18歳とは思えぬ会話…「本当に高校生か?」 選手権終えて渡米、追いかける“2つの夢”
FOOTBALL ZONE / 2024年12月25日 8時30分
■堀越高3年生DF竹内、ボトムアップ方式の組織リーダーとして奮闘
昨年度の高校サッカー選手権でベスト4に輝いた堀越高。右サイドバックとして国立のピッチを駆け上がっていた3年生DF竹内利樹人は、左腕にキャプテンマークを巻いて、人間的に大きな成長を遂げて今年の選手権の舞台に帰ってくる。
「練習の練習をしてはダメで、試合のための練習をしないといけない。そのためには1人1人に当事者意識を持たせないとダメだと思っていて、そこは自分が変えないといけないと思います」
竹内と話をすると、「本当に高校生か?」と思うほど、しっかりと建設的な議論ができる。18歳ながらキャプテンシーというより、高いマネジメント能力を持っていると感じる。
自らを客観視するだけではなく、組織全体を見てキャプテンである自分が何をすべきかを考え、かつ考えたことをどう周りに伝えるか、周りの意見をどう聞くかまで考えて立ち振る舞っている。
「一方的に『やれよ』だと受け身になる。受け身になると、どうしても『面倒くさいな』と思うことが増えてしまう。『あれもやるの?』『これもやらないといけないの?』と愚痴が出る。結果としてどこかでキャプテンだったり、リーダーの選手だったりを上にして、選手間のトップダウンが行われてしまっている時もある。そこをどうきちんとしたボトムアップに持っていくかが重要だと思っています」
堀越といえば選手たちが主体的に考えて行動を起こし、自立した組織づくりを行うボトムアップ方式を採り入れている。選手主導で試合の戦術の構築や対策を行い、スタメンや途中交代の判断もキャプテンを主体に行っている。もちろん全体のバランスをしっかりと見て、必要なアドバイスや調整を佐藤実監督がやっているからこそのボトムアップ方式だが、選手主導でやる際の選手間での温度差はどうしても生じてしまう。そこから目を背けないのが、実に竹内らしい。
組織において、個々に当事者意識を持たせるということは簡単ではない。どうしても他責にしたり、自己中心的になったりする選手が出てくるなかで、彼はこの命題に真っ向から向き合っている。
■メンバーとの距離感を意識、分断を生まない“つなぎ役”を率先
「例えば試合前のミーティングだったり、メンバー決めだったりは選手たちで考えてやっているのですが、やっているのはキャプテンやリーダーら数人で、周りが『うん、うん、うん』と頷いている状況になってしまうと、リーダーとそれ以外の分断を生み出してしまう。僕はそこをつなげないといけない。そのために僕はリーダーらで決めたことを、『これを直したいからこの練習をするんだよ』『これを身につけるためにやるんだよ』という裏付けをきちんと説明するようにしています。
あと心がけているのは、キャプテンである僕が絶対的な存在にならないことです。『俺がリーダーだ』ではなく、周りの選手たちが意見を言えるように一歩引いた立ち位置を意識しました。でも、意見が出るようになって、すべてに『そうだね、そうだね』と言っていては収拾がつかなくなるので、その意見1つ1つに僕の考えや、話し合った意見をきちんと伝えるようにしています。例えばこの選手をスタメンで起用する、この選手を外すとなった時に、双方にその理由をきちんと伝える。何を言われても返せるようにしないとボトムアップにならないと思っています」
もちろん実際に行動するとなるとうまく行かないことも多々出てくる。だが、彼はそれも承知のうえで、自分の意思を全体に伝えるために常に大事にしていることが1つある。
「当然、キャプテンになったことで『お前はどうなんだよ』と思われることも増えたと思います。それはそのとおりだからこそ、普段の練習から100%を出すようにしています。常に気を抜かないで全力でやっている。でも、そこで僕が強気になってはいけないと思うんです。そういう意見が出た時に、『俺、全部やっているじゃん!』とつっぱねるのではなく、『確かに俺もできていないけど、常に全力でやっているよ。そこはお互い頑張ろうよ』と言うのでは全然違いますから」
彼の話を聞けば聞くほど、彼はマネジメント力に長けているだけではなく、ファシリテーターとしての能力も高いと感じる。
「意見を言うということは、その分、相手の意見を聞く力も必要になります。例えば、サイドハーフとサイドバックの間で、うしろの選手は『こう動いてくれ』と要求するけど、その一方で前の選手の『ここに出してほしい』という声に耳を傾けないとコンビネーションはよくならない。一方から『こうしろ、ああしろ』と言うのではなく、『こうして欲しい』と伝えたら必ず『どうして欲しいのか?』を相手から聞かないといけない。それでも意見を言わない人がいたら、『これはどう思う?』『どうするのが良かった?』と自分から問いかける。それの積み重ねが当事者意識を生み出すための重要なアプローチだと思っています」
■高校卒業後、アメリカの大学に進学
発信力と傾聴力。その土台に成り立つファシリテーターとしての能力。これまでを読んで彼なら社会に出ても十分に活躍できる素質があると思うだろう。実際に彼は高校卒業後、プロサッカー選手と経営者の2つの夢を持ってアメリカの大学に進学をする。
「サッカーも勉強も両方全力でやりたい。もしプロサッカー選手になれなくても、英語力とか海外とのつながりを持つことで、サッカー関係の仕事もできるかもしれない。まずはその前に堀越のために、みんなと協力をしながら高校最後の選手権に全力で臨みたいと思っています」
サッカーを通じて学ばせてもらっているマネジメント力、コミュニケーション力をさらに磨いて、将来の道を切り開いていく。12月28日に開幕する高校選手権において、昨年以上の成績を残すべく、堀越という組織の中で輝く名ファシリテーターの姿に注目をしてほしい。(FOOTBALL ZONE編集部)
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