お忍びで訪れたスタジアム…地元のために「何かできないか」 元日本代表の第2の人生【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年12月30日 6時30分
■長崎の高木琢也CROが地元に戻った理由「人生は何が起こるかわからない」
元日本代表FWの高木琢也氏が、V・ファーレン長崎の代表取締役 兼 C.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)として地元に帰ってきた理由を明かした。新スタジアム開業に尽力した1年を経て、長崎そしてサッカーへの思いを語ってくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全3回の3回目)
◇ ◇ ◇
「人生って何が起こるかわからないですよね。色々なことを考えていても、理想通りに行くこともあれば、その通りに行かないこともたくさんあります。僕は自分の人生の中で、思ったことが叶っているほうだと思っているんです」
長崎・南島原市出身で国見高校を経てJリーグで活躍した高木氏。現役時代には長崎にJクラブはなかったが、サンフレッチェ広島時代には横浜フリューゲルスのホームゲームで現トランスコスモススタジアム長崎のピッチにも立った。日本代表として歴代7位となる27ゴール奪ったまさに地元のレジェンドだ。
高木氏は2000年限りで現役引退したが、前身の有明SCとして長崎にチームが誕生したのは2004年。「その頃はもう恥ずかしい年齢で、身体もガタガタだったと思います。動けるときでしたらまだやりたいなと思いましたが、もう動けなかった」と選手としてのプレーは叶わなかった。そして、2005年にはテクニカル・アドバイザーを務めた。
その後は横浜FC、東京ヴェルディ、ロアッソ熊本の監督を経て、2013年にはついに長崎の監督に就任。2017年にはJ2で2位となり、チームをJ1初昇格に導いた。しかし、2018年にはJ2降格に終わって退任すると、大宮アルディージャ、SC相模原の監督を歴任。2022年5月に相模原を退任後、長崎に戻ってきていた。
きっかけとなったのは、プライベートで訪れたトラスタでの試合。「応援してくださっているファン・サポーターの皆さんの声を耳にすることが多い距離感になり、こういう人たちのために何かできることはないかなと思ったのが初めでした」。あふれた地元への恩返しの思いから、再び復帰に向けて動き出した。
■尽きない情熱…「自分の人生はサッカーでつくられている」
物事は順調に進み、2022年12月に長崎の取締役 兼 C.R.Oに就任。ちょうどその頃には、「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」の建設も本格化していた。「僕が監督からちょうど離れるタイミングくらいだったと思います」と新スタ構想とはすれ違いになっていたが、今度は当事者として尽力した。
長崎県は元々、島原商業、国見と高校サッカーの強豪校がありながらも、Jリーグとは縁がなかった。そのような状況から2004年に有明SCとして誕生した長崎が、徐々に力をつけてJ1も経験。そしてピースタ開業を経て、さらに上を目指していこうという空気に包まれる。ここまでの物語を知る高木氏は感慨深い思いを持つ。
「Jリーグを目指そうと2004年に有明SCとして長崎にクラブが誕生した時は、本気で応援されていた方はまだまだ少なかった。それが紆余曲折、色々な経験をしながら線と線で結ばれ、人々の興味を引くようになっていったと感じています。1度、経営的にすごく難しい状況になった時、そこで一体感も生まれて昇格することができた。
その一体感というのはクラブ、選手たちだけではなく、県民の皆さんにも賛同してもらって生まれたものでした。長崎が持っている力というのは、一つになると本当に強くなるんだなということを改めて感じました。今一度そういう波を作れると、長崎は盛り上がって、昇格に向かっていけると思っています」
地元への思いの一方で、高木氏のサッカーへの情熱も衰えていない。教えてくれたのは、日本代表での1学年上の先輩で、横浜FC時代には監督と選手の立場としてもともに戦ったFW三浦知良(現JFL・アトレチコ鈴鹿クラブ)の言葉だ。
「カズさんが『サッカー選手である以上、日本代表でプレーし続けたい』と話していました。僕も同じ気持ちで、自分の人生はサッカーでつくられているので、そこから離れることは想像がつかない。サッカーに関わっている以上は、今の仕事、これから携わる仕事にカズさんと同じように強いマインドを持って高みを目指し続けたいです」
地元のスーパースターでありながら、誰に対しても気さくでフレンドリーな高木琢也氏。今年で57歳になったが、これからの活躍もまだまだ楽しみだ。(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)
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