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「責任問題になったとしても」 アジア杯敗退で森保監督が吐露…心中とV字回復の軌跡【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年12月27日 9時30分

■2024年の日本代表を、森保監督の言葉から紐解く

 2024年の日本代表の出来はどうだったのか。何ができて何ができなかったのか。印象が強いのは2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終(3次)予選で無敗だったことではないだろうか。そのため総じて順調だった年だったと記憶されているだろう。だが指揮官はそう思っていなかったかもしれない。公式会見の場ではない囲み取材の中で森保監督が語った台詞から、2024年のリアルを振り返っておく。

 11月23日、日本代表が今年のすべての試合を終わった後の天皇杯決勝、ガンバ大阪とヴィッセル神戸の一戦を視察した森保一監督は、試合後に何気ない会話の中でそう匂わせた。報道陣が今年の日本代表を振り返り、準々決勝のイラン戦で敗退した年頭のアジアカップ(カタール開催)について「あの時はどうなるかと思いました」と話したときのこと。

 森保監督は一瞬考え込み、「そうですか。まあまあ、そこはみなさんがそう思っていただいていいです」と語るとこう続けたのだ。

「私自身、いろんなアジア杯を通してトライをしている中で、悔しい思いをしましたが、すべて1戦1戦、勝っても負けても次につながるものだと思ってやってきました。同時に、アジアカップで責任問題になったとしても、日本の未来につながることを、今できることをやっていこうという気持ちでやってきたので、結果が出ても出なくてもあまり気持ちは変わっていません。

 いつも言っている代表の勝利のため、そして日本サッカー発展のために、ということで1戦1戦戦ってきて、今年は代表の試合もなくなった(終わった)のですけど、来年も続くということで、気持ちとしては全く変わらずという感じです」

 もしもアジア杯の敗退を受けて退任することになったとしても、それを受け入れていたという内容だった。監督はそういう覚悟を持っていたのだろう。もっともアジア杯については、監督の采配より、ヨーロッパがシーズン中ということもあり選手のコンディションが肉体的にも精神的にも整わなかったのが敗因と言っていいだろう。

■Jリーガーを呼ぶための条件「1対1で、局面で勝てる選手」

 森保監督は多くの選手を使いながら4バックも3バックも試していた。だがアジア杯中に「なかなか上がってきませんか?」という問いに対して「そうですね」とふと漏らしてしまうほど、大会の開催時期が一番の障害になってしまった。

 そんな問題も垣間見えたアジア杯のあと、森保監督は選手の入れ替えを考えていたのか。特にアジア杯にはコンディションの調整がしやすかったはずの国内組が少なかったことから、3月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦の前には囲み取材でJリーガーを呼ぶための条件を聞かれてこう答えている。

「1対1で、局面で勝てる選手が、またチームとしても機能できるというところが次のステップに向かっていくというところがあればいいかなと思っています。プラス、自分の武器をどれだけ発揮できるかというところ。局面で勝てる力をこう持つというところ、そして、これなら誰にも負けないという自分の武器を持つということは大切と思います」

 しかし3月に発表されたメンバーの中にアジア杯のメンバー以外で加わったJリーガーは大迫敬介(サンフレッチェ広島)と長友佑都(FC東京)のみ。北朝鮮が2次予選で最も手強い相手ということで慎重な選手選考になったとしても、Jリーガーの台頭が待たれるところだった。

■EURO視察、3バックで成功の訳

 3月のアウェー北朝鮮戦が不戦勝になったことで、日本は2次リーグ突破を決める。そして残った2試合、6月のミャンマー戦とシリア戦で森保監督は3バックをチェックし、6月以降の最終予選に備えた。

 しかし、2024年の日本代表のスケジュールには問題があった。アジア予選の日程のためにW杯本大会で戦うヨーロッパや南米のチームとの対戦が組めなかったのだ。アジア予選で大勝を収めていたとしても本大会は別物。森保監督はそのギャップを埋めるべく、EURO(欧州選手権)の視察に出かけた。そしてその帰国後の取材ではこんなことを語っている。

「(代表チームは)チーム作りに与えられる時間の中で、ほとんどのチームはシンプルにオーソドックスに戦うというところをやはり軸にしていることは感じるところはありました。日本人の選手に合ったこと、それでチームに合ったことを、戦術的にいろんなプランを持たなければいけないというところはあります。

 けれども、シンプルにベースを持っておくというところ、そこは試合までに準備できる時間が少ない、練習ができなくて試合をしなければいけないかもしれない中で、どうやって選手たちが戦術の絵を持てるかというところは、ヨーロッパ選手権をEURO見させてもらって、感じたとこですね。やっぱりベースというところが非常に大きいと思いました」

 実際、9月からスタートした最終予選では3か月とも、初戦の前に全員が揃って練習できたのは2日程度。しかしその条件下で3バックを敷いて成果を出せたのは、森保監督が続投してチームに積み上げができていたからで間違いない。

 だが毎試合メンバーが代わり、練習時間も少ない日本代表はまだ積み上げたい部分が残っているはずだ。たとえばずっと取り組んでいるGKからの組み立てについては改善の余地がある。

■GKからの組み立て「代表の舞台でもトライしたい」

 11月3日のルヴァンカップ決勝、名古屋グランパス対アルビレックス新潟戦を視察した森保監督は、敗れた新潟のGKを含めた守備ラインからのパスを使った展開にこんな感想を語っている。

「代表の舞台でもトライしたいところですけど、そこはちょっとずつ積み上げてやっていくということと、準備期間の中でやれることは整理していかなければいけないかと思います。でも、捨て玉を少なくする、マイボールを大切にするという、日本人の技術力をどうやって生かしていくかというところは、代表のチーム作りの中でもトライしていきたいと思います」

 11月23日の天皇杯後のコメントではこんなことも語っている。

「今やっていることをさらにブラッシュアップして、レベルアップして戦っていかなければ、世界の戦いではより勝つ確率を上げられないと。点は取れていますし、失点は少なくこれていますけど、もっともっと上げていかなければいけないというところは考えていけないかなければいけない。さらに高い志を持って活動しなければいけないかなと思います。まだW杯に出ることは決定したわけではないので、あまり先のことはいつもどおり言いたくないですけど、でも高い志を持ちながら、来年の3月のホーム2試合、まずはバーレン戦に向けて、基準を高く持って最善の準備をしていきたいと思います」

 2024年の日本代表はアジアとの戦いだけで終わり、ヨーロッパや南米などとの試合を組み込むことが出来なかった。常に先回りして考えている森保監督のことだから、今年は「高い志」「高い基準」をどう保っていくか集中していたことだろう。アジア杯の時には「コンディション」が「上がってこない」と感じていたが、そのあとは「志」と「基準」を「上げる」ことに腐心したのが2024年だったと言えるだろう。(森雅史 / Masafumi Mori)

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