異例のJ下部組織→部活移籍「迷いはありました」 U-18代表に選出…逸材が示した可能性
FOOTBALL ZONE / 2025年1月1日 10時40分
■帝京の田所「高校サッカーに行くからには選手権に出たいとは思っていました」
高校のサッカー部に所属する、すべての者にとっての目標が高校サッカー選手権だ。その舞台に立てる選手たちの胸には、さまざまな思いが去来するはず。だが、15年ぶりの出場を果たした帝京高(東京B)のDF田所莉旺が、12月31日にUvanceとどろきスタジアムで行われた金沢学院大附(石川)との試合に持っていた感情は、輪をかけて特別なものだっただろう。
小学5年生の時から川崎の下部組織に在籍していた田所は、川崎フロンターレU-18に進み、高校1年目の時からプレミアEASTの試合にも絡み、2学年上の現日本代表DF高井幸大らともプレーをしていた。そこから昨年度、自身のさらなる成長を求めて帝京へ異例の移籍を果たしたのだった。
日本代表にも高体連出身選手よりも、J下部組織の選手が増えてきている今、田所のこの動きは時代に逆行しているようにも見えるが、その決断が正しかったと、U-18日本代表で今年10月のスペイン遠征に参加した18歳は胸を張る。
「(川崎をやめたのは)選手権に出たくてというより、自分の成長する場を変えるために決断したのですが、高校サッカーに行くからには選手権に出たいとは思っていました。そのなかで自分たちの学年で来れることには、東京を勝った時には一つ感慨深く思いました。
代表選手とか、J下部組織の選手が多くて、そのなかに高校サッカー出身の選手が食い込むことは減っているので、決断する時には迷いはありましたが、場所が変わっても自分自身がやり続ければ、そういうところも目指せると思い込んで努力してきました。帝京に入って仲間にも恵まれ、自分が代表に復帰できたのは、帝京に入って仲間とスタッフに恵まれたからだと思います」
『とどろき』といえば、言うまでもなく川崎フロンターレの本拠地。小学校時代にはトップチームの試合をスタンドから見ていたという田所は、「高1の時以来」のとどろきのピッチで、藤倉寛監督が「5よりも0に価値がある」と言った5-0の完封勝利に貢献した。
「やっぱり自分が一番好きで、あこがれていたスタジアムだったので、やっぱり芝も良かったですし、プレーしている感覚はほかのスタジアムに比べても良かったかなと思います。やっぱり(無失点は)いいですね。多分、都大会の駒込戦以来の無失点でした。毎試合、1失点、2失点が続いていたので、守備陣としては反省していたポイントでしたし、久しぶりに無失点で試合を終えられて良かったです」(田所)
スタンドには、川崎U-18時代につくられた横断幕も、初戦の国立戦に続いて掲げられていた。それを目にしていた田所は「フロンターレのサポーターの方々がとどろきに来てくださって、ああいうのを用意してくれるのは嬉しいですし、とどろきで勝てたのは、また一つ違う喜びがありました。(川崎を)辞めてから、昨年は選手権に出られなくて自分を見てもらう機会も多くなかったので、そういう意味でもとどろきで姿を見せられたのはよかったです」と、喜んだ。
この試合、唯一の悔いは、川崎の下部組織でチームメイトだったGK石山アレックスからゴールを奪えなかったことだという。「試合前に挨拶をして、本当は点を取ってやろうと思っていたのですが、DFだったのでチャンスはありませんでしたね。でも、お互いに成長した部分を見せられたかなと思いますし、前線の選手がアレから点を取ったことで、勝てたと思っています。やっぱりリスペクトしている選手なので、アレックスに勝てたことは嬉しく思っています」。
残念ながら高井は、この試合に来られなかったが「決勝まで行ったら、もしかしたら見に来てくれるかもしれない」と田所はいう。そして「同期の選手は何人か『行くね』って言ってくれていましたし、今日も実際に来てくれていました。そういうユース時代の同期や先輩が注目してくれるのは自分のなかで力になっていますし、見に来てくれるからには負けている姿は見せたくない。帝京の先輩が来てくれることにもそう思いますが、今日なら横山夢樹(現FC今治)も来てくれた。そこは自分たちの力になっているなと思います」と続けた。
帝京は3回戦もとどろきで戦い、勝ち上がればもう1試合、とどろきで戦うこととなる。「アレックスも言っていましたが、やっぱりとどろきというのは、自分たちにとって思い入れのあるスタジアムです。やっぱり負けたくない思いもありますし、自分も(川崎U-18を)やめてから、覚悟を持って入ってきて、その姿を全国の舞台で見せられる舞台がとどろきで、あと2回とどろきでやる機会があるので、とどろきでは絶対に負けたくないなと思いますし、とどろきで勝って良い流れで国立に戻りたいと思います。ただあまり先は見すぎず、一戦必勝でやっていきたい」と、『とどろき必勝』の決意を述べた。(河合 拓 / Taku Kawai)
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