試合増・負担増も…「ボールは1つ」即決定機の強豪対決 「パズル」の先にある攻防【コラム】ƒ
FOOTBALL ZONE / 2024年12月1日 9時30分
■バイエルン対PSG、個の能力と優位性に依拠した対決が見せたもの
なるほど、こうなるのかと思った。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)第5節、バイエルン・ミュンヘン対パリ・サンジェルマン(PSG)の強豪対決である。
パリSGのルイス・エンリケ監督は試合前にこう話していたそうだ。
「互いによく似ている。しかしボールは1つだけだ」
バイエルンとPSGは、それぞれのリーグで長く1強の立場にいる。バイエルンは昨季レバークーゼンに後れを取ったが、財政規模と戦力の優位は変わらず、今季は首位を走っている。ボールを保持して攻め、敵陣から激しくプレスをかけていく戦術はどちらも同じ。
ルイス・エンリケ監督の「ボールは1つだけ」は、ボールを持てないほうは苦労するだろうという意味だと思うが、前半はどちらもボールを持ち、持てない試合になっていた。どちらも簡単にボールを失わない。しかし、簡単には前進できない。互いにオールコートのマンツーマンを基調に守備を行っていたからだ。
PSGはマークする相手もほぼ決まっていた。4-2-3-1システムのバイエルンに対し、2人のセンターバック(CB)には、センターフォワード(CF)のデンベレと左ウイングのバルコラがプレス。サイドバック(SB)はザイール=エメリとヌーノ・メンデスがつく。ザイール=エメリは右ウイング、ヌーノ・メンデスは左SBだが、そんなことは関係ない。大雑把に言えば、バイエルンのフィールドプレーヤー10人を10人がマンマークするという方針だった。
従って各所で局地戦になっていた。ビルドアップの可変でマークをずらすことはできない。一方で、1対1を制して、1つのボールを確保できれば即決定機につなげられる。どちらもディフェンスラインは高く、基本的に同数守備になっているからだ。ボールを得た側が前線のアタッカーにつなげば、1人外すだけでシュートを打てる、ラストパスを出せる状況。リスクマネジメントに関しては、どちらもDFの個の強さ以外の補償をしていない。
個の能力と優位性に依拠した、ドイツとフランスの1強同士らしい強気の戦術である。
バイエルンは前半36分にCKからキム・ミンジェがヘディングで押し込んで先制。しかし、試合展開はほぼ互角。どちらも一瞬でチャンスを作れるし、ピンチにもなり得る緊迫した攻防が続いていた。後半11分にデンベレが2枚目のイエローで退場になり、息詰まる攻防はここまで。バイエルンが主導権を握って1-0のまま試合を終えたが、あのまま続いていたらどうなっていたのだろうと思う。
ビルドアップvsプレスにおける、互いに可変しながら優位性を持とうとする「パズル」の先にある試合だった。今回から導入されているリーグフェーズ方式は試合増、負担増という問題点はあるのだが、強豪同士による1つ先の試合をこの段階で見られる魅力も確かにあった。(西部謙司 / Kenji Nishibe)
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