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久保建英のアトレティコ移籍話「聞いたことがない」 番記者が“障害”指摘「プレミアにとって手頃」【現地発コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月18日 8時30分

■久保の新天地として浮上した強豪アトレティコ、加入した場合のライバルは?

 シーズンが進むにつれてさまざまな選手の去就が話題に上がるなか、日本では現在、「アトレティコ・マドリードが久保建英の獲得を希望」というスペインメディア発のニュースが取り沙汰されている。実際にこの報道は現地でどう捉えられているのか。その疑問の前にまず、アトレティコがどんなチームなのか触れていきたい。

 アトレティコが経済面や実績面から、スペイン3強の1つであることに異論を唱えるものはいないだろう。レアル・マドリードと同じくスペインの首都マドリードをホームタウンとし、6万人以上のシーズンチケットホルダーを抱え、熱狂的なサポーターが多いことでも有名だ。

 2011-12シーズン冬からチームを率いるディエゴ・パブロ・シメオネ監督のサッカーは近年、改良を重ねてボール支配率で相手を上回ることも多いが、一貫してハードワークと堅守速攻がベースになっており、この13年間でラ・リーガとUEFAヨーロッパリーグ(EL)各2回の優勝を含む計8タイトルを獲得。さらにUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝に2回進出する偉業を成し遂げている。

 さらなる高みを目指すアトレティコは今季、ラ・リーガ最多の1億8500万ユーロ(約296億円)もの大金を費やし、フリアン・アルバレス、コナー・ギャラガー、ロビン・ル・ノルマン、アレクサンデル・セルロートなどの大型補強を敢行した。

 序盤は新戦力が上手くフィットせずに苦しんだものの、シーズン開幕から約4か月が経過した今、チームは完全に軌道に乗っている。12月17日時点で、ラ・リーガでは最少失点(レアル・ソシエダとタイの11失点)を誇り、1試合未消化ながら首位FCバルセロナに勝ち点3差の3位で、4季ぶり通算12度目の優勝も狙える位置につけている。国王杯は順当に3回戦進出。CLでは途中躓きながらも現在3連勝中で11位に浮上し、リーグフェーズ・トップ8入りが視野に入る好調ぶりだ。

 ソシエダの久保が実際にこのような強さを見せるアトレティコに加入した場合、どのポジションでプレーし、誰がライバルになるのだろうか。

 アトレティコの今季のシステムは5-3-2とダブルボランチの4-4-2がベースとなっている。序盤は昨季同様の前者で戦っていたが結果が出ず、後者に変更したことが功を奏し、現在クラブ史上2番目の最多記録となる公式戦10連勝を達成している。

 5-3-2は久保にとって、マジョルカ2季目にハビエル・アギーレ監督が採用したことで出番が激減した相性の良くないシステムと言える。一方、4-4-2の場合、久保に合うのは右サイドハーフか2トップの一角になるだろう。しかし、今のアトレティコは人材豊富で、ポジション争いは熾烈を極める。

 アントワーヌ・グリーズマン、フリアン・アルバレス、セルロート、アンヘル・コレアが各々、与えられた役割を全うして活躍している前線のポジションに割って入るのは非常に難しい。


久保建英の去就について語ったスペインメディア「VAVEL」アトレティコ番記者のダビド・アジュソ氏【写真:高橋智行】

■久保は「アトレティコに合っていない」…番記者が断言する訳

 右サイドハーフは、今季トップチームに加わったシメオネ監督の三男ジュリアーノが親譲りのハードワークを武器に頭角を現し、百戦錬磨の選手たちを抑えてレギュラーの座を手に入れつつある。ボランチでもプレーできるオールラウンダーのロベルト・デ・パウル、右サイドバックとしても起用されている爆発的なパワーを備えるマルコス・ジョレンテという経験豊富なフィジカルの強い選手たち、スペイン代表デビューを飾っている技巧派のロドリゴ・リケルメが控えている。

 選手層の厚い今のアトレティコが久保を狙っているという報道に関して、試合日にアトレティコの本拠地リヤド・エア・メトロポリターノでクラブの番記者やサポーターに確認してみた限り、誰1人としてこのニュースを知る者はいなかった。

 スペインのデジタルスポーツメディア「VAVEL」でアトレティコの番記者を務めるダビド・アジュソ氏は、「久保はスペインでよく知られている選手なので移籍の噂があれば聞こえてくるはずだけど、アトレティコが久保と契約したがっているというニュースは聞いたことがない」と信憑性に疑問を持っていた。

 仮定の話として久保がアトレティコにフィットするかを問うと、「ラ・レアルの中でもトップレベルの選手で、新たな一歩を踏み出すだけのクオリティーは備えているが、それでも彼はアトレティコに合っていない」と断言する。

 その理由として、「シメオネは何よりもフィジカル重視で、ハードワークを求める監督だ。久保にはマルティン・スビメンディのような中盤の有能な選手がいるし、昨季は守備に優れたミケル・メリーノがその点を補ってくれていたので、チームからそれをあまり求められていないのかもしれないし、その能力を持ち合わせているのか分からない。いざ求められたら十分対応できるかもしれないが、今見る限りでは難しいと思う。もちろんすべては今季の成績次第だが、彼はシメオネが求めるスタイルの選手ではないし、仮に加入したとしてもアトレティコでレギュラーにはなれないだろう」

「ここには小柄で、クオリティーが高く、ボックス内に頻繁に入る、久保とよく似た特徴を持つリケルメがいる。本来はより高い位置でプレーする選手だが、昨季はポジション争いの問題で主に左ウイングバックとして起用されていた。今季シメオネはローテーションを大いに意識しているが、彼をそのメンバーにあまり入れていない。久保も同じような状況に陥る可能性がある」とテクニックに長けた選手よりもフィジカル面に優れた選手を重用していることを示唆した。

■「6000万ユーロは…」 久保を獲得するうえでの障害とは? 

 さらに、久保を獲得するうえでの障害として、6000万ユーロ(約96億円)に設定されている契約解除金があると見ている。実際、2019年夏にジョアン・フェリックス(現チェルシー)をクラブ史上最高額の移籍金1億2720万ユーロ(約203億5200万円)で契約を結んだあと、久保の契約解除金より高値で獲得した選手は、エースストライカーとしての活躍を期待されて移籍金7500万ユーロ(約120億円)で加入したフリアン・アルバレスのみだ。

「アトレティコはさらに上を目指して、より多くの投資を行っても構わないと考えているが、6000万ユーロはスペインのクラブにとって非常に高額だ。多くの選手に大金を支払ってきたプレミアリーグにとっては手頃な金額なので、久保は数字をもっと向上させれば、プレミア行きのほうが近いのかもしれない」

 久保がアトレティコのユニフォームを着て、名将シメオネの下でプレーすることに対し、期待に胸を膨らませる人はたくさんいるはずだ。しかし現地で話を聞く限り、少なくとも現時点ではアトレティコ移籍の可能性は非常に低いと言わざるを得ないだろう。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

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