VARで覆った劇的ドラマ「並のチームなら意気消沈」 敗戦ムードから一転…起死回生の凄み【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年12月2日 18時10分
■【カメラマンの目】神戸は柏戦で劇的同点弾を決めて優勝に王手
「負けるなー、負けるな!」
1対1の勝負の場面で、ゴール裏の柏レイソルサポーターから、選手を奮い立たせる強烈な声援がピッチに向けて飛ぶ。J1リーグ第37節、柏が首位を走るヴィッセル神戸をホームに迎えた一戦。リーグ戦も残すところ2試合となり、来シーズンもJ1の舞台でプレーするためには、なんとしてでも多くの勝ち点を獲得したい柏は、サポーターの鬼気迫る「負けるな」の言葉に背中を押されて、多くの局面の勝負において神戸に勝利していった。
柏は神戸のお株を奪うハードディフェンスで相手の攻撃を手詰まりにし、ボールを奪うとカウンター攻撃を仕掛けて得点を狙っていく。なにより、前半5分に木下康介がゴールを挙げたことで、相手の神戸が攻撃への意識を加速させ、前掛かりとなったため、この堅守速攻の戦い方がより功を奏することになる。
柏の選手たちの奮闘は、サポーターたちの絶大な声援が助力となって生み出されたものだ。もちろん神戸側もスタンドから試合を見守る12番目の仲間たちの声援が、ピッチに立つ選手への力になっていた。だが、柏はホームスタジアムということで、より多くのサポーターがスタンドを埋め、その声援による効果は絶大で、首位の神戸を押し込んでいった。
対する柏の激しいマークに遭っていた神戸は、中盤の扇原貴宏らがボールを散らして突破口を開こうとするがリズムを作れない。なぜなら、神戸の選手たちは後方から供給されるパスに対して、柏の激しいマークを受けていたため、ゴールを背にしてプレーする場面が多く、素早い展開に持ち込めなかったからだ。ボールキープからパス、ドリブルのどちらを選択するにしても、マークを交わすためにボールタッチの回数が増え、攻撃にスピードを欠くことになる。
攻撃の起点である大迫勇也もタイトなマークに苦しみ、なかなかゴールに向かってプレーすることができなかった。それでも、チーム全体でなんとか前線へとボールを運んでいたが、時間が経過しても柏の厳しいマークは衰えることなく、そのパワープレーの前に神戸は沈黙する。後半に入ると、いつものダイナミックさと鋭い切れ味を併せ持った、神戸のスピードサッカーは完全に姿を消したのだった。
大迫勇也がまさかのPK失敗【写真:徳原隆元】
■底力見せ勝ち点1をもぎ取った神戸
試合終盤までの流れを考えれば、ゲームを支配したのは明らかにホームチームだった。ただ、後半に入りマテウス・サヴィオを起点としたカウンターアタックから神戸ゴールへと迫る場面などを作ったが、追加点となるトドメを刺せなかったことが、最終的な結果に影響を及ぼすことになる。
最終盤は目まぐるしい展開となり、神戸は最後の最後で武藤嘉紀が同点弾を決めて、貴重な勝ち点1をゲットしたのだった。終始、劣勢の展開を突きつけられながらも、神戸の精神面の充実さを見せつけたのは、アディショナルタイム(AT)が5分に達して手にしたPKを大迫が失敗してからだ。
絶好の同点のチャンスが消え失せたことで、並のチームだったら意気消沈してしまうところだろうが、神戸はここからPK失敗を原動力にして、怒涛の攻めを見せ、そして同点弾を叩き込んだ。
ただ、神戸の近々の試合と比較すると、この対柏戦の内容は明らかに相手の術中に嵌った感は否めない。第36節の対東京ヴェルディ戦は1点リードからATに同点とされたものの、試合内容では相手を圧倒していた。先週の天皇杯決勝でも1-0の僅差とはいえ、G大阪に付け入る隙を与えず、危なげない試合内容を見せている。
それでも、この柏戦は内容的には不満が残るが、まさにもぎ取った勝ち点1は、神戸が秘めたチームの底力を改めて実感させられた。その勝利への執着心は驚くばかりだ。最終節を前にして優勝のチャンスがあるのは、神戸に加えてサンフレッチェ広島とFC町田ゼルビアの3チームに絞られた。果たしてどのチームが栄光のシャーレを手にするのか。
VARの判定によってゴールが決まると武藤は感情を爆発させたが、試合後のカメラのファインダー越しに見る、サポーターに手を振る彼はいたって冷静だった。ひと通りの興奮が冷めたこともあるが、その表情は勝敗の結果を冷静に受け止め、次に控える大一番の試合を見据えているようだった。
こうした落ち着きは武藤の精神面の充実を感じさせ、それが今シーズンの好プレーに繋がっていると考えられる。神戸が2年連続のリーグチャンピオンになるためには、この背番号11の活躍が不可欠であることは間違いない。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
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