浦和の古豪“人工芝化”が「頓挫するんじゃ」…突如襲われた焦り、異変起きて「必死でした」【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2025年2月3日 7時50分
■浦和西高グラウンド人工芝化へ…法人化したOB会が資金調達へ奔走
人工芝化の資金を、寄付によって調達する――。それが、浦和西高サッカー部OB会の基本方針だった。ただ、目標とする金額が高額なだけに、今井敏明会長から「社会的な信用を得るためにもOB会を法人化にしては、どうか」という提案があった。寄付活動の体制をより盤石にすべく、OB会は動き出す。(取材・文=小室 功/全5回の4回目)
◇ ◇ ◇
OB会の法人化に向けて、東奔西走したのが、事務方のキーパーソンである配嶋幹雄氏だった。手始めに“無料相談”を頼った。
法人化のために、何を、どうすればいいか。不慣れなだけに、分からないことだらけだ。法人の設立や運営、税務などに関する専門書やネット記事を読み漁り、自分なりに下調べをし、聞きたいことを細かく整理したうえで、行政書士や司法書士といった専門家を訪ねた。
「これらの質問に答えていたら、無料相談の域を超えていますよ」
そう苦笑されることもあったようだが、その都度、的確なアドバスをいただき、法人化への歩みを進めていく。
一口に法人といっても、その組織形態はさまざまだ。まず、公法人と私法人の2つに大別され、さらに私法人が営利型と非営利型に分類される。OB会では、法人化の目的や意義、実務面を踏まえ、また、非営利型を前提にしていたことから、「NPO法人」もしくは「一般社団法人」の二択に絞った。前者は、公益性が求められ、設立や運営に関しての条件も厳しく、承認まで数か月を要することから、最終的に後者を目指すことになる。
「法人化するには、定款を公証センターに提出しなければならないのですが、定款はまさに会社経営のルールブックです。立ち上げメンバー全員の総意であることが重要で、その意義と内容を理解したものでなければいけません。すでに存在する一般社団法人の定款を参考にしたり、ネット検索で見つけたサンプルをもとにして、試行錯誤しながら定款のひな型を作っては、専門家の知恵を借りました」(配嶋氏)
法人化のためには、定款とともに運営管理規程も作らなければいけない。
「これがさらに大変で、法律用語というか、専門的な言い回しが多く、既存のサンプルを読んでも分かりにくい(苦笑)。専門家の先生からは必要かつ順守できる内容にすべきとのご指摘を受けたので、できるだけかみ砕いて、簡潔に、まとめるようにしました」(配嶋氏)
無料で相談に乗ってくれる埼玉県よろず支援拠点や創業・ベンチャー支援センター、浦和公証センターなどに何度も足を運び、四苦八苦しながら定款と運営管理規程を自前で完成させた。その奮闘ぶりは枚挙にいとまがない。配嶋氏の費やした時間と労力がしのばれる。
■一般社団法人UNSSを設立、体裁を整え寄付金調達へ本腰
浦和西高サッカー部OB会改め、晴れて一般社団法人UNSS(浦和西高スポーツサポーターズクラブ)が設立されたのは、2022年8月だった。OB会の今井敏明会長、野間薫副会長ら主要メンバーはそのまま一般社団法人UNSSの代表理事、副代表理事に就任。また、事務局の配嶋氏も理事の1人として名を連ねた。一般社団法人としての体裁を整え、社会的な信用を得るに相応しい団体に生まれ変わった。
「今井代表理事や野間副代表理事をはじめ、ほかのメンバーの意見も聞き入れながら、ことを進めてきました。なかでも先輩の野間さんはさいたま市のスポーツ振興に長く携わってきて、市の職員として担当部署の局長経験もある方なので、迷ったことがあったら、野間さんに相談していました。常に冷静で、考え方がニュートラル。いろいろな形で助けていただきました」(配嶋理事、以後理事で統一)
OB会の法人化に伴い、寄付を募るための対外的な“地固め”はできた。呼びかける対象は、何よりもまず浦和西高サッカー部のOBおよび女子サッカー部のOG、西麗会(同窓会組織)を通じて卒業生たちだった。そしてさらに、浦和西高に縁やゆかりのある企業に対し、協賛という形での支援を願い出た。
目標金額は5500万円――。
では、いつから、どのように集めるか。UNSSでは「寄付を募るのは、2年」と、あえて厳しい目標を設定した。人工芝化への機運の高まりがしぼんでしまわないうちに資金を調達し、工事に入りたいと考えていたからだ。2024年は浦和西高の創立90周年にあたり、人工芝グラウンドのお披露目として、これほどの好機を逃すわけにもいかない。
まさに、鉄は熱いうちに打て、の極意である。
寄付の集め方は、さまざまな方法を検討したうえで、オンラインによる寄付管理システムを活用した。スマホやパソコンから“簡単、安全、確実”に寄付できるような体制を整えた。
本格的に寄付を募り始めたのは、2022年11月だった。サッカー部のOBや女子サッカー部のOGには学年幹事などを通じてメールで呼びかけ、西麗会(同窓生組織)には年1回配布される冊子に募集チラシと払込票を同封させてもらった。
動き出しは、まずまずだった。ところが、寄付金が約2500万円に至った時点で、少し停滞してしまった。このままでは立ち行かない。
「資金の調達は、プロジェクト成功に関わる最大のカギになる。何とかしなければ、と必死でした。結局、頓挫するんじゃないか。そんな空気になってしまうのを、すごく恐れていました」(配嶋理事)
このピンチを、いかに切り抜けたらいいか。UNSSは寄付金をさらに集めるべく、懸命に頭を捻った。追い風となったのは――。(最終回へ続く)(小室 功 / Isao Komuro)
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