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J1内定の逸材が苦悩「やっぱり痛い」 突如走った激痛…プロで大暴れのはずが「持ち味が出ない」

FOOTBALL ZONE / 2025年1月30日 7時10分

■東洋大から東京ヴェルディへ新加入…新井悠太が苦しみながら歩んだ1年間

 大学サッカー界きってのドリブラーとしてその名を轟かせたMF新井悠太は、東洋大初のインカレ優勝という看板を提げてJ1東京ヴェルディでプロの舞台に飛び込む。

 新井はプロ1年目となる今季、強い思いを持って臨もうとしている。そのきっかけとなったのが2024年の1年間だった。彼にとって苦しみながらも自分自身と本気で向き合うことができた時間であった。

「正直、自分の良さであるドリブルを表現できなかった部分が多かったのですが、それも一回一回、自分の中で消化しつつ、どういう時にドリブルを出せるかと個人で分析もしました。その結果、チームでどうやって勝つかというのと、どうにかしようという思いがうまく噛み合っていなくて、それが整理できた時に自分の特徴であるドリブルが出せるということに気づくことができました」

 彼が自分自身をうまく表現できなかったのは、大ブレイクした2023年の残像と怪我によるコンディション調整の難しさが影響していた。

 大学3年生だった2023年。6月に当時J2だった東京V入り内定が発表されると、7月のJ2第24節のV・ファーレン長崎戦でJデビュー。翌節のFC町田ゼルビア戦でプロ初ゴールを挙げ、リーグ8試合に出場し、2ゴール2アシストを記録した。

「早くプロ契約を結ぶべき」「来年はどこかに取られてしまうかもしれない」といった声がネット上で上がり、一気に注目の存在に。パリ五輪を目指すU-22日本代表にも選出されるなど、まさに旬の時を迎えた。

 2024年は大学サッカー界ではなく、J1での大暴れが期待されたが、春先に右のシンスプリント(脛骨の周りにある骨膜が炎症を起こすスポーツ障害)を発症したことで雲行きは怪しくなった。

 足を踏み出そうとすると常に痛みが走り、得意のスプリントの強度が思うように出ない。相手の逆を突いて前に出る時も衝撃が走る。ベストパフォーマンスが出せない自分に焦りが生じるようになった。

「大学3年の時は自分の想像を超えた活躍ができたのに、4年になってからは納得する試合は少なかったです。ハードルが上がったからなのか、調子が悪かったのか、プレーの質がまだまだ足りないと思っていた」

 真面目な新井は不調の要因を怪我のせいにするのではなく、「自分の甘さ」と捉えて、努力する姿勢を持ち続けた。だが、その実直な思考がより現実とのギャップに苦しみを生み出していた。

「持ち味である思い切りの良さが出せない。自分のプレーの質だと思っていても、やっぱり痛い。痛みを感じることが本当にもどかしかった」

 それでも昨年の第20節ジュビロ磐田戦でJ1デビューを飾った。だが、一昨年ほどのインパクトは残せず、第26節の名古屋グランパス戦でリーグ3試合目を経験して以降、東京Vでの出番はなくなり、パリ五輪のメンバーからも漏れた。

「空回りしていたことは自分でも分かっていたのですが、『やらなきゃ、やらなきゃ』という気持ちが必要以上に前に出てしまうと、逆に自分のプレーが出せなくなる。考えすぎたり、ドリブルに特化しすぎたりしていたと思います」

■東洋大で切れ味鋭いドリブルが復活、有終飾りプロへ

 活躍できない焦りが強迫観念に似たものに変わっていった。自分が自分でなくなりそうになるなかで、彼はある大切なことに気づく。

「僕は楽しくやっている瞬間が一番いいプレーができるということでした。やっぱり楽しめているかどうかが重要だったんです。変に怪我のことを気にしすぎて、どんどん自分らしさがなくなっていたんです」

 万全ではないなかでもやれることを精一杯、楽しみながらやる。このマインドセットと徐々に怪我が癒えたことも重なり、秋になると一昨年のような切れ味鋭いドリブルや効果的なラストプレーを披露するようになった。

 そして昨年12月の全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)。10番を背負った新井は攻撃陣を力強く牽引し、東洋大学史上初のインカレ優勝に導いた。

 苦しみながらも有終の美を飾れたことで、彼は気持ち新たに次なるステージに進んだ。

「ヴェルディは若い選手が主体となってやっていて、本当に個人の能力は高いですし、そのうえにチームの団結力があるので、昨年J1で躍進できたのは驚きではなく必然だと思っています。だからこそ、僕もその輪に入って努力しないといけないですし、『J1で上を狙える』という価値を証明してくれた仲間の中で、2025年こそはそれを僕も表現したいなと思っています」

 J1でドリブルが相手の脅威となり続けるために。顔を上げて前に突き進む男の再ブレイクの物語は始まっている。(FOOTBALL ZONE編集部)

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