苦境の鎌田大地「こういうサッカーは仕方ない」 恩師のスタイルがまさかの一変…それでも「いい選手に」【現地発コラム】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月8日 20時30分
■終盤に追いつき勝ち点1をもぎ取ったチェルシー戦
クリスタル・パレスの鎌田大地は、極めて冷静に試合を振り返った。1月4日、ホームで引分けに持ち込んだプレミアリーグ第20節チェルシー戦(1-1)後のことだ。
自軍は、前半14分の失点後に立ち直り、ハーフタイム明けには優勢と言える時間帯も見られた。試合を振り出しに戻したのは、後半37分。CFのジャン=フィリップ・マテタが、カウンターを締め括っている。
同点ゴールのきっかけは、相手GKロベルト・サンチェスが、1点リードでの終盤にもかからず、中盤の味方にパスを通そうとした不必要なリスクテイクではあった。とはいえ、チェルシーの攻撃一色だった立ち上がりを除く試合の流れからすれば、妥当な得点だったと言える。
個人的には、パレスのダニエル・ムニョスが、マン・オブ・ザ・マッチに相応しいようにさえ思えた。3-4-2-1システムの右ウイングバックが、ハーフタイムを挟んで2度の絶好機を演出していたチームには、少なくとも勝ち点1を奪う資格があった。
しかし、後半24分にベンチを出た鎌田は、「前半を見ていて、明らかに自分たちは負ける試合だと思っていた」と言う。
「後半にスイッチを入れてできたことは良かったと思いますけど、チェルシーだったり、大きなクラブのクオリティっていうのは、前半、凄く違いを感じたし、後半、ああやって流れが変わったということで、やっぱりサッカーって難しいなと思いますね」
いみじくも、本人の口をついた「サッカーの難しさ」という言葉。それを、今季プレミアで最も痛感している日本人選手が鎌田だろう。
自らの立ち位置を左右するような、怪我や監督交代があったわけではない。ところが現実は、トップ6争い参戦を期待する下馬評もあったチームが下位に低迷するなか、昨季途中からのオリバー・グラスナー体制下で強まり始めたはずの攻撃色が弱まり、移籍1年目の自身も、即戦力として期待された主軸化が叶わずにいる。
守備的MFとの交代でピッチに立った【写真:ロイター】
■勝ち点を積み重ねなければいけない中でのもどかしい状況
「自分のキャリアで、ポゼッションができないチームではやってきていない。今、それが凄くロングボールの多いチームになって。今まで、ボランチをしていたチームでは、ボールのポゼッションができて、上手く前の選手と入れ替わりながらボックスに入って点を取れたりした。それを今年(今季)もある程度想像しながらやっていたんですけど、この状況ではかなり難しいものになっていると思うし、今、こういうサッカーをしているのは仕方がない。勝ち点は結構、それでも稼げているので」
そう心中を語る鎌田は、次のように試合を振り返っていたこともある。昨年9月、2ボランチの一角で先発したカップ戦勝利後だった。
「キーパーがしっかりボランチにつけて、僕からエブス(エベレチ・エゼ)っていう、チームとして狙っていたことがしっかりできて、そのまま点につながった。点が入ったのも良かったですし、その過程が凄く良かった」
以降、パレスは最も重要なリーグ戦で4勝しかできていない。そのため、結果を優先すべく、後方に意識と頭数を割かざるを得ない試合が続くようになっている。基本システムこそ同じだが、内容的には、鎌田がフランクフルト時代から知る「グラスナー下のサッカー」とは別物だ。
途中出場の今回は、守備的MFシェイク・ドゥクレとの交代。記者席の前列にいたラジオ実況担当は、「攻撃オプション追加」と説明していた。確かに、果敢なプレッシングでチームにエネルギーを加えてはいたが、実際はボランチの入れ替えといったところだった。
チャンスに絡むかに思われたのは、後半44分の1シーンぐらい。タイミング良く裏へ抜けようと動き出したが、味方からのパスがやや後方に出る格好となり、必死に後ろ足を伸ばしてもコントロールはできずに攻守が入れ替わった。
ただし、その直前には自らのミスパス後のルーズボールを、五分五分の競り合いでものにして帳尻を合わせていた。中盤中央に投入された鎌田は、相手2ボランチのうち高めの位置を取るエンソ・フェルナンデスを注視しつつ、精力的に広範囲をカバーしていた。
素早くE・フェルナデスとの距離を詰め、敵の攻撃展開にブレーキをかける姿は度々見られた。後半アディショナルタイムに、タッチライン際でフリーキックを与えたファウルにしても、勝ち越しを狙う相手に再び押され気味だった自軍に、息つく暇を与える“防御”となった。
■1年半後のW杯へ「少しでも良い選手になって臨めるように」
チェルシーのトップ下から頻繁に落ちてきては、相手3人目のMFとなるコール・パルマーには、チームとして最終ラインと中盤の間のスペースを突かれてしまった感がある。先制ゴールを決めてもいる敵のキーマンには、鎌田自身も、プレッシャーをかけ切れずにアシストをこなされそうになる場面があった。
「自分でボールを奪い切るところだったり、守備の部分ではもっと成長できると思う。良い選手もたくさんいるプレミアリーグでは、プラスにできるとこもたくさんあると思うので、そこをしっかりやっていけたらいい。
あと1年半後ですかね、自分はワールドカップというのを、この間(22年)の大会が終わってから一番に考えてやってきている。そこで良いパフォーマンスができるように、チーム(クラブ)でしっかり良いプレーをしないといけない。こういう難しい環境の中でも成長できると思うので、少しでも良い選手になって、そこに臨めるようにやっていけたらいいなと思います」
2025年の初戦が終わると、ピッチ上の鎌田は、しばし両手を腰に当てて佇んでいた。上位戦では引分けに納得しなければならない現状のパレスは、リーグ戦20試合を消化して勝ち点「21」の20チーム中15位。しかし、己の頭は下を向いてなどいなかった。心に期するは、チームの浮上と自らのレベルアップ。攻守万能新戦力のプレミア挑戦1年目も、後半戦が始まった。(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
鎌田大地が途中出場のパレスが追いついてドロー! チェルシーはパーマー弾で先制も4戦未勝利に…【プレミアリーグ】
超ワールドサッカー / 2025年1月5日 2時20分
-
【プレミアリーグ第20節プレビュー】後半戦初戦! リバプールvsユナイテッドに、三笘はアーセナルに挑戦
超ワールドサッカー / 2025年1月4日 12時0分
-
エゼ弾で逆転パレスがセインツとの下位対決制す! 鎌田大地途中出場も菅原由勢は出番なし【プレミアリーグ】
超ワールドサッカー / 2024年12月30日 2時34分
-
【プレミアリーグ第19節プレビュー】年内最終戦となる前半戦最終戦! 首位ターン確定リバプールはハマーズ戦
超ワールドサッカー / 2024年12月29日 18時46分
-
【プレミアリーグ第18節プレビュー】ボクシング・デー開催! 好調同士のロンドンダービーら好カード満載
超ワールドサッカー / 2024年12月26日 18時22分
ランキング
-
1プロ1年目で絶望…母親に「俺、やめるかも」 先輩にも相談できず、鹿島でのギャップ【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月9日 6時50分
-
2ラグビー用語を大幅変更 ノックオン→ノックフォワード、姫野の代名詞ジャッカルはスティール…順次変更を実施
スポーツ報知 / 2025年1月8日 22時31分
-
3尚弥 延期グッドマン戦へ「最高の仕上がり」負傷した挑戦者の左目上は狙う?「当たり前じゃないですか」
スポニチアネックス / 2025年1月8日 19時18分
-
4日本ハム新庄監督「すごい悲しい」と後悔タラタラ…上沢直之のソフトB入りに不満を漏らした背景
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月9日 11時32分
-
5“山賊”と呼ばれた台湾美女が掴んだ成功 体育教師になる予定も…直前で変更した進路
Full-Count / 2025年1月9日 7時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください