契約満了を告げられても…権田修一を起用「知らなかった」 “パイプ役”との別れに漏れた本音【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月21日 6時50分
■権田は昨季35試合出場…秋葉監督が明かす終盤3試合の欠場理由
3シーズンぶりとなるJ1復帰を決めた清水エスパルスの中心選手には、2人の日本代表経験者がいた。2014年のブラジル・ワールドカップ(W杯)と2022年のカタールW杯に出場したGK権田修一と、2018年のロシアW杯に出場したMF乾貴士だ。そのうち権田は正GKとして35試合に出場。だがシーズン終了の挨拶で、自身が1年前の時点で契約延長の意思はないことをクラブから告げられていたと明かしている。チームの指揮を執った秋葉忠宏監督は、GKの起用を巡る心境を口にした。(取材・文=河合 拓/全8回の1回目)
◇ ◇ ◇
新シーズン、チームはJ1の舞台で戦う。権田は「正直、来年もJ1で、エスパルスで戦いたかった」と胸の内を明かして声を震わせた。
昨シーズン終盤の3試合。権田はベンチ外になっており、チームが新シーズンに向けて動き出したのかと思われた。ただ、権田とクラブが契約を延長しないことが1年前から決まっていたのであれば、指揮を執る秋葉忠宏監督は、若いGKを通年起用して来季に向けて経験を積ませることもできたはずだ。
なぜ2024年シーズン限りでの退団が固まっていたベテランGKを35試合、起用し続けたのか。そして彼の働きぶりをどう見ていたのか。デリケートなテーマだったが、秋葉監督は淀みなく、真摯に答えてくれた。
秋葉監督は権田とクラブの契約状況については「全然、知らなかった」という。「もちろん僕も契約(交渉)に入っていないので分からないですし、本当にそういう(1年前に契約満了と言われた)ことがあったのかも僕には分からないのですが、一番力のある選手を使い続けた結果です」と、起用はしっかり実力で選出していたと話す。
「シーズン最後のほう、残り1か月くらいを切ると、今年(24年)で契約が切れる選手は大体分かってくるのですが、最後の3試合についても、あの時もゴンちゃんは練習で脳震とうを起こしていたんです。そこで(第36節/第37節は)沖(悠哉)でいきました。去年も短いタイミングで2回くらい(脳震とうを)やっていて、昇格プレーオフにも出られませんでしたが、そういうのがまたあると怖いなと思っていたので。本人とGKコーチとも『万が一があるといけないから止めておこう』と話して代えたんです」
■権田に続き梅田も脳震とうに「本当は梅田を起用するはずだった」
負傷がなければ権田を起用し続けていたと明かした秋葉監督。最終節のロアッソ熊本戦では、沖に代わりGK猪越優惟が起用された。その理由について「僕自身の頭には、J1昇格が決まったら、ある程度いろんな選手を使いたいなという考えがあったんです」と説明する。
「特にGKグループは、J1でも一番レベル高いんじゃないかなというくらい、4人とも力のあるGKグループだった。うちの選手たちは、4人ともJ2であれば、どこに行ってもレギュラー張れたと思います。GKコーチに聞いても『これだけ4人がレベル高く揃っているのは珍しい。普通、3番手、4番手は嫌がって出て行ってしまう』と言っていたくらいですから。
それなのにこれだけレベル高く、集中力高く、毎日取り組んでいた姿を僕らは見ていたので、沖も安心して送りだしました。最終戦、本当は梅田(透吾)を起用するはずだったのですが、今度は梅田も練習中に脳震とうになってしまったんです。それでも猪越も、全然起用できるレベルだったので、沖に戻さずに猪越が出たんです」と、舞台裏では選手起用が二転三転していたと振り返った。
24年限りでクラブを去ることが確定している権田だが、秋葉監督はその影響について「非常に大きかった」と話す。「ゴンちゃんがいてくれたおかげで、チームもそうでしたけれど、僕自身もすごく成長をさせてもらいました。『こういう考え方があるんだな』とか、『こういうふうに受け取るんだな』っていう発見が多かったですね」と、多くの学びを与えてくれた元日本代表へ感謝を述べた。
「すごくチームや選手のことを代弁してくれる選手でしたから、本当に彼とは一番チームの中で話したのではないかなというくらい話しました。いろんなサッカー観とか、守り方1つをとっても『これだけ考えているんだ』『こういう守り方があるんだ』と思うことはたくさんあって僕自身も勉強になりましたが、そのなかで一番良いチョイスを選んだからこそ、優勝につながったと思います」
■監督と選手の架け橋だった権田「こんなにありがたい選手はいない」
権田が不在になることで、監督と選手の懸け橋になる存在が1つ減ることになる。秋葉監督も「僕らにとっては、本当にありがたかった。選手たちが言いにくいようなことも、彼は代表して言ってくれたから。『選手たちは今、こういう風に思っているんだ』『こう迷っているんだ』『スッキリしたんだ』というのが、よく分かりました。そして、僕らが伝えたいことを、今度は噛み砕いて選手たちにも伝えてくれました。僕らが“1”伝えたことを、“8”にも“9”にもしてくれたので、こんなにありがたい選手はいないですよね」と、ピッチ外で権田が果たしていた役割に感謝した。
そんな権田が新シーズン以降はいなくなるが、秋葉監督はある1つの事柄を除いては、選手からの提案は大歓迎だという。「戦術とか、戦略とか、技術に関しては、いくらでも耳を傾けるということは、選手たちにも伝えています。僕の知らない戦術とか、守り方、攻め方があるのであれば、いくらでも耳を貸す。ただ、フィジカルに関しては一切、耳を貸さないよって話をしています」と笑った。
J1昇格を置き土産に、新天地を求めることになった権田。彼とポジションを争った選手たちが、来季はJ1の舞台で躍動することになるのか、それとも新しいGKを獲得するのか。チームの補強動向にも注目が集まる。(河合 拓 / Taku Kawai)
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