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「怖がっていた」 監督就任で転機…熱い訴えで“18戦16勝”「負ける雰囲気なくなった」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月24日 6時50分

■清水の秋葉忠宏監督が明かしたホームでの強さの秘訣

 2025年のJ1復帰を決めた秋葉忠宏監督が率いる清水エスパルスにおいて、特筆すべきはそのホームゲームにおける無類の強さだろう。2023年に清水のヘッドコーチのポストに就いた秋葉監督は、チームの成績不振を受けて2023年4月に監督に就任することとなった。そこからのホームゲームでの強さは圧巻だ。(取材・文=河合 拓/全8回の4回目)

   ◇   ◇   ◇

 プレーオフの末、惜しくも昇格を逃した2023シーズンも、IAIスタジアム日本平(通称アイスタ)では秋葉監督の就任後は13勝3分2敗。さらに2024シーズンは18試合で16勝1分1敗となっている。

 2022シーズン、J1の舞台で戦っていた清水はアイスタでのホームゲーム16試合で年間わずか2勝しか挙げられなかった。カテゴリーが変わったこともあるとはいえ、なぜ、清水はここまでホームで強いチームに変わることができたのだろうか。その理由を聞くと、秋葉監督は転換点としてある試合を語った。

 2023シーズン第1節の水戸ホーリーホック戦(0-0)、初めて臨んだアイスタでのこの試合、当時ヘッドコーチだった秋葉監督は「選手たちがホームで怖がっているな」と感じ、これを変える必要があると感じていたという。

「僕が現役だった頃は、清水はホームですごくアドバンテージがある印象でした。アウェーでアイスタに行くと『ここでやりたくないな』という印象だったのが、自分たちが『ここでやりたくないな』となっている印象だったんです」

 スタンドには空席もあり、スコアレスに終わった試合後、秋葉監督は悪循環になっていると感じていた。

「ブーイングやため息などが出たり、いろいろ言われたりしますが、勝てなかったらそういう声が大きく聞こえるのはしょうがないんです。だから、悪循環でしたよね。サポーターもそういう雰囲気になってしまう。選手たちも、ホームスタジアムであるにもかかわらず『やりたくない』みたいに、プレーすることを怖がってしまっていました」

■選手を何度も激励「アイスタは、俺らのホームなんだ」「怖がるな」

 ホームスタジアムの力を秋葉監督が感じたのは、1999年から2004年にかけて所属したアルビレックス新潟時代だった。「ホームで1年半くらい、負けなかった記憶があります。当時、新潟のホームスタジアムには毎回4万2000人くらい入っていて、『この数、この応援の質、声量があれば負けないでしょ』という感じでした。不思議な空気になりますし、イケイケの、常にアドバンテージをとっている空気になるんです」

 清水のサポーターの独特なチャントやサンバのリズムの応援、そしてスタジアムについて「選手も乗りやすいし、ダイレクトにみなさんの想いが伝わってくるスタジアム」と力強く感じていた秋葉監督は、その力をフルに生かせるように動いた。

 まず、選手たちには繰り返し「アイスタは、俺らのホームなんだ」「見に来てくれる人は、みんな我々の味方で我々に勝ってほしい」「みんなの活躍する姿やゴールが見たいんだ」「自分たちがここでのプレーを怖がるのではなく、相手を怖がらせなきゃいけないんだ」といった言葉を投げかけた。

 2023年4月1日、アウェーで行われた第7節のヴァンフォーレ甲府戦(0-1)後、そしてコーチから監督となり迎えた同8日のホームでの東京ヴェルディ戦のウォーミングアップ開始前、秋葉監督はメガホンを持ってサポーター席に向かって声を張り上げた。

「我々はファミリーであり、一蓮托生で、1つの船に乗っている。目標は1つで、勝つことであり、昇格することであり、カテゴリーがどこであれチャンピオンになること。そこに向かうファミリーなので、良いことも悪いことも共有して一緒に頑張りましょう!」

 キックオフを迎えるときの様子を「本当にサポーターが温かく、力強い声援、チャントを送って良い雰囲気をつくってくれました」と秋葉監督は振り返る。この試合、清水は開始早々にコーナーキック(CK)から先制点を許したが、前半アディショナルタイムにDF北爪健吾のゴールで追い付くと、試合終了間際にFWオ・セフンが決勝点を挙げて2-1の勝利を収めた。

■成功体験で一変「あれが1つターニングポイント」、昇格へ向けた土台に

 この成功体験がアイスタの雰囲気を一変させ、秋葉監督は「アイスタでやる時には、もう全く負ける雰囲気がなくなりました」と、振り返った。

「やっぱり一発目のヴェルディ戦、劇的に90分に逆転ゴールを取れたことが大きかったと思います。この試合に逆転勝ちできたこと、勝ち方も良かったですよね。それで僕が伝えていた言葉にも信憑性が出たというか、みんな『じゃあ、しょうがねぇ。応援するか!』みたいになったと思うんです。それからほとんどホームでは負けていませんから。

 もしここで負けたり、引き分けていたりしたら、『言ったって変わらないじゃないか』となっていたかもしれません。それに逆転勝ちという強い勝ち方を、アディショナルタイムという劇的な形でできたので。監督が代わったブースト、それに勝ち方による勢いと、二重でブーストがかかった感じだったので、あれが1つターニングポイントだったと思います」

 監督就任後、重要なホームでの初戦で大きくホームゲームの流れを変えた秋葉監督だが、「選手がちゃんと反応して、感じてやってくれたこと。そしてサポーター、(清水の)ファミリーが本当に引っ張ってくれて、『プライドを持って戦うんだ』『ここでは絶対に俺らが勝つんだ』という空気、意識に変わってくれたのが一番大きかったと思います」と周囲に感謝し、「現役に戻りたくなりますよね。あのなかでプレーできたら最高ですよ!」と笑顔を見せた。

 2023シーズン、清水はJ1昇格プレーオフ決勝のアディショナルタイムに同点ゴールを許してJ1昇格を逃したが、その1年後の昇格へ向けた土台は、このシーズンから作られていた。(河合 拓 / Taku Kawai)

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