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三浦知良の本音…日本は「まだ本場じゃない」 描く日本サッカーの未来とW杯優勝「イエスともノーとも」【独占インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月6日 11時30分

■レジェンド三浦知良と共に考える日本サッカーの歩みと未来

 JFLアトレチコ鈴鹿に所属するカズことFW三浦知良は、今年プロ40年目を迎える。2月に58歳の誕生日を迎えるレジェンドが、新たなコンセプト「日本サッカーの未来を考える」を据える「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じ、日本サッカーへの期待、自身のプレーと今後への思いについて語った。日本代表チームは2050年までのワールドカップ(W杯)優勝を目標に掲げるなか、「まずはベスト8」と冷静に応じながらも、世界を引っ張る日本人選手の登場を予想している。(取材・文=荻島弘一/全3回の1回目)

   ◇   ◇   ◇   

 カズがブラジルから帰国して読売クラブ(現東京ヴェルディ)入りしたのは1990年7月。日本代表は韓国や西アジアの壁に苦しんで世界に出ることさえできず、W杯出場も夢物語だった。1993年創設のJリーグ人気を支え、日本サッカーを引っ張ってきた男は、日本サッカーの進化や日本代表の強さをどう見るのか。

「日本がアジアを代表するチームになってW杯に出られればと思ってはいたけれど、これほどになるとは思わなかった。ここ30年、Jリーグができてからの日本の進化は世界的にも例のないもの。選手の成長にしても、組織の素晴らしさにしても、環境も含めて世界を驚かせているのは間違いないよ」

 世界的に見ても、驚異的な日本の進化。もっとも、カズは冷静だ。ブラジル、イタリアなどでプレーし、昨年はポルトガルのクラブにも所属した。かつて「世界に出る意義」を聞かれた時に「日本も世界の1つですよ」と答えたように、常に基準は世界にある。

「日本のサッカーは進化したけれど、まだ『本場』じゃない。生活の中心にサッカーがあるというわけじゃない。ブラジルなど南米、イタリアやスペインなどヨーロッパはサッカーが中心。ポルトガルもそう。(所属した)UDオリヴェイレンセの試合は200人くらいしか入らないけど、やっぱり本場。住んでいると分かるんだよね」

 日本サッカーは進化した。だが、南米や欧州のサッカー文化とは少し異なる。10チームで始まったJリーグは、今や60チームに拡大した。それでも、まだ30年。長い歴史を持つ国とは違う。もっとも、カズ自身は日本のスポーツ界におけるサッカーをポジティブに見る。

「サッカーが中心になっている国は多いけれど、日本がそうなる必要はない。日本はスポーツが盛んだし、日本人はスポーツが好き。多くのスポーツがあって、中心には野球や相撲がある。日本のスポーツ文化はそれでいい。オリンピックであれだけ盛り上がるのは、日本とアメリカくらいなんだから」


日本人選手の活躍を喜ぶ三浦知良は「もっともっとヨーロッパでプレーする選手が増える」と言及【写真:Getty Images】

■欧州組拡大を予想「バロンドールを獲る日本人が出てきてもおかしくない」

 一方で、海外で活躍する選手は爆発的に増えた。それが、日本サッカーの進化にもつながっているのは間違いない。カズ自身は静岡学園高を1年で中退して単身ブラジルに渡った。当時としては異例だったが、今は高校から海外のクラブに行くことも珍しくない。

「時代を語れば驚かれるかもしれないけれど、世界も変わった。ボスマン判決(95年)以降は移籍の自由化が進んで、世界的に他国でプレーする選手が増えたから。日本もヒデ(中田英寿)や小野伸二、香川真司たちがチームの主力としてプレーして、今も多くの選手がヨーロッパで活躍しているからね」

 日本がW杯初出場した98年フランス大会は代表全員がJリーガーだったが、22年カタール大会の代表は欧州組が大半。ビッグクラブの主力としてプレーする選手も増えるなど、個々の選手のレベルアップは目を見張るほどだ。

「もっともっとヨーロッパでプレーする選手が増えるだろうし、男子でバロンドールを獲るような日本人が出てきてもおかしくない。すでに女子では澤穂希さんが獲っているし。そのくらい今の日本人選手はヨーロッパで活躍していると思う」

 選手のレベルアップを喜びながらも、日本サッカーが目標とする2050年大会までのW杯優勝については懐疑的だ。もちろん期待はしているのだろうが、冷静に分析して口を開いた。

「さすがに優勝となると簡単じゃない。これまで優勝を経験しているのは南米のブラジル、アルゼンチン、ウルグアイとヨーロッパのドイツ、イタリア、フランス、スペイン、イングランドだけ。100年近い歴史で8か国しか勝っていない。あのオランダだって優勝はないんだから(準優勝3回)、優勝は難しいんだよね」

 第2の故郷、ブラジルが優勝から遠ざかっていることも、難しさを感じる理由だ。2002年日韓大会で5回目の優勝を果たしてからは自国開催だった14年大会のベスト4が最高。決勝にも進んでいない。

「毎回優勝候補に挙がるのに、勝てていない。史上最強と言われることも多いけれど、そういう時こそあっさり負けるんですよね。そのくらい、W杯で優勝するのは難しいということ」


日本サッカーの急成長に思いを馳せる三浦知良「すごく進化したということなんですよ」【写真:徳原隆元】

■日本代表のW杯優勝は?「イエスともノーとも言えないかな。ただ…」

 さらに冷静な視点で、W杯の変化も口にした。ブラジル時代から強く意識して見続けているだけに、大会の様変わりも感じている。かつては世界中から厳選された国だけが出場し、多くの国にとっては「見るだけ」の大会だったが、今は大会の巨大化で出場することへのハードルが下がっているのも確かだ。

「昔はアジアの枠も1か2。ドーハ(94年米国大会予選)の時も2だった。2でダメで、3.5(98年フランス大会のアジア枠)になって日本は出場できた。今も2だったら、熱いよね。もちろん、2位以内の実力はあっても、何が起こるか分からない。アジアカップ(ベスト8)みたいなこともあるから」

 7大会連続でW杯に出場している日本だが、3回はグループリーグ敗退。4回はグループリーグを突破したが、いずれも決勝トーナメント1回戦(ベスト16)で敗れている。グループリーグでドイツとスペインという優勝経験国に勝った22年カタール大会も、トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦負け。結果的に「ベスト16の壁」を超えることはできなかった。

「決勝トーナメントは1回でも勝つのが難しい。それを4試合続けて勝たなければいけないんだから、優勝は大変だよね。まずはベスト8に入ることじゃないかな。そうでないと、真実味をもって語ることはできないよ」

 25年後の大目標。カズは「これだけ身体を酷使しているし、生きていないよ」と苦笑いしながらも、楽しそうにW杯を語った。ブラジルから帰国した90年7月、読売クラブ(現東京ヴェルディ)入り会見で目標に「W杯出場」を掲げた時は、23歳の「夢物語」や「妄想」にさえ思われていた。しかし、時代は変わった。日本サッカーは成長し、強くなった。W杯を語れるようになったのだから。

「実際に『優勝できるか』と質問されたら、イエスともノーとも言えないかな。ただ『W杯優勝』を目標にできるようになったのは凄いこと。昔は『W杯出場』だって無理だと言われていたんだから。そう考えただけでも、日本サッカーは変わったし、すごく進化したということなんですよ」

 日本サッカーの急成長をピッチの中から見てきた。その進化を肌で感じているからこそ、カズは嬉しそうに言った。(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)

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