届かないJオファー「高卒プロ諦めたくない」…名門エースが苦難、直面した現実「悔しかった」
FOOTBALL ZONE / 2025年1月2日 10時30分
■流通経済大柏10番・MF柚木創、並々ならぬ覚悟で臨む選手権
やはり背番号10を背負う男は特別な存在にならないといけない。優勝候補筆頭の流通経済大柏(千葉)が迎えた選手権初戦の佐賀東戦。チームの10番・MF柚木創は並々ならぬ覚悟で臨んでいた。
「選手権予選はほとんどアピールできなくて、自分の特徴を生かせないまま終わってしまった。チームのみんなが全国に連れて行ってくれたと思っているので、全国では自分がアピールしてチームを勝たせないといけないと思っていました」
分厚い選手層を誇る流通経済大柏の中で、彼は1年時から高円宮杯プレミアリーグEASTで堂々たるプレーを見せるなどすぐに頭角を現した。昨年は完全にチームの中心となりプレミアEASTで3ゴールをマーク。U-17日本代表にも選ばれるなど、飛躍の1年となった。
しかし、今年は10番を託されながらも苦しみ抜いた1年だった。複数Jクラブの練習に参加するがオファーがなかなか来ない。その一方でチームメイトのDF松本果成が湘南ベルマーレに内定。ともにJクラブの練習参加にも行っていたMF亀田歩夢がカターレ富山に内定が決まった。
「悔しかった。でも、高卒プロは諦めたくなかった」
もがく中で10月に入るとプレミアEASTでベンチスタートが増え、選手権予選でも途中出場がメインとなった。そこでもチームとしては圧倒的な破壊力を披露し、3年ぶりの選手権出場を手にしたが、彼個人としては強烈なインパクトを残せないまま終わった。そして、プロからのオファーは届かず、大学進学となった。
「もの凄く悔しかったし、歯痒かった。どうしてもプロに行きたかったのが正直なところですが、それは自分がまだまだ甘かった。プロ内定の2人からはいい刺激をもらえていますし、僕も大学4年間でもっと成長してプロになりたいという思いに切り替わりました」
■攻撃センスに疑いの余地なしもスタメン落ち
フィジカルの強さとボールコントロールのうまさ、そしてパスセンス。1人で打開することもできれば、周りと連係して攻撃を組み立てることもできる。この攻撃センスに疑いの余地はない。
秋にスタメンから外す決断をした榎本雅大監督も「彼はスペシャルなものを持っているし、波に乗ったら止められない迫力と技術がある。でも、まだ波があるし、『ここぞ』という時に力を発揮できなければ、上のステージでも厳しくなる。そこに彼が気付いて欲しかった」と、彼のメンタル的な成長を願っての采配だった。
「落ち込んだり、悩んだりする時期はありましたが、すべては自分次第ということを学びましたし、エノさん(榎本監督)はずっと僕の攻撃の部分に期待してくれていた。ゴール前でより怖いプレーをするというのは考えていました」
選手権予選後のプレミアEASTではスタメン復帰し、残り2試合はスタメンフル出場。そして選手権初戦でも先発でピッチに立った。
「外された時はどうやったらスタメンに戻れるかを日々のトレーニングで考えながらやりましたし、仮に後半から投入されても、しっかりと流れに乗ってチームのために自分の良さを出すプレーをするように準備したことは大きな財産になっています。今朝、スタメンと言われた時も、みんなから全国に出られるチャンスというのをもらえたらからこそ、今日はやらないといけないと強く思いましたし、意地を見せたかった」
この試合、柚木はボランチとしてボールを多く引き出し、ワンタッチプレーとドリブル、そしてサイドチェンジなどを駆使して攻撃のリズムを作り出した。意表を突いたループパスで3点目の起点となってからベンチに下がったが、やはり彼がチームの鍵を握っていると感じるプレーを見せた。
「僕がボールを多く触ることでチームにテンポが生まれて来る。選手権でも10番を背負わせてもらっている以上、僕が一番自信を持ってプレーしないといけない。チームを勝たせられる選手になるために、しっかりと自分にベクトルを向けてやっていきたいと思います」
苦難を乗り越えた10番は頼もしい背中を見せてくれるようになった。周りの期待を背負って柚木は大津とのビッグマッチに万全の準備で挑む。(FOOTBALL ZONE編集部)
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