1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. サッカー

強烈な“重戦車プレー”と裏腹な素顔 サポーター沸かせた肉弾戦…岡山をJ1に導いた優しき助っ人【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月12日 20時10分

■【カメラマンの目】初のJ1昇格を掴んだ昇格プレーオフで効果的だった木山監督のルカオ投入

 後半27分、ルカオが放った強烈なシュートがゴールポストを直撃する。このプレーにスタンドを埋めたファジアーノ岡山サポーターから歓声が上がった。ここでルカオは12番目の仲間たちに向かって、手を振るジェスチャーでさらなる声援での後押しを求めた。

 岡山は来シーズンのJ1参入を賭けた最終決戦を、ホームスタジアムという最高の舞台で迎えることができた。アウェーのベガルタ仙台サポーターもチームの昇格を願い、スタンドから選手たちの背中を押していたが、ホームということで数で勝る岡山サポーターが発する熱量は凄まじく、選手たちに勇気を与え続けた。

 試合は序盤から高い守備力が機能した岡山のペースで進んだ。その守備で目を引いたのは、仙台の前線の選手であるエロンと中島元彦を激しいマークで動きを封じた後方に位置する選手たちの力強いプレーだった。そこに、前線からの積極的な守備も加わり、岡山は守りをベースとしてリズムを作っていった。

 前半20分に末吉塁のゴールで先制すると、岡山は試合の主導権を完全に握った。後半に突入すると、その勢いをさらに加速させた。その立役者となったのが、後半15分からピッチにたったルカオだった。

 このブラジル人フォワードは身長191センチの体格から繰り出す、強靭なフィジカルプレーを武器に、仙台守備陣をパワーでねじ伏せて前線へと進出して行った。ピッチで躍動するルカオのプレーに、スタンドの岡山サポーターは何度も沸き上がった。

 見逃せないのが木山隆之監督の采配だ。高い守備力を前面に出してゲームを作っていた岡山だが、さすがに時間の経過とともに体力は消耗する。守備力の陰りを補うためにルカオが投入された。

 ルカオがピッチに立ったことで、岡山のスタイルは、前線からの守備という試合開始からのゲームプランから、彼の突破力を活かして攻撃的に勝負する展開へと変わっていく。チームコンセプトの軸足を守備から、仙台の運動量も落ちてくるところを鋭く突く攻撃に変化させ、ゲームの主導権を握り続けることに成功した。まさに采配の妙だった。

■写真を撮りながら交わした会話の記憶

 ルカオは指揮官の期待に応えるように、相手守備陣とのパワー合戦を制して、チームの2点目をアシストした。その後も鋭い突破からチャンスを何度も演出し、結果、岡山は2-0で勝利してJ1初昇格を決めたのだった。

 試合後、勝利に貢献したルカオに声をかけて、広角レンズを装着したカメラを向けると、ファインダー越しに精悍な表情を作ってくれた。

 こうしてルカオに視線を向けてもらった写真を撮ったのは2度目のことだった。1度目は彼が2020年に所属していたツエーゲン金沢のシーズン開幕前のキャンプを取材した時だった。練習が終わり、写真を撮らせてもらおうとルカオに声をかけると快く応じてくれたことを覚えている。

 写真を撮りながら交わした会話は、彼の母国であるブラジルのことだった。私がかつて生活をしていたサンパウロ市の場所を言うと、ルカオはその地区に友人が住んでいると教えてくれた。南米最大の都市であるサンパウロ市のメインストリートであるパウリスタ通りのすぐ近く。テレビ局やショッピングセンターがあるよね、と盛り上がった。このときのルカオの優しい口調に、普段は穏やかな性格の選手だという印象を持った。

 だが、そんなピッチの外の印象とは違い、J1昇格を賭けた決戦の舞台に立ったルカオは、ひたすらエネルギッシュだった。重戦車のごとく相手をなぎ倒し、何度も岡山サポーターを興奮させた。

 J1初参入となる岡山にとって、来シーズンはチャレンジャーの立場となり、試合では劣勢の展開が増えることが予想される。ルカオの今季の記録を見ると、大活躍をしたとは言い切れない。だが、来シーズンも彼が岡山に所属し、この日のような局面を打開するフィジカルプレーを見せられれば、J1の舞台でも貴重な武器になることは間違いない。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください