スポンサー50社の海外日本人 「ボロボロになるまで続けたい」…営業努力を怠らない真意【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年1月29日 8時30分
■【海外組アウトサイダー】ワン・タギッグFC(フィリピン1部)所属・佐藤彰真
現在では欧州1部リーグを中心に数多くの日本人選手が活躍して、日本サッカーの進化を強く印象付けている。かたや、海外のほかの地域にも目を向ければ独自の道を切り拓こうとする同胞たちの姿が。FOOTBALL ZONEでは、そんな選手たちを「海外組アウトサイダー」としてフォーカス。今回はフィリピン1部ワン・タギッグFC所属の佐藤彰真に、海外挑戦を続けるうえでの“スポンサー集め”の活動について訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の2回目)
◇ ◇ ◇
現在25歳の佐藤彰真は、フィリピン1部ワン・タギッグFCのセンターバックとして同国2シーズン目を戦っている。高校でのドイツ短期留学をきっかけに欧州でのプレーに強いこだわりを持ち、これまでに日本でキャリアを積む傍ら、オランダ、モンテネグロ、ラトビアを渡り歩き武者修行してきた。
2023年から翌年1月末までは、オーストリア3部と5部のクラブでプレー。佐藤が目標と語るイングランド・プレミアリーグへの成り上がりを目指した。昨年1月末にはオーストリア4部クラブへの移籍が決まっていたものの、一転してフィリピンへ。アジアの国際大会に出場することでプレゼンスを高めキャリアアップを果たす狙いがあったと同時に、フィリピン代表として60キャップを記録しているレジェンドDF佐藤大介からも一緒に移籍しようとラブコールを受けた。
その思いを粋に感じ移籍したダバオ・アギラスFC(フィリピン1部)では、リーグ戦数試合連続でマン・オブ・ザ・マッチ(優秀選手賞)を受賞するなど早速躍動した。思い描く選手人生の理想像へ着実に経験を積んでいる。
そんな佐藤彰真というサッカー選手を語るうえで、特筆すべきなのが支援を受けるスポンサーだ。その数はなんと50にも上る。なぜ、こんなに桁違いスポンサーを集められたのか。近年の状況を踏まえこう説明する。
「無名でも海外の日本人選手がスポンサーを集める動きは、ここ数年で活発化してきた印象があります。ただ、僕はアルビレックス新潟シンガポールに在籍していた19歳の頃からスポンサー集めをしてきました。ほかの選手とは、正直スタート地点が違うというか。競合相手が少ない状況下で始めたことが数の違いにつながっています」
■ずらしてはならないサッカー選手としての軸
競合が少ない好条件があったとはいえ、それでも営業努力が必要なのは推して知ることができる。スポンサー獲得にあたり「人生を語るように相手に提案ができる」と佐藤。引退後についても「誰のために何をしたいか、どのくらいの規模かといったことを企業に提示できる状態」だと話す。そのうえで“強み”を生かし自分を売り込んだ。
「僕の強みは山形県出身であること。というのも、東北出身、さらに山形となると現役サッカー選手は相対的に少ないので、そんななかで頑張っている事実は良いアピールポイントになります。そういう面では山形県内企業との相性は良かったですね」
ただ、同郷のよしみだけで応援してくれる企業が次々に集まるわけではないだろう。佐藤は「サッカー選手としての軸をずらさないこと」を一番大切にしていると強調する。
「スポンサーへお願いをするにあたって、自分の競技に懸ける思いが弱いと“大体”というざっくりした話しかできません。一方、本気でプレーし自分の将来を考えていればスポンサーに対しより具体的に提案ができるわけで、そういう状態なら企業側としても応援したいとなりやすい」
ピッチ上で全身全霊を尽くすからこそ、支援者は胸を打たれてきた。だからこそ、スポンサー獲得で伸び悩む同胞の選手に思うことがある。
「支援者に何かを返さないといけないという考えに囚われてしまい、ピッチ外での活動に力を注ぎすぎて試合のパフォーマンスが低下するのは本末転倒です。スポンサーは選手のキャリアを応援してくれているわけですから。それだけに、自分が目指す選手としてのゴールをはっきりさせなければいけません」
■選手人生への純粋な思い
選手人生の目標を真剣に考えながらピッチで全力を尽くすことで、スポンサーへの提案をより細かく具体的に話せるようになる。逆もまた然り。スポンサー獲得へのアイデアを突き詰めていくなかで自分と向き合うことにつながり、目指そうとするキャリアの解像度も高くなる。
選手としての活動の一環とはいえ、相乗効果が期待される。ただ、佐藤にとってスポンサー集めの根底にあるのはサッカーへのどこまでも純粋な思いだ。
「サッカー選手としてプレーする以上、キャリアをどこまでも突き詰めたい。僕がどうしてスポンサー集めに努力しているかというと、年齢に関係なくずっとサッカーを続けたいからなんです。例えば、身体が動かなくなってくると年俸は下がらざるを得なくなりますが、スポンサーが十分にいればそこを気にしなくて済みます。それくらい選手として足がボロボロになるまでプレーし続けたいんです」
また、数十社とスポンサーを集めるには「人間性や人としての魅力を相手に提示できる力が必要なのは間違いない」と佐藤。確かな実力があることは大前提でありながら、海外でのプレーを続けるには“セルフプロデュース力”も必要不可欠な要素だと佐藤の選手人生が雄弁に物語る。
[プロフィール]
佐藤彰真(さとう・しょうま)/1999年10月6日生まれ、山形県米沢市出身。米沢中央高校-ザスパ草津チャレンジャーズ-SC相模原PFC(SC相模原U21)-アルビレックス新潟シンガポール-FC淡路島-VONDS市原-ファヴォリトナーAC(オーストリア3部)-FCビサンベルグ(オーストリア5部)-ダバオ・アギラスFC(フィリピン1部)-ワン・タギッグFC(フィリピン1部)。このほかにも、高校時代のドイツ短期留学を皮切りに、オランダ、モンテネグロ、ラトビアと欧州各国でプレーし経験を積んできた。186㎝・79㎏の恵まれた体格を生かしたデュエル、足元の技術に裏打ちされた後方からの攻撃参加、DFラインを統率するコミュニケーション力を強みとしている。また、ピッチ外では地元米沢市の「おしょうしな観光大使」も務める。(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)
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