国民の生活に「情報が勝手に入ってくる」 JFA宮本会長が目指す日本サッカー未来像【独占インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月6日 7時1分
■宮本会長とともに考える日本サッカーの「未来」
来年、10年後、100年後……日本サッカーが辿る未来図とは――。トップをひた走る日本サッカー協会(JFA)宮本恒靖会長が「今」と「これから」を語る。新たなコンセプト「日本サッカーの未来を考える」を据える「FOOTBALL ZONE」が独占インタビューで会長の考えに迫った。
森保一監督率いる日本代表が躍進を遂げるなど日本サッカーはレベル向上を図る一方で、育成世代の環境整備、Jリーグと女子サッカーの発展、ビジネス化……課題は山積み。Jリーグ創設から30年超、進化をその目で見てきた宮本会長。過去、現在、未来に視点を向け、サッカーを愛するすべての人々とともに設計図を描く。第1回は「宮本会長が提示する未来像」について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
◇ ◇ ◇
2024年3月、日本サッカー界の歴史が動いた。かつて2大会連続でワールドカップ(W杯)の舞台に立ち、主将マークを巻いた宮本会長の誕生。元日本代表選手、戦後最年少の47歳、日本サッカー界を背負うJFA会長が思い描く未来は、ただ壮大なだけではない。リアルで、絶対に解決しなければいけない問題。日本サッカーを発展させるためには必要なことだった。
「本当にざっくりな言い方になってしまうけれど、昔から言っているようにサッカーをもっともっと大きな存在にしていきたい」
日々日本サッカーと向き合う宮本会長。日常を過ごすなかで目線を合わせて考える。日本の国民にとってサッカーはどのような存在か。だからこそ口に出した「大きな存在」。それこそ「もっとサッカーが勝手に入ってくる状態」だ。
「今はサッカーの話題は能動的に取りに行かないといけない。例えば、ロンドンなら日常的にプレミアの情報が流れている。取りに行った時にちゃんとした情報があるっていうのも大事だけど、そういう(勝手に入ってくる)状態を作るには今の存在よりもっともっと大きいものにしていかなければいけない。うっすらでもいいから日常的な話題に上る、とかですね」
現在サッカーに携わっている人だけではない、いかに人々の日常に溶け込むか。その光景を目の当たりにしたのが例えば昨年11月の敵地インドネシア戦だった。ジャカルタで行われた日本代表の練習には悪天候にもかかわらず、日々報道陣が100人ほど駆けつけた。
宮本恒靖会長がJリーグアウォーズで感じたこととは?【写真:徳原隆元】
■サッカーの情報を「取りに行く」から「自然に入ってくる状態に」
報道陣だけではない。サポーターも日本代表のユニフォームを掲げてピッチを訪ねた。なかにはサンフレッチェ時代の森保一監督や、日本代表の名波浩コーチのシャツを着用している現地ファンもいた。インドネシアでは自国だけでなく、欧州やJリーグの関心も高い。街中にサッカーの広告が貼られ、レストランでは試合の映像が流れる。この“熱”の高さには日本国内でも注目が集まった。
もちろんインドネシアだけではない。欧州や他国も地域に根付いたサッカーファン、サポーターが日常を彩っている。
「この間、Jリーグアウォーズに行った時、各クラブのサポーターの方たちが熱心に(現地へ)来場している状態を見ました。これはJリーグが30年かけて積み重ねてきた素晴らしさ。あのシーンを切り取って見ているとJリーグはすごく成功している、日本においてサッカーが大きなものになってきていると感じる。でも、普段からサッカーを見ることが多くない人たちはJリーグアウォーズの情報に触れることは難しい。さっきも言ったように(情報を)取りに行かないといけないというところから自然に入ってくるような状態に変えていけたら」
日本にも“改革”が必要。そのためには大きなきっかけがなければならない。やはり来年に迫る北中米W杯は歴史を変えるうえでも重要な大会となる。森保監督の下、ドイツ、スペインを倒したカタールW杯。だがベスト16で涙をのんだことは記憶に新しい。これまでベスト8の壁に阻まれてきた日本。森保監督率いる日本代表がW杯で目標にする「世界一」にどれだけ近づくことができるか。
過去には自身もW杯に2度出場。世界は選手として、指導者として、会長として追ってきた。だからこそ決意は固い。
「選手たちは本当にかなり目標高くやっている。そこを実現すべく、サポートをしていく。選手にも協力してもらいながら。メディアのプロモーションも含めてやれることをやっていきたいと思っています」
日本中でサッカーをプレーしたり、観戦に訪れている人たちだけではなく、サッカーに関心が高くない層を巻き込んでいければ、より大きな輪が広がる。「日本サッカーを大きなものに」――。これこそ、未来への扉を開くため、我々が口にしなければいけない“合言葉”だ。(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)
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