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恩師と再会「明輝さんがいたから、いまの自分が」 鳥栖で濃密な時間…沸きあがる感情【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月19日 8時20分

■アビスパ福岡の松岡大起が金明輝新監督への思い、今季の目標を明かした

 新たな指揮官を誰よりも理解している。このオフに就任したアビスパ福岡の金明輝新監督と長く、濃密な時間を共有したと自負しているからこそ、ボランチ松岡大起の胸中にはさまざまな感情が沸きあがってくる。

 まずは約3年半ぶりに金監督の指導を受けながら、サガン鳥栖時代の思い出とともに蘇らせる懐かしさ。1月6日から福岡市内で始動した福岡の練習で金監督と再会した松岡は「率直にうれしく思う」と言葉を弾ませた。

 もうひとつは、金監督の“一番弟子”としての自覚。新シーズンへ向けて「いろいろなことをまた新たに教わると思っている」と目を輝かせる松岡は、その過程で自らに課される仕事をこう語っている。

「自分の色というものをしっかりと出しながら、チームの勝利のためにプレーしていきたい。具体的には自分にできていたプレーだけでなく、できるようになったプレーをピッチ上で表現しないといけないと思っている」

 金監督との出会いは2017年にさかのぼる。生まれ育った熊本市のクラブチーム、ソレッソ熊本から加入したサガン鳥栖U-18で監督を務めていたのが金氏だった。昇格したトップチームでも同監督の指導を受けた松岡は、清水エスパルスへ移籍した2021年8月にこんな言葉を鳥栖の公式ホームページで綴った。

「いままで生きてきたなかで一番悩みました。明輝さんがいたから、いまの自分があります。プレーがうまくいかず、悩んでいるときに声をかけてくださいました。プレーにおごりがあったときも強く声をかけてくださいました。すべてが僕にとって最高の思い出です。明輝さんは僕にとって最高の監督です」

 歩んでいく道が鳥栖と清水とに別れてから約半年後。2021シーズンに鳥栖を7位に導いた金監督が同年末に電撃退任した直後にも松岡は自身のインスタグラムを更新。あらためて感謝の言葉を投稿した。

「自分の成長の為にアドバイスをいただいたり、いろんな気づきを与えていただきました!そして1番は、どんなときも自分自身に自信を与えていただきました! これからも自分らしく全力で頑張ります」

 しかし、直後に金氏による複数のパワーハラスメント行為がJリーグの調査で判明した。鳥栖U-18時代に高校生に対してはたらいた暴言や暴力も含まれていた事態を問題視した日本サッカー協会(JFA)は、金氏が保持していた最上位のS級ライセンスをひとつ下のA級ジェネラルに降級させるなどの厳罰を科した。

 JFAが課す各種研修や社会奉仕活動に参加した金氏は、1年間の指導者資格停止が明けた2023シーズンにFC町田ゼルビアのヘッドコーチに就任。青森山田高から転身を遂げた黒田剛監督を主に戦術面でサポートしながら、同シーズンのJ2優勝&J1初昇格、昨シーズンのJ1リーグ3位躍進を縁の下で支えた。

 昨年2月にS級ライセンスを再び取得していた金氏は、町田で発揮した手腕が認められる形で福岡の新監督として招聘された。パワハラ歴を問題視するサポーター団体が監督人事の再考を求め、有力スポンサーが契約の新規更新を見送ると表明する逆風のなかで、11人の新加入選手を迎えた福岡は始動している。

 始動初日から「ミスを恐れるな」と何度も檄を飛ばし、攻守両面で積極的なトライと強度の高いプレーを求める指揮官の姿を、松岡は「(鳥栖の時と)変わっていませんよね」とうれしそうに見つめる。

「鳥栖でもやるべきプレーを前向きに表現しようとする選手が試合のピッチに立っていたし、ミスをしても何度でもトライし続ける選手がより多く試合に出ていた。その指示がより強調されていると感じています」

 別々の道を歩んだ3年半もの間に、アップデートされた金監督の引き出しの中身は、これから次々と明らかになるだろう。もちろん松岡自身も、鳥栖時代から変わったと自負している。成長を促しているひとつに、昨シーズンから所属している福岡で、他の選手たちにならって教室に通い始めたピラティスがある。

 ドイツでリハビリ目的に生まれたエクササイズであるピラティスは、伝わった米国でダンサーたちのトレーニングへと変化。深層部にあるインナーマッスルや体幹への刺激を介して、身体を健康的に鍛える身近なエクササイズとして老若男女に愛されている。そのピラティスがサッカーへ与える効果を松岡はこう語る。

「身体をリラックスさせる感じではなくて、筋トレ的な要素もあるなかで、最大限に伸ばした状態で筋肉を使う、といった点を特に意識するようにしています。ギリギリのところを攻めているので、肉離れなどの怪我が減り、筋肉の使い方がうまくなり、シンプルに速さが増している感じがしています。速さといっても最初の一歩であるとか、0.1秒とか0.01秒の差といったところに出てくるものだと思っています」

 次のプレーへ移る際の初速を早めたい思いは、金新監督の就任とともにさらに高まっている。指揮官は新体制下で実施した最初のミーティングで、目指していくスタイルとして「全員攻撃で全員守備、なおかつ自分たちから常にアクションを起こし、自分たちが主導権を握り続けるサッカー」を掲げている。

 それを具現化させるためには「スプリント面で速さが求められる」と松岡は先を見すえる。

「より重要なのはスプリントするタイミングと(初速の)速さ。現時点でマックスが時速30キロだとしたら、34キロとか35キロくらいまでは上げていきたいし、そのなかで高い技術を出せるようにしたい」

 原付一種バイクの法定速度が時速30キロ。それよりも速く、と望む意味を松岡はこう明かす。

「速さでいえばフォワードやサイドの選手がわかりやすいし、ボランチは加減速やターンが多いポジションであるがゆえに出にくい。そのなかでも一瞬の寄せなどで、最初からトップスピードでいけるように鍛えていきたい」

 脳裏にはブラジルで味わった悔しさが、いまも鮮明に刻まれている。J2へ降格した清水で開幕を迎えた直後の2023年3月。ブラジル2部のグレミオ・ノヴォリゾンチーノへ期限付き移籍するも、公式戦のピッチに立てないままシーズンを終えた松岡は、同年12月に復活を期して福岡へ完全移籍して再起を期した。

 迎えた昨シーズン。松岡はJ1リーグで自己最多タイの36試合に出場し、J1全体で8位タイとなる「87」のデュエル勝利数をマーク。鳥栖、清水と通算113試合に出場して一度も記録していないJ1でのゴールを、FC東京との第4節、川崎フロンターレとの最終節でマークした。ブラジル時代を思い出しながら松岡が言う。

「選手は試合に出てなんぼなので、もちろん悔しかった。そのなかで特にゴールへの意識はより強くなっている。あとはシンプルに向こうの選手のスピード感や身体の強さを肌で感じて、自分のなかで基準ができて、それを忘れずにプレーできている。その基準を周囲に伝えながら、自分はその基準をもうひとつ上げていきたい」

 福岡は20日から宮崎県内でトレーニングキャンプに入る。昨シーズンと同じ「88番」を背負う松岡は、同じ23歳の重見柾斗、V・ファーレン長崎から加入した30歳の秋野央樹らと切磋琢磨しながら、金監督の“一番弟子”という立場に甘えることなく、より速く、より多くのゴールを奪えるボランチを目指していく。(藤江直人 / Fujie Naoto)

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