選手権で「フィジカル対テクニック」 V候補名門が貫く理念…目立つ高レベルの「駆け引き」
FOOTBALL ZONE / 2025年1月3日 17時30分
■静岡学園はベスト8に進出
第103回全国高校サッカー選手権は1月2日に各会場で3回戦の試合が行われ、静岡学園(静岡)は高川学園(山口)に2-0で勝利した。球際の強度を武器にするタイプのチームに3連勝した静岡学園の川口修監督は「フィジカル対テクニックだ。テクニックが必ず上回るぞ」というメッセージを選手たちに伝えたと話す。
昨年の11月に今大会の組み合わせ抽選会が行われた際、埼玉会場で行われるAブロックには強豪が多く入ったと話題になった。その中でも優勝経験校の静岡学園は一目を置かれる存在だが、1回戦で広島国際学院(広島)、2回戦で高知(高知)、そして3回戦では前回優勝の青森山田を破って勝ち上がってきた高川学園に、いずれも2-0で勝利した。
どのゲームでも静岡学園のプレーは伝統的なテクニックを重視する姿を見せた。初戦こそ緊張からプレーが単調になったという反省点を挙げていたが、3試合をトータルしてもボールの受け際で相手の逆を取って前進する姿、ライン際に追い詰められた不利そうに見える1対1で相手の股下を抜いてキープしてしまう姿、キックフェイントや相手を引き付けておいて放すパスでボールを安定させる姿は健在だ。
この日は高川学園がセンターフォワードの選手を中盤のMF堀川隼まで下げてブロックを作り迎え撃ってきた。それだけに川口監督は「相手も駆け引きをしてきたし、こちらも駆け引き。守備ブロックに突っ込んでいったら餌食になる。絶対に中をやらせない守備との駆け引きで、こちらが点を取れて少しだけ上回ったということだと思う」と話した。
相手が構えているだけに最終ラインは少し楽にボールを持てるが、カウンターを狙っていることが明らかな相手への仕掛けは難しい。DF岩田琉唯は「前半に1本、縦パスを狙ってみたら中を空けてくれずに通せなかったので、うしろはシンプルにやろうとした」と話す。ボールを持つ時間が長くなりながらも、我慢の展開にもなった。得てして、このような時にパスを引っ掛けられる、あるいは球際で競り負けてカウンターを受けると、ボールを持つスタイルで臨む側が批判を受けやすい。
■高い守備強度は「想定」…響いた監督の言葉
この3試合は、いずれもそうした静岡学園とポゼッション勝負をするというよりも、フィジカルを生かしたプレーに良さを見せる相手との対戦だった。川口監督は「3試合とも守備の強度が高く、ボールを握られるような試合になる相手ではなかった。(高円宮杯)プレミアリーグや県予選でも、あまりブロックで固めてくるチームがなかった。難しくなるのは想定していたし、点を取れるかどうかの不安はあった」と話す。
それでも「でも、それをこじ開けて。今日も選手たちに『フィジカル対テクニックだ。テクニックが必ず上回るぞ』と送り出した」と、その信念を語った。
チームの中でも今大会で局面の高い技術を見せているDF鵜澤浬は「僕自身がロングボールを蹴るサッカーより、ボールをつないだり自分の力でドリブルで外したりはがしたりするサッカーが楽しいし、好き。高校サッカーで技術を極めたチームが少なくなってきている中で、昔からの伝統というかテクニックで、身体能力でやってくる相手に勝つというのが自分たちの理念でサッカーなので、そこを貫いて勝てているのは日々の練習をしてきたおかげだと思うので嬉しい」と話す。
ドリブルやテクニックでスタンドからの歓声を受ける場面も多いが「キックフェイントではがした時の沸いている声は人生で一度も体験したことがない。プレー中で集中している自分にも声が届くのは、人生の中でもなかなか体験できない貴重な大会だと思うので嬉しい」とも話した。
準々決勝の対戦相手は、プレミアリーグWESTでも対戦する東福岡(福岡)に決まった。再びテクニックとフィジカルのぶつかり合いになる試合展開が予想されるが、静岡学園は変わらぬスタイルで優勝候補対決を突破できるのか。こうした理念や信念のぶつかり合いもまた、サッカーの楽しみ方の1つだ。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)
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