たしな)みを身に着けていく。

 些細なことかもしれないが、例えば、こんなふうに——。

 今でこそJリーグの多くのクラブにオフィシャルスーツサプライヤーが存在する。だが、Jリーグ黎明期はまだまだそのような環境ではなかった。アウェーゲームに向う際はそれぞれが思い思いの恰好で、飛行機や新幹線に乗り込む。公共交通機関を使わず、チームバスのみでの近距離移動ともなれば「ジャージ」が定番だったように記憶している(今もそこは変わらないかもしれないが)。

“オリジナル10(Jリーグ初年度参入10チーム)”の1つである鹿島もまた例外ではなかった。日本サッカーリーグに属していた住友金属工業蹴球団時代はいうまでもなく、Jリーグ誕生後もしばらくは選手たちがオフィシャルスーツに身を包み、飛行機や新幹線に乗って移動するといった光景は見られなかった。

 アマチュアからプロへ、日本サッカー界が大きく転換していく真っ只中にいた鹿島の鈴木満フットボールアドバイザー(FA)は、当時をこう振り返る。

「今現在はクラブサプライヤーであるニューヨーカー(64年に日本で生まれたトラディショナルブランドの草分け)からオフィシャルスーツ一式を提供してもらっていますが、昔はスーツもシャツもネクタイも選手任せで、バラバラでした。そういう状況を目にしたジーコから、チームの一体感を作るために、せめて同じ系統の色のスーツやシャツ、ネクタイにしようとか、夏はスーツだと暑いだろうから、同じようなポロシャツにしようとか、移動の際の服装について、いろいろ提案されたことを覚えています」

 プロの選手とは、好むとも好まざるとも周りから見られる存在だ。常に高価なブランド品で身を固める必要はないが、いつ、どこで、誰に見られているか、分からない。だからこそ、チームで動くオフィシャルな空間では「身だしなみに多少なりとも気を使うべきだろう」というのがジーコの持論だった。

 見た目を整えるだけではない。中身の研鑽も強く求めていた。

「プロの選手にとって大事なことは何かという話になった時、ジーコは“自己管理能力だ”と言っていました。プロの選手として成功したいと思うなら、何をして、何をしたらいけないのか、そこをわきまえて、自分自身をしっかり管理できないといけない。ピッチ内はもちろん、こうしたピッチ外での振る舞いや取り組みが本当に大事なんだと、ジーコはよく言っていました」(鈴木FA)

 球際や切り替え、運動量といったプレーの連続性や強度など、フィジカル面での要求が高まる現代サッカーにおいて、自己管理能力はその重要度を増している。健全なる肉体は健全なる精神によって成り立つ。そう言ってもいいかもしれない。

 かつてジーコが、このようなことを語っていたのを思い出す。

「ブラジルには、私より才能のある選手、うまい選手がたくさんいました。でも、なかにはサッカー以外のことに心を奪われ、輝かしいキャリアを残したとは言い難い選手がいます。私は、そういった選手を若い頃から見てきました。プロとして成功したいなら、どうすべきか。多くの教訓を私に与えてくれたと感じています」

 Jリーグ創設から32年、ここまで通算20冠を積み上げてきた鹿島の何よりの幸せは、プロフェッショナリズムの鑑であったジーコとの出会いにほかならないだろう。(小室 功 / Isao Komuro)

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