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名門校なのに…水溜まり劣悪ピッチ 時代遅れのグラウンド「何とかなりませんか?」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月25日 7時30分

■埼玉県の県立高校では“初”の人工芝化へ…浦和西高サッカー部OB会の奮闘に迫る

 高校サッカー界の古豪・浦和西高が、学校創立90周年にあたる2024年に第一グラウンドの人工芝化を実現させた。すっかり様変わりした緑鮮やかなピッチで、男子、女子それぞれのサッカー部員が喜々としながらレベルアップに励んでいる。埼玉県の県立高校では“初”の人工芝グラウンド設置とあって、大きな話題を振りまく。前例なき夢の実現に向けて奔走した浦和西高サッカー部OB会の奮闘ぶりに迫る。(取材・文=小室 功/全5回の1回目)

   ◇   ◇   ◇   

 今から6、7年前のことだった。

 熱意あふれる指導で知られる浦和西高サッカー部の市原雄心・元監督(現在は南稜高)が、折に触れ、こんな要望を口にしていたという。

「人工芝グラウンドにしたいと思うのですが、何とかなりませんか?」

 県内の強豪校である昌平高や正智深谷高、西武台高といった私学をはじめ、同じ浦和の地でしのぎを削り合う市立浦和南高が人工芝グラウンドに切り替わった。また、県大会以上の公式戦では、ほぼ人工芝グラウンドが使用されるようになった。

 こうした時代の変化を目の当たりにしていた市原元監督は、トレーニング環境の改善とともにチーム強化を図るうえで、「人工芝化の必要性」を強く感じていたのだった。

 全国制覇の実績を持つ県立浦和高、市立浦和高、市立浦和南高とともに県内の高校サッカー界を牽引してきた浦和西高だが、新興勢力の台頭もあり、ここ数年は目立った成績を収めていない。2017年のインターハイに30年ぶりに出場したとはいえ、同年11月19日に行われた全国高校サッカー選手権の県決勝では難敵・昌平高の前に1-2で敗れ、44年ぶりの本大会出場を果たせなかった。あれから、もう7年が過ぎた。

 当時、チームを率いていた市原元監督は「やはり勝たないと意味がありません」と言い、こんなふうに語った。

「全国大会に出ると、また出たいという意欲がすごく沸いてきます。選手権の県決勝で負けてしまい、悔しさしか残りません。勝つことの大切さを、次の世代に伝えていきたいと思います」

 母校の試合があれば、応援に駆け付けるというサッカー部OBは少なくない。自身の息子、いや孫といってもいいような後輩たちの戦う姿に目を細め、「次こそは」と期待を込める。浦和西高サッカー部に関わるすべての人たちの思いは「全国」にある。

 人工芝グラウンドの設置が、現状打開の足掛かりになるのではないか。自身もまた浦和西高サッカー部OBである市原元監督は、そう強く感じている。

「土ではなく、人工芝グラウンドなら、雨などの天候に左右されず、トレーニング計画が立てやすい。日頃から人工芝のピッチコンディションに慣れておけば、公式戦になってもスムーズに適応できる。これまでの懸案材料を払拭していくという点で、人工芝グラウンドのメリットは確かに大きい」と、市原元監督に賛同する声が広がっていく。

■人工芝化への機運高まるも「実現できるのか、正直、かなり不安」

 1950年に創部された浦和西高サッカー部は、1956年度の第35回全国高校サッカー選手権を初制覇し、単独チームでの参加だった1965年度の国民体育大会での優勝も飾っている(少年男子の部)。

 1968年のメキシコオリンピックの銅メダリストの1人である鈴木良三氏をはじめ、日立製作所や日本代表で活躍した川上信夫氏、Jリーグの柏レイソルやガンバ大阪などで指揮を執り、2018年のロシア・ワールドカップでは日本代表チームを率いた西野朗氏、また、日本サッカー協会の審判委員長を務めた黛俊行氏ら、日本サッカー界に貢献する人材を多く輩出してきた伝統校でもある。

 古豪復活、日本一奪還、再び「西高」の名を全国へ――。

 これらを長期ビジョンに掲げつつ、1973年度以来の選手権出場や県1部リーグ復帰が今、目の前にある目標だ。現在、100名を超すほどの部員が在籍し、2005年には女子サッカー部も創部された。全国有数のサッカーの街・浦和だけに、やはりサッカーへの情熱や関心は高い。

 2021年1月3日のサッカー部OB総会で、「人工芝グラウンド設置のために動き出すこと」が決議された。会長を務めるのは、今井敏明氏。富士通での現役生活を終えたあと、指導者の道に進み、東京ガスや川崎フロンターレなどで監督経験のある人物だ。

 市原元監督の熱意をくむ形で、アドバルーンが上がった。サッカー部OB会が全面的に動き出したことで、人工芝化への本気度も高まった。

 ただ、この事業を実現させるために解決しなければいけない課題がたくさんある。そもそも施工業者を、どこにするのか。総工費は、いくらなのか。資金調達の方法を、どうするのか。人工芝ができたあとの運用・維持・管理は、どこが担うのか。人工芝化に向けて、活動する公立高校は全国的にもあったが、資金調達に苦戦しているといった噂も耳にしていた。

 OB会の野間薫副会長が、当時の空気感を、こう回想する。

「後輩たちのために力になりたいという気持ちはみんな強かったのですが、埼玉県の県立高校の人工芝化は前例のない事業だけに、いろいろな面で手探り状態でした。何よりもまず学校側の理解や支援が必要でしょうし、県への説明も丁寧に行っていかなければいけません。人工芝グラウンドが実現できるのか、正直、かなり不安でしたね」

 さいたま市の職員として長年、スポーツ振興に携わり、担当部署の局長経験がある野間副会長だからこそ、掲げた事業の大変さを、だれよりも実感していたのだろう。

 言うは易く、行うは難し。

 だが、走り始めたこの一大プロジェクトを「絵に描いた餅」で終わらせるわけにはいかない。どのような道筋をたどれば、人工芝化の実現に至るのか。浦和西高サッカー部OB会の大いなる挑戦が始まった。(第2回へ続く)(小室 功 / Isao Komuro)

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