野球部は全国制覇も…サッカー部は初勝利「苦しかった」 苦難の歴史を変えた練習方法
FOOTBALL ZONE / 2025年1月1日 10時10分
■東海大相模が草津東に2-1で勝利、今年のチームには大きな取り組みの変化
第103回全国高校サッカー選手権は12月31日に各地で2回戦を行った。初の選手権出場となった東海大相模(神奈川)は、神奈川県大会も戦ったUvanceとどろきスタジアムでの大会初戦で草津東(滋賀)と対戦して2-1で勝利し、3回戦進出を決めた。
今夏のインターハイにも出場していた東海大相模は、冬の選手権でも神奈川県予選を勝ち上がり、初の出場権を獲得した。激闘となった草津東戦では、後半アディショナルタイムまで1-1のスコアだったが、アディショナルタイム4分に左サイドバックのDF佐藤碧が、FW山田大樹のシュートがクロスバーを叩いた後のこぼれ球をゴールに押し込み、逆転ゴールをマーク。ゴールセレブレーション中に試合終了のホイッスルが吹かれ、ラストプレーで劇的な選手権初勝利を挙げた。
スポーツに力を入れている東海大相模は、野球部や柔道部が全国優勝を果たした実績もあったが、これまでにサッカー部が選手権に出場したことはなかった。すでに新たな歴史を刻んだチームだが、有馬信二監督は「苦しかったですね」と、80分を過ぎて決勝ゴールが決まった試合を振り返り、「やっぱり全国の一勝は重いですね。特に選手権は。初出場をホーム(神奈川県内の会場)で戦えて応援はありがたいのですが、僕は胃がキリキリしていました。選手には『皆さんの応援を力に変えろ』と言っていたんですが、僕はかなりプレッシャーを感じていたんで、本当にホッとしています」と、安どの表情を見せた。
夏のインターハイにも出場して警戒されていたチームが、なぜここまでの快進撃を見せることができているか。有馬監督は今年のチームには大きな取り組みの変化があったと明かす。今年のチームは砂浜での走りのトレーニングやウエイトトレーニングなどのフィジカルトレーニングに力を入れたという。
「今、やたら『強度』と言われるじゃないですか。強度のところをパスでいなしたり、ファーストタッチでいなすことを、ずっと僕は追ってきましたが、なかなか神奈川で強度の高いチームと対戦して、その中で技術を出すとなると、選手も倒されてイライラするし、自分たちのプレー選択がうまくいかないことがありました。
今年のチームは能力の高い選手がかなりいるので、『この選手たちが身体も作って、走って、強度も上がったら、鬼に金棒だね』という話をしたんです。監督はボールトレーニング、トレーナーはウエイトトレーニング、フィジカルコーチは走り込みと、役割分担をしてやってきました。その形になって、ちょうど丸1年です」
監督によれば、昨年の選手権が行われた頃、東海大相模の選手たちは走り込み合宿の真っ只中。普段はラグビー部とグラウンドを共用しているが、この時期はラグビー部が遠征に出るため、広いグラウンドを使って身体をいじめ抜いた。唯一の休みは1月1日だったという。「午前中に素走りを入れて、そのあとにボールトレーニングを入れる。次の日はウエイトを入れてボールトレーニングを入れる。それを交互にやっていました。かなり昨年のこの時期はきつかったと思います。だから、彼らが報われてちょっと良かった」とほほを緩めた。
この試合で同点ゴールを挙げたキャプテンのMF長井隆之介は、「自分たちの特徴はうまさで、昨年はうまさだったけれど、強さが加わって今のチームになったと思います。2部練で最初の1時間走って、そのあとに2時間くらいボールを使ったトレーニングしていましたが、走りは思い出すだけで苦しくなるくらいきつかったです」と言い、弱さと向き合うことを求められる走り込みが増えたことには「正直、いやいや走っていた部分はあります。いやいや走りながらも、こうやって選手権に出られたので、走ったのは報われたなと思います」と笑った。
サイドで上下動を繰り返すだけでなく、試合開始直後から終了直前まで、何度もロングスローを放り込み、同点ゴールをアシスト、自らも決勝ゴールまで挙げた佐藤はインハイで負けた悔しさが、さらに過酷なトレーニングに向かう自分たちの意識をさらに高めたという。
「帝京長岡に負けてから、みんな練習の強度も意識も変わったと思うので、めっちゃ成長していると思います」と、自分たちの成長に胸を張った。そして、「自分たちはこの初戦で終わるようなチームではありません。初出場なんですけど、これからもどんどん勝っていくつもりです。次もしっかり勝って、初出場じゃないと相手に思わせるような全力プレーで、全国のいろんな人に注目されるように頑張っていきたい」と、3回戦に向けて意気込みを語った。
昨年は唯一の休みだった1月1日は、3回戦に向けた調整を含めたトレーニングが行われることになった。長井は「選手権でお正月がつぶれるのは幸せなこと。嬉しい気持ちしかない」と目を輝かせる。夏のインターハイで突破できなかった3回戦を超えられるか。選手権初出場のチームは自分たちの全国大会での記録更新を目指して、東北学院との一戦に臨む。(河合 拓 / Taku Kawai)
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