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「中村俊輔も出てきたけど…」日本人指導者が欧州で受けた指摘 技術の根本的な違いとは

FOOTBALL ZONE / 2025年1月29日 6時50分

■ベルギー1部シント=トロイデンVVが福島県で中学生対象のイベントを開催

 日本サッカーが欧州に追いつくためには何が足りないのか――。ベルギー1部シント=トロイデンVVのアカデミー責任者を務める髙野剛氏に問うと、「決定的な違いがある」という答えが返ってきた。欧州で活躍を続ける日本人コーチとして、現地で見たサッカーについて「共通理解が存在している」と解説した。

 シント=トロイデンは1月11日から13日にかけて、福島県双葉郡楢葉町のJヴィレッジで「Jヴィレッジチャレンジ 2024 powered by シント=トロイデンVV」を開催。中学1年生以上、中学2年生以下を対象に体力測定、講座、試合を行った。髙野氏もベルギーから来日し、イベントの合間に取材に応じてくれた。

 2010年には日本人2人目となるイングランドサッカー協会公認・ヨーロッパサッカー協会(FA)公認・欧州サッカー連盟(UEFA)公認A級指導者ライセンスを取得。2018年にはアジア人初となるFA及びUEFA公認プロライセンスを取得したが、その当時の講師から聞いた日本サッカーの印象について教えてくれた。

「君の国はすごく発展しましたよねと言われたのが2000年代。ワールドカップでもだんだん常連になってきて、欧州のチームと対戦してもなかなかいいサッカーをやっているし、中村俊輔(当時セルティック)みたいなタレントも出てきた、みたいなことを言ってくれたんですよ。だけど、決定的な違いがあると。

 我々のサッカーは経験をベースにして作られたものだと。日本の場合は研究して作られたもの、どちらかというとアカデミックなサッカーだと。でも、アカデミックではサッカーを網羅することはできないと。サッカーというのはこうあるべきだよねという共通理解が当たり前のレベルで存在しているんです」

 例えば、英国のスタジアムに足を運ぶと、いいプレーには自然と拍手や歓声が起きる。「普通のおじいちゃんおばあちゃんがサッカーのことをだいたい話せる。日本で言えば、おじいちゃんおばあちゃんが野球のことを話せるのと一緒。その当たり前のレベルがめちゃくちゃ高いんですよ」と髙野氏は力説する。

「サッカーはもう自分の1つなんですよ。だから、降格したらめちゃくちゃ泣きます。チームのあり方が自分たちの価値観に紐づいていて、その価値観を誰が作っているかと言えばサポーターたちです。そのサポーターたちがどこからやってきたかと言えば、ひいおじいちゃんひいおばあちゃんの世代からです。

 草サッカーのレベルから積み重なってきていて、プレミアリーグという何百億とかかっている世界につながっている。ただ単にお金が集まっているわけではなく、そのサポーターやクラブの上層部の価値観によってこういうサッカーになっていくという当たり前が存在する。日本にもそういうものが欲しい」

 また、それぞれメリットとデメリットはあると前置きした上で、日本と欧州でのトレーニングの違いにも言及。実際、日本人は足元の技術に長けているとよく言われるが、欧州で試合に絡むことができず日本に戻ってきた選手も多い。

「例えば川崎フロンターレの止める・蹴るが話題になりました。間違いなく素晴らしいことです。とする一方で、試合ではサッカーの流れ、動いているなかでやらなければいけない。静止した状態でボールが来るのはなかなか起こらないし、動きながらボールを触るじゃないですか。そういう違いはありますよね。

 日本人のコーチがシント=トロイデンにやってきて、この練習を見せたとします。それはそれでいいけど、そればかりやり続けると、向こうの指導者から、言っていることはよく分かるけど試合に使えないと。今週末の試合でこういうふうにやっていきたいというところにつながりづらいと言われてしまいます」

 Jリーグが発足して今年で31周年を迎えるが、欧州に追いつくためには一朝一夕にはいかないというのが現実だろう。そんななかで、日本の子どもたちに欧州のスタンダードを体感してもらうため、開催しているのが「Jヴィレッジチャレンジ」。髙野氏らの指導は、参加者にとって貴重な体験になっただろう。(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)

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