許してはいけないプレー外での“時間稼ぎ”「また言うのかと」 城福監督が気付いたプレミアとの差
FOOTBALL ZONE / 2025年1月10日 7時50分
■「プレー以外のところで時間を稼ぐ選手がいるわけではない」
東京ヴェルディを率いる城福浩監督は今オフ、プレミアリーグ第20節のトッテナム対ニューカッスルの一戦で解説を務めた。現役のJ1リーグの監督による解説を聞けるのは、視聴者にとっても非常に貴重な機会となったが、当の城福監督自身も「プレミアリーグはシーズン中は、ずっとハイライトでは見ていますが、1試合を通して見ることはあまりないので、ああいうふうに解説を受けると、各々の試合を5試合くらいフルで見る機会があってありがたかった」と、解説の機会に感謝した。
そして、プレミアリーグの試合を90分にわたって見た印象について「また言うのかと思われるかもしれないけど……」と前置きした上で「改めて思ったのは、プレミアリーグのアクチュアル(プレーイング)タイムの長さ。やっぱり日本はそこで負けていたら、いつまで経っても離されるだけ」と、これまで何度も口にしてきたアクチュアルプレーイングタイムを長くする重要性を指摘した。
「彼らはスコアがどうであれ、格別に痛がる選手がいるわけではない。プレー以外のところで時間を稼ぐ選手がいるわけではない。たまたまアディショナルタイムで痛がったとしたら、それは本当なのかもしれないけれど、レフェリーも簡単には(ピッチに)入れないんですよ。笛を吹いている人たちも含めて、フットボールピープル全員がどういうサッカーを求めているかが、プレミアリーグを見ると(分かる)。その部分で日本が負けていたら、いつまで経っても離される一方なんじゃないかな」と、危機感を口にする。
そして、東京Vがその姿勢を示すチームになり、リーグを引っ張っていきたいとも掲げる。「我々が目指す、ひたむきにサッカーをやる。もちろん最後の戦術のところでCKの時にボールをキープするというのはサッカーなのであります。けれど、プレーをする以外のところで時間を費やすことを許容するリーグになってはいけない。ヴェルディがそういうリーグにしないようにしようと、先頭に立てるチームになりたい」と語る城福監督の言葉は熱を帯びる。
「もちろんニューカッスルのように、エクセレントな個の力を持った選手がハードワークできる、今の好調さを象徴しているような選手たちがいることは参考になります。でも、リーグとしてプレミアに追いつくことは難しいかもしれませんが、いくつかの項目に対して、肩を並べるような気概をもってやらないと、日本のサッカーがワールドカップでベスト8、ベスト4にのぼっていくのは、なかなか難しいと思う。そこに寄与するようにしないといけないという良い刺激を受けました」と、チーム作りの方向性についても思うことがあったと明かす。
今季プレミアリーグで躍進しているノッティンガム・フォレスト【写真:ロイター】
■「僕らが注目すべきは、今のプレミアではノッティンガム・フォレストです」
現在、ニューカッスルはプレミアリーグで5位と好調だ。だが、東京Vが参考にするべきチームは別にあると城福監督は言う。
「ニューカッスルは(プレミアリーグで)トップ6と言われているクラブと同じクラブのバジェット(予算)を持っているんです。なので、エディ・ハウっていういい監督が、彼らをハードワークする集団に変えて、今、何チームかを凌駕するような戦いをしている。僕らが注目すべきは、今のプレミアではノッティンガム・フォレストです。彼らのチームバジェットが何位なのか。むしろ、それこそが我々が勇気をもらえる。彼らが弱者のサッカーをしているのかとか、なにゆえにビッグ6の何チームかを凌駕しているのかには注目しています」
ニューカッスルよりも少ない予算ながらも、現時点でニューカッスルを上回る3位につけている古豪に目を向ける。2024年シーズン、16年ぶりのJ1に挑んだ東京Vは、周囲の予想をいい意味で裏切り、6位という順位でシーズンを終えた。そのチームの主力がほとんど残った今季は、さらに大きな期待がかかることになる。それだけに城福監督は気を引き締める。
「自分たちの昨年の6位を全部忘れるというわけにはいかないと思いますが、謙虚に戦わないと、本当に痛い目に遭うと思っています。何かを勝ち取ったわけでもなく、選手層とか、特別なものを持った選手が何人か先発やベンチにいるかというと、ほかのJ1クラブと比べたら、そこは我々が劣っていることは認めざるを得ない。そういうところからスタートして、いかに彼らと対等以上に戦うか。謙虚な部分と、日常これだけやっているんだから、我々がやれないはずがないという自信。そこのバランスの良い両立が必要かなと思います」
プレミアリーグはシーズンを折り返したばかり。ノッティンガムが後半戦も勝ち点を伸ばしていけるかは未知数だ。だが、ここまでのノッティンガムのような快進撃をJ1で2年目を迎える城福ヴェルディが見せられれば、大きなインパクトを与えることになるだろう。(河合 拓 / Taku Kawai)
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