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銀座に構える5年半の“城”「天職かも」 ロンドン五輪代表候補が歩むセカンドキャリア【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月2日 7時20分

■横浜FMなどでプレーした比嘉祐介は現在、銀座のバーで店長を務めている

 ここは東京中央区銀座の一等地。この日は12月23日。いわゆる“イブイブ”である。(取材・文=藤井雅彦)

 世の中はクリスマスムード一色だ。煌びやかなネオンはとにかく眩しく、高級ブランドに身を包んだ男女が頻繁に行き来する。

 高級クラブと高級ブティックに囲まれたビルの7階に店舗を構える。その名も「GINZA GA-HI-BAR」。自身のニックネームをそのまま店名に採用した。

 店長を務める元Jリーガーの比嘉祐介がこの店をオープンしたのは2019年7月のことだった。

「引退する前からバーをやりたかったんです。普通のサラリーマンは絶対に無理だし、人に教えて育てる指導者も無理。料理ができるわけでもない。でも、お酒と人は好き。大人になっていろいろなバーを見てきて、憧れていました」

 流通経済大学の同期たちとゼロから店作りをスタートした。コンセプトを練り、テナントを探し、発想を具現化していく。すると引退発表から半年も経たずにお酒を作っていた。

「アフターのお客さんが利用できるバーにしたかった。だったらカラオケ付きの個室でしょ、と。六本木や西麻布にはそういうお店が多いけど、銀座にはあまりなかったので。9割はアフターのお客さんです。21時オープンで構えていますけど、混み始めるのは24時を過ぎて1時くらいになってから。早い時間は知り合いの人がたまに合コンで使うくらいですね。気が付けば5年半か。オープンして数か月でコロナ禍になってちょっと大変だったけど、それからはお客さんのおかげでなんとかやっています」

 店に定休日はない。比嘉自身は週1日の休みをもらっている。ただし「自分がいないとお客さんの9割が来なくなる」という人気者ならではの悩みを抱える。土地柄もあって飛び込みの一見さんはほぼ来ない。店長の人脈とコミュニケーション能力あってこその店と言っていい。

■現役生活は2012年から7年間「あっという間だったけど、濃かった」

 当然、お酒を勧められる。朝まで飲むのは当たり前。場所を移しながら昼まで飲み続けたこともある。それでも自慢の肝臓は元気いっぱいだ。

「二日酔いになったことがないんですよ。よく潰れるんですけどね。昔も今も、しょっちゅう潰れています。テキーラとシャンパンを一気飲みするのが基本だから、潰れますよ。でも次の日に酒は残らない。ケロッとしている。分解力に優れているんでしょうね。天職かも」

 そう笑い飛ばすと、手元にあるハイボールを水のように飲み干した。

 2012年からの7年間をプロサッカー選手として生きた。

「あっという間だったけど、濃かった。もっと長くやっていた感覚がある。どこまで現役をやろうとかは決めていなかった。1年ずつくらいでしか考えていなかったから。サッカーに関して後悔はありません」

 話せないことなど何もないと言わんばかりに、当時の生活を赤裸々に回想してくれた。そこには古き良き時代のJリーガーがいた。

「現役の時から飲んでいました。でも二日酔いにならないから次の日の練習は余裕でした。頭が痛いとか、動けないというのはない。サボったことも遅刻も一度もない。二日酔い対策は特にしていなかったなぁ。楽しんでいて、そんなことをする余裕はなかった」

 2012年に加入した横浜F・マリノスを皮切りに、京都サンガF.C.、ジェフユナイテッド千葉、東京ヴェルディの4チームでプレーした。7年間でリーグ戦通算37試合は決して多い数字ではない。移籍だけでなく怪我も多かったのが理由で、特にプロ最終年となった2017年は1月のキャンプで負傷してからトータル10か月間をリハビリメニューで過ごした。公式戦出場は天皇杯1試合のみに終わった。

■「飲むなと言われても無理だし、そういうサッカー人生だったとしか言えない」

 ちょっぴり苦い過去も、清々しい表情で語れるのが比嘉という男だ。

「原因は酒の頻度と睡眠の少なさでしょうね。知ってました(笑)。怪我は全部が筋肉系だったから。でも、自分がやったことだから自分の責任。(酒を)飲むなと言われても無理だし、そういうサッカー人生だったとしか言えない。周りの選手はほとんど飲まずに真面目だった。今の時代の選手はもっと飲まないと思う。みんな自分自身が決めた道を行って、責任を取ればいいと思うんです。お世話になったメディカルスタッフのみなさん、仕事を増やしてごめんなさい」

 サッカーの時間は終わった。最近は小学校6年生と3年生の息子と一緒にボールを蹴るくらいがちょうどいい。今はセカンドキャリアの充実しか頭にない。2店舗目をオープンさせる夢を密かに抱いている。

「バーの店員は、やろうと思えば誰だってできるもん」

 そう言い放つと、おかわりのハイボールを体内へ流し込む。グラスにはほとんど溶けていない氷だけが残っていた。

「そろそろ出勤かな」

 常連さんに呼び出されて近所のクラブへ“出張”するのだという。その後は、アフター客として自身の店に連れ戻ってくるのがお決まりのコースだ。

 ジャケットを羽織り、黒いコートに身を包む。比嘉祐介は銀座の街へ消えていった。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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