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日本人が史上初の英1部で得点王へ 28歳FWに膨らむ期待…感じた手応え「劣っていない」【現地発コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月14日 19時20分

■第9節チェルシー・ウィメン戦で今季5点目を記録

 イングランドのトップリーグで、得点王争いを演じる日本人ストライカーを見てみたい。この願いは、男女とも“和製フットボーラー”の輸入が増えている近年にも叶えられていない。

 活躍したストライカーとしては、レスター時代の岡崎慎司がいる。ただし、得点数だけに目を向ければ、「ミラクル・レスター」の主力でさえ、奇跡のプレミアリーグ優勝を成し遂げた2015-16シーズンのリーグ戦得点数は「5」に留まっていた。 

 そこで期待の清家貴子である。

 ブライトン・ウィメン移籍1年目の28歳は、日本女子代表“MF”。しかし、持ち前の得点能力は、昨季WEリーグ得点王(20ゴール)という個人タイトルでも実証されている。「点取り屋」とも呼びたくなるゴール前での姿は、初挑戦中のウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)でも見られるのだ。

 12月8日の第9節チェルシー・ウィメン戦、ブライトンは、リーグ6連覇に向けて全勝スタート中の格上に敵地で敗れた(2-4)。だが個人としては、リーグ得点王ランク3位タイの今季5ゴール目を記録し、2度目のハットトリック達成もあり得た清家の86分間を目の当たりにして、さらに期待感を強めることになった。

 ゴール左上隅に吸い込まれるかに思われた、“ザ・CF”風のダイビングヘッドは前半37分。自軍が、後方ビルドアップ失敗で先制を許した2分後のことだった。抜群の反応を見せた相手GKハナ・ハンプトンに即座の同点弾をセーブされた清家は、地面を叩いて悔しがった。

 後半5分には、直接的に借りを返すチャンスを自ら作り出した。清家は、ハンプトンからボランチへのフィードを読んでインターセプト。惜しくも、試合前から雨が降り続くピッチで軸足を滑らせ、バランスを崩しながらの右足ミドルは相手GKが伸ばした足に弾かれた。

 同39分には、裏に抜けて再び1対1に持ち込んでいる。股下を打ち抜こうと狙ったと思われるが、またしても軍配はハンプトンに上がり、清家は両手で顔を覆いながら天を仰いだ。


インサイドハーフやウイングバックとしても役割を全う【写真:ロイター】

■攻撃を牽引する存在としての頼もしさ

 もちろん、試合後の本人は「ほんとに悔しい」と振り返った。

「思っていたよりチャンスが作れて、チームとしていい形が多かったなかで、決めるべきところを決められなかった」

 そう反省する清家だが、2-0とリードされていた前半43分のチーム1点目では、ボックス内に走り込んで折り返し、アシストのアシストをこなしてもいる。再び2点差をつけられていた後半26分には、自らネットを揺らした。

 清家は、相手GKがバックパスの処理を誤った結果のこぼれ球を拾うと、ゴール中央上段へと強烈な一撃。直後、ゴール裏のアウェーサポーターたちと周囲の味方に対し、「行ける、行ける。ついて来い!」とでも言うかのように、右手を挙げて手招きする仕草をしながらリスタートに向かう姿は、攻撃をリードする存在的な頼もしさを感じさせもした。

 いわゆるCFとして起用されるわけではない。この試合も、3トップ右サイドでの先発。GK以外はどこでもこなせるようなサッカーセンスの持ち主は、インサイドハーフやウイングバックを任されたりもする。

 それでもなお、生まれ持ったゴールへの嗅覚に導かれるかのごとく、決定機に顔を出してみせるのが清家だ。

 ともすると、開幕節エバートン戦でのハットトリック・デビュー以降、静かだったように思われるかもしれない。だが実際には、全12チーム中9位に終わった昨季から主力9名を入れ替え、今季第9節を終えて5位につけているブライトンにとって、新たな即戦力であり続けている。

 例えば、第7節アーセナル戦。結果的には2ポイント差で3位の強豪に5失点で敗れたアウェーゲームだが、内容的には3点差だった時点で1点差に詰め寄る可能性があった。相手GKのビッグセーブと、直撃したバーに阻まれシュートを放ったブライトン最大の脅威は清家だった。

 ほぼ2か月ぶりのゴールを決めたのは、翌節ウェストハム戦。右インサイドハーフで先発した清家は、1アシストも記録して勝利(3-2)に貢献している。

■目標の2桁得点へ「もっと突き詰めないといけない」

 移籍決定当初、イングランドのメディアでも「多機能」と評された当人に、ポジションのこだわりを尋ねると、「やっぱり最前列でプレーしたい」との答えが返ってきた。

「そのなかで得点、アシストっていう結果の部分で見せるのが自分の一番の特徴だと思うので。そこは、もっと突き詰めないといけない。その一方で、このリーグでずっと覇者でいるチェルシーに対して、思っていたよりできた部分も多かったので、そこは自信にしたいと思いますけど、やっぱり結果がすべての世界。まだまだ足りないなっていう部分もあります」

 その「結果」という意味で、清家の得点能力発揮はチームにとっても必須となる。昨季リーグ戦でチーム得点数の半分に当たる13得点をもたらした、ノルウェー女子代表エリザベス・テルランド(現マンチェスター・ユナイテッド・ウィメン)の穴を埋めなければならない。

 先立つプロ経験が、三菱重工浦和レッズレディース時代に限られる日本人選手像からすれば重荷だ。しかし、巧さ、速さ、そして強さが、イングランドのピッチでも見て取れる実像からすれば、決して重すぎることはない。

「日本にいる時はずっと固定式(のスパイク)で、取替式を使うことなんてまずなかった。こっちに来たら、もう取替式じゃないとやっていけないピッチですけど、もう慣れました。この(ボールが)より走るピッチで、スピード感のあるサッカーにも慣れてきましたし、楽しくやれているとは思います。

 正直、来るまでは全然このリーグのことを知らなくて、本当に速くて、強い相手が揃っているんだろうなっていう風に思っていたんですけど、別に個の部分でそれほど劣っているわけではないと感じて、もっと自信を持ってプレーしていけば良いプレーができるんじゃないかなと感じています」

 本人の言うとおりだ。この日のピッチで、パスを受けた際に2度、3度と背負った相手は体格で勝るミリー・ブライト。イングランド女子代表CBによるプレッシャー下でのキープは容易ではない。

 だが、それを清家が苦にしている様子はなかった。前述した試合終盤の裏抜けは、跳ねたボールをタイミングの良いジャンプでブライトに競り勝ち、頭でCFのニキータ・パリスへとつなぐや否や、快速を飛ばして相手CBを置き去りにした結果だった。

 その場面で自らのランを無にせずに出たスルーパスといい、走りながら要求した地点に届き、自身1本目のシュートだったダイビングヘッドを可能したクロスといい、チャンス供給もあるブライトンでの目標を清家はこう語る。

「個人としては2桁得点を目指していきたいですし、チームとしても、やっぱり優勝っていうのを常に目指したいと思っています。日本でも浦和にいて常に優勝争いに関わっていた。優勝争いっていうものから目を背けちゃダメだと思うので、そこは常に狙っていきたい」

 現実的には、チェルシーとマンチェスター・シティ・ウィメンのトップ2に次ぐ、3位争いが今季WSLでの限界なのだろう。だがブライトンは、右肩上がりの曲線を描き始めている。その理由の1人である日本人新戦力には、ぜひとも得点王争いに絡み続けてもらいたい。(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)

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