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名門サッカー部が…土グラウンドで低迷、見かねたOB挑んだ“県立初”の構想「可能かも」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2025年1月27日 7時20分

■浦和西高サッカー部OBが主導、前例なき県立高校初の人工芝化プロジェクト

 2021年1月3日に行われた浦和西高サッカー部のOB総会で、「人工芝グラウンドの設置に向けて動き出すこと」が決議された。とはいえ、乗り越えなければいけない課題はたくさんある。何から着手すべきか。まずは、学校側の理解と支援を得るためにOB会の今井敏明会長が浦和西高の杉林正敏校長(当時)を訪ね、人工芝化の目的やメリットを伝えた。(取材・文=小室 功/全5回の2回目)

   ◇   ◇   ◇   

 土のグラウンドから人工芝へ――。

 埼玉県の県立高校では前例のない事業に挑んだのが、伝統と歴史のある浦和西高サッカー部OB会だった。同OB会は、今井敏明会長や野間薫副会長(ともに当時)をはじめ、会員総数約900名で構成される任意の団体だ。以前から「人工芝化の必要性」を口にしていた市原雄心・元監督(現在は南稜高)の熱意を形にすべく、本格的に動き出す。

 今井会長を中心にするOB会では、人工芝化の目的やメリットを次のようにアピールしていた。

「かつて県内の高校サッカー界を牽引してきた浦和西高も、ここ数年は目立った成績を収められずにいます。こうした現状の打開を目指すのはもちろん、サッカー部が日々、利用している第一グラウンドは体育の授業や体育祭などの学校行事にも使われます。そこが土から人工芝に変われば、グラウンド環境が改善され、利便性も格段に上がるはずです」

 つまり――。

『人工芝化への取り組みは、決してサッカー部だけではなく、浦和西高を取り巻くすべてのステークホルダー(在校生/教職員/保護者/周辺住民など)にとって、物心両面にわたる多大なメリットをもたらすものを確信する(人工芝化の企画書より要旨抜粋)』

 先のサッカー部OB総会から10日後の1月13日、今井会長は早速、浦和西高の杉林正敏校長(当時)を訪ねた。埼玉県の県立高校にとって前例のない事業だけに、学校側の理解や支援は欠かせないからだった。

 年度替わりして、杉林校長から利根川典子校長(当時)に代わったこともあり、4月15日、今井会長が再び学校に足を運んだ。さらに、5月23日には同窓会組織である西麗会の総会にも出席し、人工芝化の趣旨説明を行った。

 学校側との話し合いに、今井会長は「可能な限り協力したいとの賛同を得られ、OB会として勇気づけられました。学校側との信頼関係なくして、このプロジェクトの成功はあり得ません。節目ごとに進捗状況を報告し、学校側との連携を密に図りました」と、振り返っている。

 県が管轄する公立高校のグラウンドの人工芝化ということで、県側への説明や相談にも積極的に動く。担当者からは「OB会が総工費を調達し、運用・維持・管理の費用も負担できるのであれば、可能かもしれない」との説明を受けた。条件付きとはいえ、県側からのOKサインが出たわけだ。

■前例のない事業の実現に向けた活動を加速

 学校や県への働きかけとともにOB会が地道に行っていたのが、県内外にかかわらず、人工芝化を実現させた事例の情報収集だった。日本サッカー界に幅広く人脈を持つ浦和西高サッカー部OB会だけに、人から人をつなぎながら、人工芝グラウンドの設置に関する貴重な情報を集めることができた。

「そのなかで、2019年5月に完成した“千葉県立八千代高方式”が参考になりました。コストをできるだけ安く抑える工法、寄付活動による資金調達、完成後の県側との交渉など、人工芝化を進めていくうえで、有益なヒントを得られました」(今井会長)

 全国を見渡すと、高校サッカー界の強豪といわれるチームが使用するグラウンドはほぼ人工芝といっても過言ではなく、その普及のスピードに驚かされる。大学サッカー界に目を転じても、人工芝化を比較検討するうえで、参考となるモデルケースに事欠かない。

「例えば、2008年3月に竣工した一橋大学のラグビー場は、地盤が砕石のみでアスファルト舗装されていませんが、15年を過ぎた時点で、全面張替えされていませんでした。このことは施工方法を要望するうえで、重要な視点となりました」(今井会長)

 年が明けた2022年4月1日、OB会は「人工芝化実行委員会」を立ち上げ、前例のない事業の実現に向けた活動を加速させていく。

 着手すべきポイントは3つ。

 そもそも施工業者を、どこにするのか。総工費は、一体いくらなのか。資金の調達方法を、どうするのか。

 毎週日曜日の17時から18時まで、オンラインによる定例ミーティングを行い、テーマによっては必要なOB会メンバーたちが無料で利用できる公共施設の会議スペースに集まった。2023年2月以降は基本的に隔週となった。プロジェクトの参加メンバーは、二十代から六十代までの計22名。全員がボランティアだった。

 喧々諤々、みんなで知恵を絞りながら、さまざまな課題の解決に取り組んだ。おぼろげだった人工芝グラウンドの構想が、いよいよ具体化していく。(第3回へ続く)(小室 功 / Isao Komuro)

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