SNS誹謗中傷「何度も電話した」 選手被害、クラブは“法的措置”…1人の監督が見た“怖さ”【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月22日 6時50分
■23年に誹謗中傷の被害に遭った高橋、秋葉監督が考えるSNSとクラブの在り方
清水エスパルスは2024年シーズン、念願のJ1復帰を決めた。昨季は、東京ヴェルディとのJ1昇格プレーオフ(PO)決勝で1-0とリードしていたなか、後半アディショナルタイムに与えてしまったPKを決められて1-1となりJ1昇格を逃す。この時、PKを与えたDF高橋祐治はSNSで過剰と言えるほど大きな批判を浴びている。それから1年、高橋は30試合に出場して清水のJ1復帰に大きく貢献。清水を率いる秋葉忠宏監督に、現代SNSと選手の付き合い方について聞いた。(取材・文=河合 拓/全8回の2回目)
◇ ◇ ◇
SNSの発展でサッカークラブや選手、チーム関係者は情報発信が容易になった。その一方、この時のように直接的に批判にさらされやすくもなっている。ファン・サポーターとのつながりを大切にする清水の秋葉監督は、この時の出来事をどのように捉え、どのようにSNSを活用していくべきだと考えているのだろうか。
「本当にどう扱うか。そして、どういうふうに受け取るかで、かなり素晴らしいものにもなるし、本当に人を死に追いやるぐらい怖いものになるのが今のSNSです。昔は『ペンの力で戦争を起こせる』とオシムさんも言っていましたけれど、今はペンがSNSに変わったなって思っています」と、秋葉監督は切り出した。
そして、約1年前のことを振り返り「祐治にも何度も電話をして、クラブを挙げて家族を含めたケアをしつつ、法的措置をとるなどの準備をしました。彼も『1回、日本を離れて家族で旅行します』とか話していましたが、苦しみも伝わってきていたので、本当にああいうことはやってほしくないと今も思っています」と続けた。
良くも悪くも、大きな可能性を秘めているSNS。急速に発達していくテクノロジーをどのように活用していくかは、まだまだ試行錯誤している段階だ。
「対策をするとしたら、もう見ないようにするしかありません。でも、やっぱり色々な意味で発信してほしい。選手の発信力、影響力はすごいですし、フットボールの魅力とか、チームの良さみたいなものを知ってもらうためには、ぜひ活用してほしい。この矛盾に今、すごく我々も苦労しています」
清水でプレーする高橋祐治【写真:Getty Images】
■SNSに振り回されない「9割はみんなのことが大好き」
「発信してほしい一方で、ダイレクトに誹謗中傷も届いてくる。選手、指導者をやるうえで、これとどう付き合うかは、非常に大事です。そういう時代になってきていますから、この扱い方はクラブとしても講義を含めてしていきたい」。そうしたなかでも、秋葉監督はある確信を持っており、そのことは選手たちにも伝えているという。
「はっきり選手たちに伝えたのは、『ああいう声というのは10割の1割あるかないかだ』と話しました。『あとの9割は、みんなのことが大好きだし、称賛している。頑張ってほしいと思っている』という話はしています。日本の今、良くないところですよね。良いことってなかなか言ってくれないんですけれど、悪いこととか、ネガティブなこと、批判的なことをいう声はデカくなるんです。
だから僕は『そんな国じゃないから安心しろ。多数決の民主主義の国だから、そんな奴は放っておけ』ってはっきり言うんです。選手を批判したい人は、俺に言いにくればいい。そんなヤツの言葉なんかは何も俺には届きませんから。それよりも選手たちには良い言葉をかけてほしい。皆さんが良い言葉をくれれば、くれるほど選手は躍動しますし、結果にもつながるので良いことしかありませんから」
SNSでこうしたことが起こるたびに、秋葉監督は「日本という国が、もう一度正しい道徳だとか倫理だとか、モラルのある国にやっぱり戻ってほしい」と思う。そして「僕はちょっと古い人間かもしれませんけれどね」と苦笑しながら、持論を続けた。
「そういうところが、日本の良さでもあったと思うんです。代表チームで、いろんな国に行かせてもらえばもらうほど『やっぽり日本人で良かった』とか『日本っていう国は本当に素晴らしいんだ』と痛感してきました。ちゃんと約束を守れるとか、ちゃんと礼節がしっかりしているとか。
本当に教育も行き届いているなっていうのが、僕は海外に行けば行くほど感じます。どこの国の人にも、羨ましがられるんですよ。『なんで日本人は、お財布を落としてもそのまま届けてくれるんだ。中身が残っているんだ!』って。日本人は誇らしいと思うことはやっぱり多くありましたし、だからこそ、極一部の声だけに耳を貸す必要はないんです。直接、面と向かって言われることの方が大事だし、その声の方を真摯に受け止めたほうがいい」
■SNSで苦しんだ高橋へ「存在は、すごく大きかった」
「考え方1つで、人生は豊かにもネガティブにもなります。どうせ生きるのであれば、どうせプレーするのであれば、どうせやるのであれば、やっぱり楽しく、ポジティブにいろんなものを捉えて、考えられる人になっていってほしいなと思います。SNSもうまく活用しながら、そして余計なものには一切振り回されずに、面と向かって批判をする人を含め、いろんな意見を言ってくれる人を大事にした方がいい。そういうプレーヤーであり、人間になってほしいと思います」
当時、過剰なまでの批判を受けた高橋については「彼もこれをサッカー選手の宿命と捉えて、1つの経験として刻んでくれて、今シーズンもピッチ内はもちろんですが、ピッチ外でもチームをまとめるっていうところで、祐治や矢島(慎也)、吉田豊といった選手の存在は、すごく大きかったです」と笑顔を見せた。
SNSの普及によってさまざまな情報が入ってくる現在。無限の選択肢のなかから、最適だと思うプレーをピッチ内で決断している選手たちにとって、どのようにSNSと付き合い、どのような言葉を受け入れていくかは、ピッチ外で求められる決断として、より重要性を増してきている。(河合 拓 / Taku Kawai)
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