取材エリアに響いた嗚咽「自分のせいで負けた」 松葉杖で現れ…夢潰えたミスに号泣

■選手権ベスト8で終戦、堀越CB森奏から溢れた涙

　1月4日に行われた高校サッカー選手権準々決勝の前橋育英（群馬）対堀越（東京A）の試合後のミックスゾーン。松葉杖姿で現れた堀越のCB（センターバック）森奏は、用意された椅子に座って取材に答えた。

　その目には止めることが出来ない涙が。この試合、堀越は前橋育英に0-1で破れ、2年連続ベスト4進出は夢に消えた。その中でしっかりと質問に答える姿が印象的だった。

「チームを国立に連れて行くことができなくて、すべて自分の責任です。最後パワープレーでFWに行ったのですが、そこでも何もできませんでした」

　森は昨年度から不動のディフェンスリーダーとして、182センチのサイズを生かしたヘッドの強さとサッカーIQの高さを持ってラインコントロールやチャレンジ＆カバーを統率。アジリティーや足もとの技術もあり、状況によっては試合途中にFWにポジションを上げて質の高いプレーを見せることで、昨年度の選手権では大きな話題となった。

　今大会、彼の存在感は非常に大きかった。初戦の津工業（三重）戦で無失点勝利に貢献すると、３回戦の松山北（愛媛）戦ではチームの4点目をヘッドでマーク。準々決勝の前橋育英戦でも前半は統率された最終ラインで無失点に抑えた。

　しかし、後半15分、一瞬の躊躇が重い決勝点につながってしまった。センターライン付近でクリアボールを左足インサイドでトラップをするが、それが大きくなってしまい、ボールへ触れる前に前橋育英のMF平林尊琉にかっさらわれてしまった。

　それでもすぐにダッシュで最終ラインまで戻って、裏抜けしようとしたFWオノノジュ慶吏をマークすることが出来たが、逆にCBと左サイドバックの距離が開いた間のスペースを活用され、MF黒沢佑晟にフリーでシュートを浴びた。彼はこのシュートに反応してスライディングでブロックに入ったが、身体に当てきれずにバーに当たった跳ね返りのボールを、マークを離したオノノジュに押し込まれた。

「自分のせいで負けたという気持ちが強いです。去年は先輩がいろんな経験をさせてくれて、僕が今年注目してもらっているなかで、あと1つで国立という舞台だったのですが、僕のミスでチームのみんなに迷惑をかけて失点をしてしまって本当に不甲斐ないです」

　取材中も嗚咽を交えながら、必死で声を振り絞る森からはあのミスへの後悔がにじみ出ていた。だが、彼の力もあったからこそ、ここまで来ることができた、接戦を展開することが出来たということは事実としてある。

「今年1年、本当に自分は強くチームに要求をしてきましたし、時には自己中心的なこともあったにもかかわらずについてきてくれた。だからこそあと1個、国立でプレーしたかった」

■卒業後は大学でサッカー継続「今日のミスを取り返していきたい」

　溢れ出る後悔の念。だが、同時に彼からはこの悔しさを絶対に忘れてなるものかという強い意志が感じられた。

「自分の力が足りなかったのは事実です。身体もまだ細いので、筋トレだったり、食事の面だったりと今日から努力をして、いい選手になってプロの舞台に立てるように4年間頑張ってきたいです」

　卒業後は関東学生サッカーリーグ1部の中央大学でサッカーを続ける。毎年のように多くのプロを輩出する名門大学で、また一から激しい競争に打ち勝っていかないといけない。

「高校サッカーだけではなくJクラブユースから代表候補クラスの人が入ってくるので、本当に厳しい争いになる。自分よりうまい選手はたくさんいると思うので、そこを上回って試合に出るためには、その選手たちより人一倍努力をしないといけない。でも、その選手たちより自分が上回っているのは、これだけ負けた悔しさを味わえたこと。これを今後プラスにしていきたいし、自分の努力につなげていきたい。本当に今日から高校サッカーは終わってしまったけど、大学サッカーで今日のミスを取り返していきたいです」

　喜びだけではなく、挫折も何度も味わった高校生活。昨年、Jクラブのキャンプや練習に参加するもオファーが来なかった悔しさ、そして最後の試合での後悔。そのすべてを力に変えて、彼は大学サッカーで捲土重来を期する。（FOOTBALL ZONE編集部）