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月給20万円→2年で年俸1000万円…東南アジアで「給料が倍に」 “夢掴んだ”元Jリーガーの今【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月5日 7時10分

■神戸などでプレーした松村亮、7年プレーの東南アジア“お金事情”を告白

 日本代表が訪れ、サッカー熱の高さに注目が集まったインドネシア。この東南アジアの国では多くの日本人選手がプレーしており、かつてヴィッセル神戸などで活躍したMF松村亮もその1人だ。ペルシジャ・ジャカルタに加入して2年目。タイでも4年間プレーした経験を持つ松村に、東南アジアサッカーの移籍事情を聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の2回目)

   ◇   ◇   ◇

「まずは僕がどうしてインドネシアに来たか、なんですよね」

 インドネシアの首都ジャカルタ南部にあるカフェに姿を見せた松村はこう語り出した。タイでの3年間、4クラブでプレーしていた松村は2022年にインドネシア1部のペルシス・ソロへの期限付き移籍を決意した。タイではラヨーンFCから始まり、チェンマイFC、BGパトゥム・ユナイテッド、ポリス・テロでプレー。だが、その当時、松村の中で“ある疑念”が大きくなっていた。

「タイではオーナーが権力を持っていて、上で試合を見ながら選手交代を促すということもチームではありました。当時、外国人枠が4人で、僕とブラジル人だったんですけど、僕以外みんな怪我していたんです。チームにはタイ代表の選手が固まっていたから、もう『代表(メンバー)で行け』という方針になった。結構振り回されるような形で『面白くないな……』と思っていた時に、インドネシアのソロから『もっと給料を出せる』というオファーが来たんです」

 ソロはインドネシアでも地方のクラブだったが、タイで名門とされるパトゥムなどよりも待遇は良かった。松村自身「なんでこんな田舎のチームで給料上がるんや? もっと上のチームになるとすごい金額もらえるんちゃうかと思った」と“インドネシアマネー”に驚きを隠せなかった。

 ただ、地方クラブでの環境は過酷だったため、ステップアップを目指した。移籍1年目で28試合に出場して、11ゴール6アシストを記録。「絶対に1年で上のチームにいくぞ」との決意は結果になって表れた。

 すると、ある日、松村の携帯電話が鳴った。相手はドイツ1部ボルシア・ドルトムントやハンブルガーSVなどを率いた経験もあるドイツ人のトーマス・ドル監督だった。この時、プルシジャ・ジャカルタを率いており、直接、松村へオファーを出すために電話をかけてきたのだった。

「対戦した時にプレーを見てくれて『欲しい』と電話が来ました。ここから抜け出せる、という安心がありました」

 提示されたのは3年契約での完全移籍。2019年に東南アジアに渡ってから、初めて勝ち取った複数年契約だった。当時、保有権はまだタイのパトゥムが持っていた。契約解除金を支払ってまで獲得したのは東南アジアでは“超異例”。住まいは高級住宅街の一角にある温水プールやテニスコートまで付いたマンションで、運転手付きの車もあるなど生活レベルは各段と上がった。


インドネシアの熱狂的なサポーター【写真:ロイター】

■「東南アジアは給料は高いけど、クビになった時のリスクも高い」

 東南アジアでの生活は6年目がもうすぐ終わろうとしている。2018年にJ3のAC長野パルセイロを契約満了で退団。2019年から飛び込んだのが、当時タイリーグ2部のラヨーンFCだった。

「ツテもなくて代理人でもない現地のコーディネーターみたいな人に頼んで、トライアウトみたいな形で入りました。J3時代の給料より落ちて、月20万円ぐらい。サッカーを辞めようと思ったけど、まだ24歳だったので、とにかくサッカーしながら海外に住めたら経験になると思ったんです。ただ、やっぱり試合していて楽しかったですね」

 1年目でリーグ戦32試合に出場して10得点をマーク。2部だったチームを1部に昇格させたものの、突然、オーナーから呼び出されて告げられたのは“戦力外”。「ブラジル人選手が欲しいからクビで」。慌てて次のチームを探すことになった。

「その時にちょうど今のエージェントと出会いました。バンコクをベースとしている日本人で、コネクションもあって、次の(タイの)チームに入って給料が上がりました。バンコク・グラス(現在のパトゥム・ユナイテッド)では、また給料が倍ぐらいに上がった。年俸1000万円ぐらい。当時の自分としては『ここぐらいが限界やな。よう頑張った』と思ったけど、インドネシアでまた上がったのがビックリでしたね」

 ただ“インドネシア・ドリーム”も安定しないところもある。2022年に国内リーグで起こった「カンジュルハン・スタジアムの悲劇」。リーグ戦後にサポーターが起こした暴動により、130人以上の死者、500人以上の負傷者が出るという大事件が起きた。

「事件の影響でスポンサーが下りたりして、クラブが経営難になった。去年は3か月、給料未払いとかもありました。監督も未払いで辞めると言ったり、今年はどうなるんやろ、と思っていたら新しいスポンサーが入ってきて、急に解消された」

 今は複数年契約中だが、単年契約の選手も多く、基本的には1年1年が勝負になるという。「東南アジアは給料は高いけど、クビになった時のリスクも高い。(チームの)絶対的な存在じゃないと日本人は最初に切られます。練習も真面目で、途中出場でもちゃんとプレーする、そういう国民性を利用されることもある」。だからこそ松村は“外国人”としてのメンタルを身につけ、周囲に要求し、プレーの質を高めて、途切れず契約を掴み取ってきた。

 日本とは全く違う東南アジアならではのサバイバルの環境。昨季は10ゴール10アシスト、今季もここまで12試合で3ゴール2アシストと結果を残している。ジャカルタの街中にはクラブの顔として貼り出された松村の姿が多く見られ、異国の地でその存在が確実に認められていることが窺い知れた。

[プロフィール]
(まつむら・りょう)/1994年6月15日生まれ、京都府宇治市出身。ヴィッセル神戸のアカデミー出身で、プリンスリーグで大活躍し、2013年にトップ昇格。翌14年には現役引退した吉田孝行氏の背番号「17」を受け継いだ。栃木SC、徳島ヴォルティス、AC長野パルセイロと渡り歩いて、2019年にタイ2部ラヨーンFCへ加入。同チェンマイFC、同1部BGパトゥム・ユナイテッド、ポリス・テロでプレーして2022年はインドネシア1部ペルシス・ソロ。翌年に現在のプルシジャ・ジャカルタへ東南アジアでは“超異例”となる移籍金が発生した完全移籍を遂げた。(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

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